貴社は重大なGPL違反を犯していますコンサルは見た! オープンソースの掟(7)(3/3 ページ)

» 2018年07月19日 05時00分 公開
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重大なGPL違反である

 電話は社長の武田からだった。考えたばかりの新作戦を報告しよう。きっと褒められるに違いない――そう期待して社長室の扉を開けた木村が目にしたのは、これまで見たことのないほどこわばった武田の表情だった。

takeda

「これは一体、どういうことだ!!!」

 武田の怒鳴り声が木村の耳に突き刺さる。何があったのかと問い掛ける木村に、武田は紙束を投げつけた。

 木村は床に散らばった紙を拾って確認する。プリントアウトは、「The gpl-violations.org project」(以下 GVO)からの英文メールだった。武田は苦虫をかみつぶしたような表情で続ける。

 「GVO――フリーソフトウェアのGPLに関する違反行為を監視している団体からだ」

kimura

「GPLというと、あの……(ハッ!)

 「そうだ。このメールには『プレミア電子がジェイソフトからGPLに基づいてソフトウェアの提供を受けていながら、自分たちはそのソフトを公開せず商売をしていることが、重大なGPL違反であり、日本の著作権法にも触れる行為だ』と書かれている」

 木村の脳裏に美咲の言葉がよみがえった。

 “怖いのは裁判じゃない”――あの女が言っていたのは、このことだったのか。きっとプレミアのGPL違反をGVOに告発したのも美咲に違いない。以前三浦を追い払ってから、妙に時間を空けてやってきたのは、この件を告発して団体が警告を出すまでの時間を見計らってのことに違いない。木村は頭に血が上るのをはっきりと感じた。

 「社長、落ち着いてください。私が何とかしますから。至急この団体に連絡をとって善処を……」

 自分をなだめようとする木村に、武田はさらに怒鳴りつけた。

 「キミは、まだコトの重大さが分からんのか!!!」

つづく。「コンサルは見た!」Season3「オープンソースの掟」は、毎週木曜日掲載です


書籍

システムを「外注」するときに読む本

細川義洋著 ダイヤモンド社 2138円(税込み)

システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」が、大小70以上のトラブルプロジェクトを解決に導いた経験を総動員し、失敗の本質と原因を網羅した7つのストーリーから成功のポイントを導き出す。

※「コンサルは見た!」は、本書のWeb限定スピンアウトストーリーです

細川義洋

細川義洋

政府CIO補佐官。ITプロセスコンサルタント。元・東京地方裁判所民事調停委員・IT専門委員、東京高等裁判所IT専門委員

NECソフト(現NECソリューションイノベータ)にて金融機関の勘定系システム開発など多くのITプロジェクトに携わる。その後、日本アイ・ビー・エムにて、システム開発・運用の品質向上を中心に、多くのITベンダーと発注者企業に対するプロセス改善とプロジェクトマネジメントのコンサルティング業務を担当。独立後は、プロセス改善やIT紛争の防止に向けたコンサルティングを行う一方、ITトラブルが法的紛争となった事件の和解調停や裁判の補助を担当する。これまで関わったプロジェクトは70以上。調停委員時代、トラブルを裁判に発展させず解決に導いた確率は9割を超える。システム開発に潜む地雷を知り尽くした「トラブル解決請負人」。2016年より政府CIO補佐官に抜てきされ、政府系機関システムのアドバイザー業務に携わる

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