単なる「セカンダリストレージベンダー」に、有力ベンチャーキャピタルが投資する理由Cohesity CEOのモヒット・アロン氏に聞いた(1/2 ページ)

なぜ、単なる「セカンダリストレージ」のベンダーが、今どきSequoia Capital、Battery Ventures、SoftBank Vision Fundなどからの投資を受けられるのか。Cohesityの創業者でCEOのモヒット・アロン氏に聞いた。

» 2018年11月05日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

 Cohesity CEOのモヒット・アロン(Mohit Aron)氏は、好んで自社を「セカンダリストレージ」のベンダーだと表現する。そのセカンダリストレージベンダーは、有力投資家に引っ張りだこだ(「Cohesity」は「コヒシティ」と読む)。

 2013年設立のCohesityは、同年にSequoia CapitalをリードインベスターとしてSeries A(1回目)の資金調達を実施、以後もGV(Google Ventures)、Battery Venturesなどの有力ベンチャーキャピタル、Cisco Investments、Hewlett Packard Enterpriseといったベンダーの投資部門からの出資を受けてきた。2018年6月には、資金量の多さでシリコンバレーのベンチャーキャピタリストを震撼させているSoftBank Vision Fundがリードインベスターとなり、2億5000万ドルという大規模なSeries D(4回目)の資金調達を実施。これにより合計調達額は4億1000万ドルに達した。

 アロン氏は、特にSoftbank Vision Fundの出資について、次のように話す。

Cohesity CEOのモヒット・アロン氏

 「ソフトバンクは破壊的な変革を起こせる(disruptive)、将来非常に大きくなる可能性の高い企業に投資する。当社もその一つだと確信している。当社が相手にしている潜在市場(Total Addressable Market:TAM)は600億ドル。セカンダリデータとアプリケーションをシンプルなものにしていくことが目標だ」

 日本のソフトバンクでは、既にCohesityの製品を導入開始したという。

 だが、「セカンダリストレージ」といえば、IT業界では「バックアップストレージ」を意味してきた。今さらバックアップ製品ベンダーに、ベンチャーキャピタルがなぜ投資したがるのか。アロン氏はGoogleでGoogle File Systemの開発をリードし、Nutanixの創業者の一人でもあるという。そうした経歴だけで投資しているのだろうか。

 「確かに多くの人々は、バックアップあるいはアーカイブを『セカンダリデータ』と呼んできた。そこで私たちがやってきたことの1つは、そうした認識を変えてもらうことだった」

 アロン氏にとって、「プライマリストレージ」とは、例えば「リクエストに対する応答を5ミリ秒で返す」といった、SLAを厳格に守る必要のあるストレージ。それ以外のストレージは、ほぼ全て「セカンダリストレージ」だ。バックアップ/アーカイブはもちろん含まれるが、それだけではない。例えばテスト/開発、分析といった用途のためのストレージ、それ以前に一般的なファイルストレージ(NAS)も、ほぼそのままセカンダリストレージの範疇だという。

 「顧客には、『どうぞ貴重なお金を、プライマリストレージに使ってください。そしてあなたのバックアッププラットフォームは、分析やテスト/開発などのための環境を提供する機能を備えるものにすべきです。用途別に、高価なストレージ装置を買う必要はありません』と言っている。今では、(IT調査会社の)アナリストたちも、こうしたセカンダリストレージの定義を採用してくれている」

Cohesityを入れれば、ファイルストレージも不要になる

 Cohesityの製品は、導入を容易にするために、汎用サーバを使ったアプライアンス形態でも販売しているが、基本的にはソフトウェアだ。米国などでは、Cisco Systems、Hewlett Packard Enterpriseのサーバに搭載された形でも販売されている。基本的にはどのようなサーバハードウェアを使ってもよく、パブリッククラウド上で動かすこともできる。

 Cohesityのソフトウェアでは、「SpanFS」と同社が呼ぶファイルシステムが特徴だ。ハードウェアノードを追加することで、ほぼ自動的かつ事実上無制限に拡張でき、クラスタに格納しているデータ全体を対象に、重複排除を効かせることができる。スナップショット/クローンは無制限に作成できるという。また、ストレージアクセスプロトコルとしては、NFS、SMB、そしてAmazon S3(つまりオブジェクト)プロトコルに対応している。まもなくiSCSIもサポートするといい、ファイル、ブロック、オブジェクトのストレージアクセスを網羅することになる。

 結局、この製品はオブジェクトストレージの一種なのか。そう聞くと、アロン氏は次のように答えた。

 「オブジェクトベースであることに間違いはない。だが、私は『オブジェクトストレージ』とは呼ばない。オブジェクトストレージはデータが最終的に一貫性を保てればいいという設計だ。一方SpanFSでは、分散ファイルシステム全体にわたり、データの一貫性が厳密に保たれる」

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