ネットワークエンジニアなら「回線の実体=レイヤーゼロ」を知っておこう羽ばたけ!ネットワークエンジニア(11)(2/2 ページ)

» 2018年12月25日 05時00分 公開
[松田次博@IT]
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デッドラインを決めて現地調査を急ぐ

 回線は期限までに開通させねばならない。言うはやすく行うは難し、これは回線開通でも成り立つ。

 店舗の開設やクラウドとの接続など、回線開通の期限は決まっている。デッドラインを明確にして、それに間に合うよう着実に開通までの作業をキャリアに実行させ、自社で行うべき作業の準備を進める必要がある。キャリアに新規で回線を申し込んでから、開通するまでの流れと留意点は次の通りだ。

  1. 回線申請 開通希望日の2カ月以上前に申し込むことが望ましい
  2. 現地調査 回線申請の3週間から1カ月後にキャリアが実施する。キャリアが回線の設置場所を調査し、光ケーブルの配線ルートやユーザー側で必要な付帯工事を明らかにする。付帯工事とは図1の木板の設置や図2のPF管の敷設などである。光ケーブルを天井裏に裸で配線するようなことはしない。必ず保護のための配管を設ける
  3. 現地調査結果報告書 現地調査から1週間後に届く。現地調査の結果が現地の写真とともに図2のような配線図として描かれ、付帯工事の必要の有無などを含めて報告がある。ユーザーは必要な付帯工事を、開通希望日までに完了させなければならない。ユーザーには見えないものの、現地調査結果に基づいて、NTT東西が光ケーブルについて空きの有無の確認を含め設計を行う。NTT東西の設計には3週間から1カ月程度かかる
  4. 回線開通日の確定 現地調査結果報告書の3週間から1カ月後。NTT東西の設計が終わると回線開通日が確定する。希望日通りで決まることもあれば、光ケーブルに空きがなく日数を要することもある。日数がかかり過ぎてデッドラインに間に合わない場合は、短縮するようキャリアと折衝する

 回線開通で一番困るのは、新しい店舗の開設といった回線を必要とするイベントの情報がなかなか届かず、デッドラインまでの期日が1カ月程度しかない、という場合だ。上記のプロセスを極力短縮するようキャリアに働き掛けるしかないのだが、代替手段を並行させて準備する必要がある。筆者のプロジェクトではLTEの無線をよく使う。

 先ほど解説したプロセスの中では、現地調査が重要である。回線を早く申し込んでも現地調査が終わらないと、キャリアやNTT東西が開通に向けて動き始めたとはいえない。回線申請して1週間たっても現地調査の日程が決まらないようなら、さっさと現地調査をするようキャリアに働き掛けねばならない。

 回線の話は泥臭いものだが、ネットワーク構成図に線を引いただけでは実際のネットワークを作ることはできない。皆さんも一度は回線申請から開通まで、経験することをお勧めしたい。

筆者紹介

松田次博(まつだ つぐひろ)

情報化研究会主宰。情報化研究会は情報通信に携わる人の勉強と交流を目的に1984年4月に発足。

IP電話ブームのきっかけとなった「東京ガス・IP電話」、企業と公衆無線LAN事業者がネットワークをシェアする「ツルハ・モデル」など、最新の技術やアイデアを生かした企業ネットワークの構築に豊富な実績がある。企画、提案、設計・構築、運用までプロジェクト責任者として自ら前面に立つのが仕事のスタイル。『自分主義-営業とプロマネを楽しむ30のヒント』(日経BP社刊)『ネットワークエンジニアの心得帳』(同)はじめ多数の著書がある。

東京大学経済学部卒。NTTデータ(法人システム事業本部ネットワーク企画ビジネスユニット長など歴任、2007年NTTデータ プリンシパルITスペシャリスト認定)を経て、現在、NECスマートネットワーク事業部主席技術主幹。


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