Active Directory 2019ってどうなの? 注目の新機能は?その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(124)(2/2 ページ)

» 2018年12月04日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
前のページへ 1|2       

下位互換性はWindows Server 2016のAD DSの方が高い?

 既にWindows Server 2016で構築したActive Directoryドメインを運用しているのなら、ドメインコントローラーをWindows Server 2019にアップグレードするのと、現行バージョンのまま運用を継続するのとで、AD DSの機能としては両者に何も違いはないと考えてよさそうです。

 “機能”に限っていえば、Windows Server 2019のAD DSは「Active Directory 2019」や「AD DS 2019」と表現するよりも、「Active Directory 2016」や「AD DS 2016」と表現した方が適しているような気がします。

 1つだけ注意点があるとすれば、Windows Server,version 1709以降、FRSを使用したSYSVOLレプリケーションがサポートされなくなったことがあります。

 Windows Server 2016のAD DSは、Windows Server 2003のフォレスト/ドメイン機能レベルを表向き(新規フォレスト/ドメインのインストール)サポートしなくなりましたが、以下のドキュメントで説明されているように、移行に時間のかかる顧客向けに、Windows Server 2016 AD DSにおいてもWindows Server 2003のフォレスト/ドメイン機能レベルと、この機能レベルでのSYSVOLレプリケーションに利用されるFRSのサポートが提供されていました(Windows Server 2008以上の機能レベルではDFS-Rを使用)。

 しかし、FRSのサポートは以下のサポート情報で説明されているように、Windows Server,version 1709で廃止されました。

 Windows Server 2019は当然、FRSによるSYSVOLレプリケーションをサポートしていないので、Windows Server 2003のフォレスト/ドメイン機能レベルのActive Directoryフォレスト/ドメインにドメインコントローラーとして追加することはできなくなりました(画面6)。AD DSの“下位互換性”という面では、Windows Server 2016がいろいろと最後のバージョンになったわけです。

画面6 画面6 Windows Server 2016はWindows Server 2003のフォレスト(またはドメイン)機能レベルのActive Directoryにドメインコントローラーとして追加できるが(警告あり)、Windows Server 2019はFRSのサポートが廃止されたため不可能に

Active Directoryだけではない、2016そのままの機能

 Windows Server 2012 R2はWindows Server 2012をベースに、Windows Server 2016はWindows Server 2012 R2をベースにというように、Windows Serverは1つ前のバージョンをベースに開発され、改善や機能強化が行われてきました。1つ前をベースにしているといっても、これまでは何かしら新機能や改善点、変更点があるのが普通でした。

 Windows Server 2019は、もちろんWindows Server 2016がベースになっていますが、その開発スタイルはWindows 10と同様、Windows ServerのSAC(Windows Server,version 1709、version 1803、version 1809……)で継続的に行われるようになり、数年に一度、LTSCリリースにその成果が反映されることになります。それが影響しているのかどうか分かりませんが、全く手付かずの役割や機能が、そのまま搭載されることもあるようです。

 筆者が見つけたそんな例の1つに「Windows Server移行ツール」(SmigDeploy.exe)があります。Windows Server移行ツールは「サーバーの役割」や機能、OSの設定、データを別サーバ(通常は旧バージョンから新バージョンへ)に移行する作業を簡素化するPowerShellモジュールです。Windows Server 2016のWindows Server移行ツールでは、Windows Server 2003のサポート(「/os WS03」オプション)が削除されました。Windows Server 2019のWindows Server移行ツールはどうなったかというと、Windows Server 2016のものと全く同じもののように見えます(画面7)。

画面7 画面7 Windows Server移行ツール(SmigDeployツール)のオプションはWindows Server 2019で変更なし(「/os WS19」のようなオプションは追加されていない)

 このように、旧バージョンから全く変更のない、あるいは変更なさそうな「サーバーの役割」や機能、探せばもっと見つかるかもしれませんよ。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。