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» 2018年08月01日 05時00分 公開

10年かけてプロになる世界を、2年で黒字化できる世界へ:「いつからうちはシステム屋になったんだ」――社内の声に負けじと実践したネポンのデジタル変革とは (2/2)

[重森 大,著]
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複合制御から統合制御、AI制御へと進むロードマップ

 アグリネットは現在でも、大型圃場を遠隔管理できるだけの機能を備えているが、さらに進化する予定だという。現行型の複合環境制御盤は、その名の通り複数の農業機器を制御できる。しかしその操作は、機器ごとに個別に行う必要があった。2018年に発売を予定している次世代型では、統合環境制御盤へと進化する。管理下にある農業機器の特性を把握し、「25度に保つ」などと設定するだけで、複数の農業機器を自動的に制御してハウス内の環境をコントロールする。

 「現行型では15分に一度ネットワーク通信を行っており、それでも毎日5MB程度の通信量がありました。しかし『暑過ぎて警報が鳴ってから15分後に機器が動くのでは遅い』という声を頂き、統合環境制御盤では秒単位のリアルタイム制御を実現しています。制御盤の操作パネルにはタブレットが組み込まれていて、現場作業時にはタブレットを取り外して持ち歩けるようになっています」

 これから先の展望として太場氏はコミュニケーション型AI制御ロボットへと進化させる方向性を示した。

 「例えば農家が『1週間後に収穫したい』と言えば、そのために必要な対策をAIが考案し、『設定温度を現在より2度高くすることをお勧めします』などと提案するものを想定しています。また、『収量を優先しますか? 品質を優先しますか?』などの質問をAIから投げ掛け、返答によってハウスを統合制御できるようにしたい。こうした提案を実現するには、AIが農業のノウハウを学ぶ必要があります。そこで篤農家さんに協力してもらい、ノウハウを共有させていただいています。それを集め、AIに学習させてテンプレートを作れば、新規就農者への支援にもなるでしょう」

アグリネットのこれからの展望

 また太場氏は農業ノウハウを蓄積することの重要性について次のように語った。

 「ほとんどの作物は1年に一、二度しか作れないので、40年目のベテランでも40〜80回しか経験していません。でもシステムを使ってプロの知識を何人分も束ねて機械学習させることで、10年かかってプロになる農業の世界を、2年で黒字化できるように変えたいと考えています」

 さらに、今後は現場作業者に水分補給を指示して熱中症対策を行うなど、営農労務管理の機能もブラッシュアップして組み込んでいく予定だ。大規模農場を運営する上で必要な多数の機器と人の管理を、AIの支援の下で統合していくという。

 温度や湿度をコントロールする機械を作り、販売すること。IoTとAIを使ったクラウドサービスを作り、提供すること。一見大きな方向転換に見えるが、その根底に流れる就農者支援の精神は一貫しているのだった。

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