電子メールを送信するには?(outlook.com編)[.NET 4.5、C#/VB].NET TIPS

Microsoft Graphに統合されているOutlookメールREST APIを使用して、電子メールを送信する方法を解説する。

» 2018年11月28日 05時00分 公開
[山本康彦BluewaterSoft/Microsoft MVP for Windows Development]
「.NET TIPS」のインデックス

連載「.NET TIPS」

 Microsoftアカウントがあれば、outlook.comでメールの送受信ができる。それにはOutlookアプリやOutlookのWebサイトを利用する他に、RESTful Web API(REST API)である「Microsoft Graph」を使う方法がある。REST APIは、独自のアプリやWebサイトから利用できる。エンドユーザーがMicrosoftアカウントを持っていることが前提のデスクトップアプリや、組織のMicrosoftアカウントを使ってメールを送受信するシステムなどで、このRESTサービスは役に立つだろう。本稿では、Microsoft Graph APIを使ってメールを送信する方法を解説する。

 なお、OutlookのWebサイトはoutlook.live.comであり、Microsoft Graph APIが提供されているサイトはgraph.microsoft.comである。実際にメール送信に使われるサーバのドメインがoutlook.comであるので、本稿では「outlook.comでメールの送受信」と表現している。

POINT outlook.comからメールを送信する方法

outlook.comからメールを送信する方法まとめ outlook.comからメールを送信する方法まとめ


 特定のトピックをすぐに知りたいという方は以下のリンクを活用してほしい。Graph APIの基礎知識をお持ちの方は、前半を飛ばして「テキストメールを組み立てるには?」に進んでいただきたい。

 なお、本稿に掲載したサンプルコードをそのまま試すにはVisual Studio 2017以降が必要である。サンプルコードはコンソールアプリの一部であり、コードの冒頭に以下の宣言が必要となる。また、C#のサンプルコードには、C# 7.1以降が必要である。

using Microsoft.Graph;
using Microsoft.Identity.Client;
using System;
using System.Collections.Generic;
using System.Linq;
using System.Net.Http;
using System.Net.Http.Headers;
using System.Threading.Tasks;
using static System.Console;

Imports System.Console
Imports System.Net.Http
Imports System.Net.Http.Headers
Imports Microsoft.Graph
Imports Microsoft.Identity.Client

本稿のサンプルコードに必要な宣言(上:C#、下:VB)

Microsoft Graphとそのライブラリ

 Microsoft Graph APIとは、Microsoftのクラウドサービスを利用するための共通APIだと考えると分かりやすい。幾つものサービスを利用するためのAPIが用意されている。その概略は、「Microsoft Graph の概要」をご覧いただきたい(次の画像)。ちなみに、Build 2015で発表されたときには、「Office Graph API」/「Office 365 Unified API」などと呼ばれていた(「特集:Build 2015:全ての開発者が押さえておくべきマイクロソフトの最新技術動向 (2/5)」のページの下方で紹介している)。

Microsoft Graph APIの種類 Microsoft Graph APIの種類
Microsoft Graph の概要」より。

 Microsoft Graphで提供されているさまざまなサービスの中から、Outlookの機能の、さらにその一部であるメール送信を本稿では利用してみようというわけだ。

 Microsoft GraphはREST APIであるから、アプリで直接HTTPリクエストを組み立ててAPIを利用することもできる。例えばメール送信なら「メールを送信する - ドキュメント - Microsoft Graph」をご覧いただきたい(次の画像)。

メール送信のHTTPリクエストの例 メール送信のHTTPリクエストの例
メールを送信する - ドキュメント - Microsoft Graph」より。
実際には、この他にAuthorizationリクエストヘッダも必要である。「Microsoft Graph を呼び出すためのトークンの取得」を参照のこと。

 このようなHTTPリクエストを組み立て、送信し、受け取った結果を解析するコードを書くのは面倒なものだ。クライアントアプリから使うためのライブラリ「Microsoft Graph .NET Client Library」(以降、「Graph Client Library」)がMicrosoftからリリースされているので、それを使おう。.NET Standard 1.1に対応しているので、.NET Frameworkだけでなく、UWPアプリやXamarinなどからも利用できる。

ライブラリを導入するには?

 NuGetからVisual Studioのプロジェクトに導入する。Graph Client Libraryの他に、ユーザー認証のためのライブラリも必要だ。

 まずGraph Client Libraryであるが、NuGetで「Microsoft.Graph」を検索すれば見つかる(次の画像)。

NuGetでGraph Client Libraryを検索する(Visual Studio 2017) NuGetでGraph Client Libraryを検索する(Visual Studio 2017)
Graph Client Libraryをプロジェクトに導入すると、必要なパッケージが幾つか自動的にインストールされる(画像に見えている[依存関係]を参照)。

 Graph APIを利用するためのユーザー認証には幾つかの方法がある(後述)。ここでは、Microsoft Authentication Library(MSAL)を使おう。まだプレビューのままになっているが、すでに十分に安定している。Visual StudioのNuGetパッケージ管理画面で[プレリリースを含める]にチェックを入れてから「Microsoft.Identity.Client」を検索する(次の画像)。

NuGetでMSALパッケージを検索する(Visual Studio 2017) NuGetでMSALパッケージを検索する(Visual Studio 2017)
[プレリリースを含める](赤丸)にチェックを入れて検索する。

アプリを登録するには?

 従来のデスクトップアプリなどの場合は、あらかじめGraph APIを利用するアプリをアプリケーション登録ポータル(Application Registration Portal)に登録し、アプリケーションID(クライアントID)を取得する(UWPアプリの場合は、ストアに登録することで自動的に登録される)。登録には、Microsoftアカウントが必要だ。

 アプリケーション登録ポータルにサインインしたら、「集中型アプリケーション」(converged applications=「統合アプリ」)を追加して、アプリの名前などを登録する。登録手順の概要を次の画像に示すので、参考にしてもらいたい(このUIは頻繁に変更されるので、異なっている可能性がある)。今回の場合、登録内容で重要なのは、アプリの名前とアクセス許可だ。アプリの名前は、そのままユーザー認証のUIに表示される。アクセス許可が正しくないと、アプリからのAPI呼び出しが拒絶される。また、アプリケーションIDは、後ほどコーディングするときのクライアントIDとして使うので、書き留めておく。

「集中型アプリケーション」の[アプリの追加](赤丸内)をクリック
「集中型アプリケーション」の[アプリの追加](赤丸内)をクリック
アプリ名(エンドユーザーに提示される)を入力して[Create](作成)ボタンをクリック
アプリ名(エンドユーザーに提示される)を入力して[Create](作成)ボタンをクリック
登録情報画面に切り替わった(以降の画像は、同じ画面の中の別の箇所である)。アプリケーションID(赤枠内)をコピペしておく。[プラットフォームの追加](赤丸内)をクリック
登録情報画面に切り替わった(以降の画像は、同じ画面の中の別の箇所である)。
アプリケーションID(赤枠内)をコピペしておく。
[プラットフォームの追加](赤丸内)をクリック
コンソールアプリから使う場合は、[プラットフォームの追加]ダイアログで[ネイティブ アプリケーション]を選択
コンソールアプリから使う場合は、
[プラットフォームの追加]ダイアログで[ネイティブ アプリケーション]を選択
「委任されたアクセス許可」には既定で[User.Read]が表示されている。メール送信をするには、[追加]ボタン(赤丸内)を使って[Mail.Send]を追加する。追加後は、[Mail.Send]と[User.Read]になる(赤枠内)。最後に、画面最下部にある[保存]ボタンで登録を完了させる。
「委任されたアクセス許可」には既定で[User.Read]が表示されている。
メール送信をするには、[追加]ボタン(赤丸内)を使って[Mail.Send]を追加する。
追加後は、[Mail.Send]と[User.Read]になる(赤枠内)。
最後に、画面最下部にある[保存]ボタンで登録を完了させる。

アプリを登録する手順の概要
アクセス許可に2種類あるが、エンドユーザーにMicrosoftアカウントでサインインしてもらって(=エンドユーザーに権限を委任してもらって)アプリがアクセスする場合は「委任されたアクセス許可」を選ぶ。


ユーザー認証をするには?

 ほとんどのGraph APIは、呼び出すときにアクセストークンが必要である。Azure ADで認証を受けると、アクセストークンを得られる。以下に示すように、この認証には2通りの方法がある。

  • エンドユーザーなしで認証する:エンドユーザーとは関係ないアカウントでGraph APIを使う場合。例えば、メールに自動応答するシステムなどで利用する方法。詳しくは「ユーザーなしでアクセスを取得」を参照
  • エンドユーザーが認証を行う:エンドユーザーのアカウントでGraph APIを使う場合。アプリケーション登録ポータルでは「委任されたアクセス許可」と表現されている。ほとんどのクライアントアプリはこちらになる。認証ダイアログ(Webページまたはアプリ組み込み)がポップアップする

 エンドユーザーが認証を行う場合、そのアカウントが一般的なMicrosoftアカウントか、それとも、職場または学校アカウント(Azure ADのアカウント)なのかによって、以下のように利用できる認証方法が異なる。

  • Azure AD (v1):職場または学校アカウントのみ
  • Azure AD v2.0:Microsoftアカウント/職場または学校アカウント

 今回はMicrosoftアカウントを使いたいので、Azure AD v2.0を選ぶ。そのREST APIをラップしたライブラリが、「ライブラリを導入するには?」でインストールしたMicrosoft Authentication Library(MSAL)である。

 話が長くなったが、ここまでがGraph APIの基礎知識である。ようやくコーディングに取り掛かる準備ができた。

 さて、MSALを使ってユーザー認証を受けるコンソールアプリは次のコードのようになる。一部、「*」文字で伏せ字にしているが、実際には適切な文字列を設定してほしい(以下同じ)。

class Program
{
  // ClientIDには、アプリを登録したときのアプリケーションIDを設定する
  const string ClientID = "********-****-****-****-************";
  private static readonly string RedirectUri = $"msal{ClientID}://auth";

  // ユーザー認証関係のプロパティ(後ほど、別のクラスからもアクセスする)
  public static PublicClientApplication PCA { get; }
    = new PublicClientApplication(ClientID) { RedirectUri = RedirectUri, };
  public static IReadOnlyList<string> Scopes { get; } 
    = new List<string> { "User.Read", "Mail.Send", }.AsReadOnly();

  // 「async Task Main」と書けるのはC# 7.1以降
  static async Task Main(string[] args)
  {
    AuthenticationResult ar = null; // 認証結果(アクセストークンなどが入る)
    try
    {
      // まずサイレントサインインを試す
      try
      {
        IAccount signedInUser
          = (await Program.PCA.GetAccountsAsync()).FirstOrDefault();
        if(signedInUser != null)
          ar = await PCA.AcquireTokenSilentAsync(Scopes, signedInUser);
          // サイレントサインインに失敗するとMsalUiRequiredExceptionが出る
      }
      catch { }

      // サイレントサインインができなかったら、サインインのUIを出す
      if (ar == null)
        ar = await PCA.AcquireTokenAsync(Scopes);

      WriteLine("サインインしました。");
      WriteLine($"AccessToken={ar.AccessToken}");
      WriteLine($"Username={ar.Account.Username}");
      WriteLine($"ExpiresOn={ar.ExpiresOn.LocalDateTime.ToString("HH:mm:ss")}");
      WriteLine($"Scopes={string.Join(", ", ar.Scopes)}");
      // 出力例:
      // サインインしました。
      // AccessToken=EwBwA8l6BAAURSN……中略……Rd2Ag==
      // Username=biac@***.com
      // ExpiresOn=23:02:13
      // Scopes=mail.send, openid, profile, user.read
    }
    catch(MsalException ex)
    {
      // 認証せずにダイアログを閉じると例外が出る
      WriteLine($"{ex.GetType().Name}:{ex.ErrorCode}");
    }
    if (ar == null)
    {
      // サインインできなかったのでアプリ終了
#if DEBUG
      ReadKey();
#endif
      return;
    }

    // ここでGraph APIを使った処理を行う

    // サインアウトする
    await PCA.RemoveAsync(ar.Account);
    WriteLine("サインアウトしました");

#if DEBUG
    ReadKey();
#endif
  }
}

Module Module1
  ' ClientIDには、アプリを登録したときのアプリケーションIDを設定する
  Const ClientID As String = "********-****-****-****-************"
  Private ReadOnly RedirectUri As String = $"msal{ClientID}://auth"

  ' ユーザー認証関係のプロパティ
  Public ReadOnly Property PCA As PublicClientApplication _
    = New PublicClientApplication(ClientID) With {.RedirectUri = RedirectUri}
  Public ReadOnly Property Scopes As IReadOnlyList(Of String) _
    = New List(Of String) From {"User.Read", "Mail.Send"}.AsReadOnly()

  Sub Main()
    Task.Run(Async Function() As Task
               Await SendMailAsync()
             End Function).Wait()
#If DEBUG Then
    ReadKey()
#End If
  End Sub
  Async Function SendMailAsync() As Task
    Dim ar As AuthenticationResult = Nothing ' 認証結果(アクセストークンなどが入る)
    Try
      ' まずサイレントサインインを試す
      Try
        Dim signedInUser As IAccount _
          = (Await PCA.GetAccountsAsync()).FirstOrDefault()
        If (signedInUser IsNot Nothing) Then
          ar = Await PCA.AcquireTokenSilentAsync(Scopes, signedInUser)
          ' サイレントサインインに失敗するとMsalUiRequiredExceptionが出る
        End If
      Catch
      End Try

      ' サイレントサインインができなかったら、サインインのUIを出す
      If (ar Is Nothing) Then
        ar = Await PCA.AcquireTokenAsync(Scopes)
      End If

      WriteLine("サインインしました。")
      WriteLine($"AccessToken={ar.AccessToken}")
      WriteLine($"Username={ar.Account.Username}")
      WriteLine($"ExpiresOn={ar.ExpiresOn.LocalDateTime.ToString("HH:mm:ss")}")
      WriteLine($"Scopes={String.Join(", ", ar.Scopes)}")
      ' 出力例:
      ' サインインしました。
      ' AccessToken=EwBwA8l6BAAURSN……中略……Rd2Ag==
      ' Username=biac@***.com
      ' ExpiresOn=23:02:13
      ' Scopes=mail.send, openid, profile, user.read
    Catch ex As MsalException
      ' 認証せずにダイアログを閉じると例外が出る
      WriteLine($"{ex.GetType().Name}:{ex.ErrorCode}")
    Catch ex As Exception
      WriteLine(ex.ToString())
    End Try
    If (ar Is Nothing) Then
      ' サインインできなかったのでアプリ終了
      Return
    End If

    ' ここでGraph APIを使った処理を行う

    ' サインアウトする
    Await PCA.RemoveAsync(ar.Account)
    WriteLine("サインアウトしました")
  End Function
End Module

MSALを使ってサインイン/サインアウトするコンソールアプリの例(上:C#、下:VB)
このC#のコードは、C# 7.1以降でないとビルドできないので注意してほしい。Visual Studio 2017でC#7.1を有効にする方法は、「Dev Basics/Keyword:C# 7.1」をご覧いただきたい。
サインインするには、PublicClientApplicationクラス(Microsoft.Identity.Client名前空間)のインスタンスを作って、AcquireTokenAsyncメソッドを呼び出すだけである。これで認証ダイアログが出るので、エンドユーザーにサインインしてもらう。
なお、このサンプルではまずサイレントサインインを試しているが、実はコンソールアプリの冒頭では無意味である。長時間使うGUIアプリの場合、Graph APIを使うたびに認証ダイアログがポップアップしてはうっとうしい。認証を受けると(サインアウトしなければ)1時間ほど有効なので、Graph APIをその間に使う可能性があるときはサイレントサインインを試してみるのがよい。認証ダイアログを出すことなく再認証され、認証の有効時間が延長される。

 上のコードを実行すると、次の画像のような認証ダイアログが表示される。

認証ダイアログの初期画面。指示に従って進める
認証ダイアログの初期画面。
指示に従って進める
入力したメールアドレスにMicrosoftアカウントと職場または学校アカウントの両方が結び付いているときは、このような選択画面も表示される
入力したメールアドレスにMicrosoftアカウントと職場または学校アカウントの両方が結び付いているときは、このような選択画面も表示される
最後に、アプリ名とアプリに与えるアクセス許可の確認が表示される。ここで[はい]をクリックすると認証完了となる
最後に、アプリ名とアプリに与えるアクセス許可の確認が表示される。
ここで[はい]をクリックすると認証完了となる

MSALの認証ダイアログ
このダイアログはMSALのライブラリが出している。ここで入力したパスワードは、アプリには渡されない。ライブラリを使わずにAzure ADの認証を受ける場合でも、同様なWebページが表示され、やはりパスワードがアプリに渡されることはない。


テキストメールを組み立てるには?

 メールのメッセージは、Messageクラス(Microsoft.Graph名前空間)で表される。ちなみに、MessageクラスはOutlookItemクラス(Microsoft.Graph名前空間)を継承している。

 テキストメールのメッセージを組み立てるには、Messageクラスのインスタンスを作り、そのプロパティを設定すればよい(次のコード)。文字コードを指定する方法はないが、JISコードでエンコーディングされて送信される(恐らく、Windowsの言語設定を見てGraph APIを呼び出すときにAccept-Languageを送信し、それによって判定しているものと思われる)。

// メール作成
var email = new Message
{
  ToRecipients = new Recipient[] {
    new Recipient {
      EmailAddress = new EmailAddress {
        Name = "outlook.comからメール受信",
        Address = "***@***.jp"
      }
    },
    // Recipientオブジェクトは複数指定可能(CC/BCCも)
  },
  // CcRecipients = ……省略……
  // BccRecipients = ……省略……
  Subject = "Graph APIでメールを送信するテスト",
  Body = new ItemBody
  {
    ContentType = BodyType.Text,
    Content = "Microsoft GRAPHを使ったメール送信のテスト。",
  },
};

' メール作成
Dim email = New Message With
{
  .ToRecipients = {
    New Recipient With {
      .EmailAddress = New EmailAddress With {
        .Name = "outlook.comからメール受信",
        .Address = "***@***.jp"
      }
    }
  },
  .Subject = "Graph APIでメールを送信するテスト",
  .Body = New ItemBody With
  {
    .ContentType = BodyType.Text,
    .Content = "Microsoft GRAPH を使ったメール送信のテスト。"
  }
}
' CC(CcRecipientsプロパティ)/BCC(BccRecipientsプロパティ)も指定可
' Recipientオブジェクトは複数指定可能(TO/CC/BCC)

テキストメールのメッセージを組み立てる例(上:C#、下:VB)
このコードは、前述のサンプルコードで「ここでGraph APIを使った処理を行う」とコメントした部分に記述する。
ここではContentTypeプロパティに「BodyType.Text」と指定しているので、プレーンテキストのメールになる。「BodyType.Html」を指定し、ContentプロパティにHTMLの文字列を設定すればHTMLメールになる。

 なお、MessageクラスにはFromプロパティもあるが、通常は設定しない。サインインしたアカウントのメールアドレスが使われる。サインインしたアカウントに複数のメールアドレスが登録されている場合には、サインインに使ったものとは異なるメールアドレスをFromプロパティに設定することは可能だ。ただし、その場合はNameプロパティは無視されて、登録されている名前が使われる。

 もしも、サインインしたアカウントに結び付けられていないメールアドレスをFromプロパティに設定してしまった場合は、メール送信がエラーになるばかりか、そのアカウントが凍結されてしまうこともあるので注意が必要だ(次の画像)。要するに、FROMの詐称は許さないというわけである。

不正なFROMを指定してアカウントが凍結された(凍結を通知するメール) 不正なFROMを指定してアカウントが凍結された(凍結を通知するメール)
「verify your account」のリンク先を開いて指示に従って操作すれば、すぐに解除される。
FROM詐称を許さないようにして、outlook.comからのメールの信頼性を高めているのである。

メールを送信するには?

 MSALライブラリでGraph APIを使うには、GraphServiceClientクラス(Microsoft.Graph名前空間)を利用する。

 Graph APIにリクエストを送信するときにアクセストークンを添付する必要があるのだが、MSALではその処理をIAuthenticationProviderインタフェース(Microsoft.Graph名前空間)で行うように設計されている。その実装を先に作っておこう(次のコード)。

public class MsalAuthenticationProvider : IAuthenticationProvider
{
  public async Task AuthenticateRequestAsync(HttpRequestMessage request)
  {
    // 確実に有効なアクセストークンを得るために、サイレントサインインを行う
    IAccount signedInUser 
      = (await Program.PCA.GetAccountsAsync()).FirstOrDefault();
    AuthenticationResult ar
      = await Program.PCA.AcquireTokenSilentAsync(Program.Scopes, signedInUser);

    // アクセストークンをrequestにセットする
    request.Headers.Authorization
      = new AuthenticationHeaderValue("Bearer", ar.AccessToken);
  }
}

Public Class MsalAuthenticationProvider
  Implements IAuthenticationProvider

  Public Async Function AuthenticateRequestAsync(request As HttpRequestMessage) As Task _
    Implements IAuthenticationProvider.AuthenticateRequestAsync

    ' 確実に有効なアクセストークンを得るために、サイレントサインインを行う
    Dim signedInUser As IAccount = (Await PCA.GetAccountsAsync()).FirstOrDefault()
    Dim ar As AuthenticationResult _
      = Await PCA.AcquireTokenSilentAsync(Scopes, signedInUser)

    ' アクセストークンをrequestにセットする
    request.Headers.Authorization _
      = New AuthenticationHeaderValue("Bearer", ar.AccessToken)
  End Function
End Class

IAuthenticationProviderインタフェースの実装例(上:C#、下:VB)
認証に使ったPublicClientApplicationオブジェクト(PCAプロパティ)とスコープの配列(Scopesプロパティ)が、ここでも必要になることに注意。そのために、ユーザー認証をするサンプルコードのところで、これら2つをpublicなプロパティにしておいたのである。
なお、「Bearer」というのは、OAuth 2.0のbearer tokenのことである。

 実際にメールを送信するコードは、次のようにシンプルなものだ。

// メール送信
try
{
  GraphServiceClient gsc
    = new GraphServiceClient(new MsalAuthenticationProvider());
  await gsc.Me.SendMail(email).Request().PostAsync();
  WriteLine("メール送信完了");
}
catch (Exception ex)
{
  WriteLine("メール送信失敗");
  WriteLine(ex.ToString());
}

' メール送信
Try
  Dim gsc As GraphServiceClient _
    = New GraphServiceClient(New MsalAuthenticationProvider())
  Await gsc.Me.SendMail(email).Request().PostAsync()
  WriteLine("メール送信完了")

Catch ex As Exception
  WriteLine("メール送信失敗")
  WriteLine(ex.ToString())
End Try

outlook.comでメールを送信する例(上:C#、下:VB)
このコードは、前述のサンプルコード「テキストメールのメッセージを組み立てる例」の後ろに続けて記述する。

ファイルを添付するには?

 送信するメールにファイルを添付するには、MessageオブジェクトのAttachmentsプロパティを設定すればよい(次のコード)。マルチパートメールの仕組みを意識することなく、簡単にコーディングできる。

email.Attachments = new MessageAttachmentsCollectionPage();
string path = @"C:\Windows\Web\Wallpaper\Theme2\img10.jpg"; // 添付したいファイル
email.Attachments.Add(new FileAttachment
{
  ODataType = "#microsoft.graph.fileAttachment",
  ContentBytes = System.IO.File.ReadAllBytes(path),
  ContentType = "image/jpeg",
  Name = System.IO.Path.GetFileName(path),
});

email.Attachments = New MessageAttachmentsCollectionPage()
Dim path As String = "C:\Windows\Web\Wallpaper\Theme2\img10.jpg" ' 添付したいファイル
email.Attachments.Add(New FileAttachment With
{
  .ODataType = "#microsoft.graph.fileAttachment",
  .ContentBytes = System.IO.File.ReadAllBytes(path),
  .ContentType = "image/jpeg",
  .Name = System.IO.Path.GetFileName(path)
})

メールにファイルを添付する例(上:C#、下:VB)
このコードは、メールを送信するコードの手前に記述する。添付ファイルのパスは、適切なものに修正してほしい。
ODataTypeプロパティは、ファイルを添付する場合はこのように指定する。ファイルの他にItemAttachment(連絡先/イベント/メッセージ)とReferenceAttachment(クラウド上のファイルへのリンク)も指定できる。詳しくは「添付ファイルを追加する」を参照していただきたい(いずれも、ODataTypeプロパティに設定するときは先頭に「#」を付ける)。

まとめ

 エンドユーザーのMicrosoftアカウントを使って、outlook.comからメールを送信できる。Microsoft Graph APIを使えるようにするまでの準備がちょっと厄介であるが、メールを作って送信するコードは簡単である。

利用可能バージョン:.NET Framework 4.5以降
カテゴリ:オープンソースライブラリ 処理対象:Windowsフォーム
カテゴリ:オープンソースライブラリ 処理対象:WPF
カテゴリ:オープンソースライブラリ 処理対象:Xamarin.Forms
カテゴリ:クラスライブラリ 処理対象:電子メール
使用ライブラリ:Messageクラス(Microsoft.Graph名前空間)
使用ライブラリ:GraphServiceClientクラス(Microsoft.Graph名前空間)
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関連TIPS:構文:インスタンス化と同時にプロパティを設定するには?[C#/VB]
関連TIPS:構文:コレクションのインスタンス化と同時に要素を追加するには?[C#/VB]
関連TIPS:構文:クラス名を書かずに静的メソッドを呼び出すには?[C# 6.0]
関連TIPS:VB.NETでクラス名を省略してメソッドや定数を利用するには?
関連TIPS:数値を右詰めや0埋めで文字列化するには?[C#、VB]
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