「読解力がない子どもにプログラミングを教えても、意味がない」――2018年、Facebookで反響があった開発者、プログラマー向け記事ベスト102018年を振り返る

2018年も、開発者、プログラマー向けの話題がたくさんありました。本稿では、2018年に@ITが公開した記事の中で注目を集めた上位10記事を紹介します。

» 2019年01月08日 05時00分 公開
[@IT]

 2018年が終わり、2019年を迎えました。2018年のITに関する大きな動きといえば、「MicrosoftによるGitHubの買収」「IBMによるRed Hat買収」などがありました。@IT読者の皆さんにとっては、どのような1年だったでしょうか。

 本稿では、2018年に@ITが公開した約800本の記事の中でも、Facebookでとくに反響のあった開発者、プログラマー向け記事について、「Facebookのシェア数、いいね数、コメント数の合計」(以下、FB合計)を基に上位10記事をピックアップ。これを読んで2018年を俯瞰(ふかん)してはいかがでしょうか。ちなみに、1〜3位は、担当者のコメント付きでお送りします。

次の世代を担う子どもたちに、「プログラミング」をどう学ばせるか?

 2018年、Facebookの反響が最も多かった記事は、2018年3月に開かれた「第80回 情報処理学会 全国大会」で行われた国立情報学研究所の新井紀子教授による基調講演と、2020年に必修化する「小学生のプログラミング教育」についてのパネルディスカッションを取り上げたものでした。

 新井教授は、2018年に出版された『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)の著者でもあります。「論理的な読解力がなければ、プログラミングを教えても、その能力は育たない」という主張は、全国の学校を対象に行った検証結果を基にしたものです。

 パネルディスカッションに参加した教育関係者からは、「では一体、何をどう教えればいいのか」「子どもたちにプログラミングを体験させるのでは不十分なのか」という声が挙がり、激しい議論が交わされました。実は、新学習指導要領では、今ある授業時間の中でプログラミングを教えるように指示しているものの、教える内容も具体的には決まっていません。別の機会に取材した教育関係者いわく「プログラミング教育について戸惑っている先生方も多い」そうです。

参考記事:小学校のプログラミング授業に潜入 自在にコードを操る子どもたちに驚いた(ITmedia エンタープライズ)

 しかし、「今の子どもたちにとって、『プログラミング教育』が将来重要なスキルにつながる」という意見は、新井教授をはじめ、記者が今までに取材したあらゆる教育関係者や企業関係者に共通しています。教育現場に負担をかけ過ぎず、かつ子どもたちに有効なプログラミング教育をいかに実行するか。2020年に向けて、これからもさまざまな議論や施策が行われそうです。

1位:「東ロボ」を主導した数学者が「読解力がない子どもにプログラミングを教えても、意味がない」と主張する理由(FB合計:3732)

2020年度から小学生のプログラミング教育が始まる。官庁や教育機関、企業を巻き込んだ教材開発やデモ授業などが進む中、国立情報学研究所の新井紀子教授は、AIや全国の子どもを対象にした研究活動の成果から「プログラミング教育以前に、学校は子どもの『読解力』を伸ばすべき」と主張する。その理由とは。


手書きのUIをHTMLに自動変換するMicrosoftの技術

 Microsoftが2018年8月に公開した「Sketch2Code」は、手書きでスケッチしたUI画面の画像を解析して、HTMLに変化するWebサービスです。画像を解析してメタデータを返すという、機械学習/Deep Learningを応用した画像認識技術を、開発プロセスに応用したものといえます。

 この例に限らず、近年、機械学習/Deep Learning技術を、ソフトウェア/サービスの開発、運用プロセスに応用して効率化する研究が進み、ツールに実装され始めています。@ITでは、それをテーマに2018年12月にセミナー「AI/機械学習、自動化で開発現場にも訪れるシンギュラリティにどう備えるか」を開催しました。レポート記事を掲載するので、ご期待ください。

2位:Microsoft、手書きのUIスケッチをHTMLに変換する「Sketch2Code」を発表(FB合計:1364)

Microsoftは、手書きでスケッチしたUI画面をHTMLコードに自動変換するWebベースソリューション「Sketch2Code」を発表した。


製造現場から学ぶ日本企業とエンジニアに必要なスタンスとは?

 ITがビジネスにおける最大の差別化要素となり、エンジニアがビジネスの主役といえる役割になっています。にもかかわらず、国内ではITに対する経営層の理解が薄く、エンジニアの待遇も米国に対して格差があります。そのような問題意識を、取材を通じて発信した一本。

 「今やITが価値であり本質です」といった至言が多数聞かれた他、アジャイル開発の源流はトヨタ生産方式というもともと国内にあったものであることが具体的なエピソードを通じて紹介されるなど、エンジニアから経営層まで、デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けて強くモチベートする内容となっています。

 ものづくりを強みとしてきた日本の製造業においても業務の標準化や効率化が進んできましたが、一方で、本当にエンドユーザーを思いやった製品開発ができているかという観点も近年は見直されています。テクノロジーを使ったものづくりにおいてもそれは同様で、「エンドユーザーにとっての使いやすさ」を追求することが成功の要件であり、運用においても「サーバが動いていてもシステムが止まっていては意味がない」といった認識がだいぶ浸透しつつあります。

 そもそもITは何のため、誰のためにあるのか、エンジニアはそれをどう扱えばいいのか、エンジニアに創造性を発揮してもらうために組織や経営層はどうあるべきなのか――IT活用の抜本的な見直しが求められている中で、網羅的に、かつ熱く語られた「DX時代の企業ITの要件」に、深い共感を覚えた読者も多かったのではないでしょうか。

3位:「何だ、アンドンじゃないか」――ITの世界に戻ってきたアジャイル・スクラムという“日本の製造現場の強み”(FB合計:716)

デジタルトランスフォーメーションが進展し、製造業をはじめ多くの企業がITの力を使った価値創造に取り組み始めている。だが一方で、ITを「コスト」と捉え、ソフトウェアの戦いにうまく踏み出せずにいる企業が多いのも現実だ。では今、日本企業とエンジニアに必要なスタンスとは何か?――2018年2月、都内で実施されたデンソー主催のトークショー「デンソー、ITはじめるってよ。 #DENSOHACK」に探る。


多くの反響があった記事、4位から10位は……

 1位から3位までの紹介でした。4〜10位の記事は、以下の表にまとめました。

順位 タイトル FB合計 掲載日
4 本当のFinTechは泥臭い――三菱東京UFJ銀行に見るセキュアで価値あるAPI開発 560 1月29日
5 「Bootstrap 4」が正式リリース――IE10以降、iOS 7以降、Android 5.0以降に対応 252 1月23日
6 エンジニアが生き生きと働ける「まっとうなアジャイル開発」を――永和システムマネジメント 241 3月30日
7 「ITの未来はAPIで形作られる」と、このベンチャーキャピタリストが断言する理由 234 1月11日
8 モノ作りはアジャイルと相性が良い? デンソーの3つチャレンジに見るこれからの「開発」のヒント 232 1月25日
9 年収が高いプログラミング言語は「Go」――「Scala」と「Python」が続く 196 8月8日
10 GitHubが「GitHub Actions」を発表、開発者が好きな機能を使ってワークフローを自動化 193 10月17日

 ここから大きく4つのトピックでまとめて2018年を振り返ります。

■FinTech、API、APIエコノミー

 三菱東京UFJ銀行のAPI開発の取り組みを追った「FinTech」に関する記事が4位となりました。そして7位には「APIエコノミー」を取り上げた記事がランクインしており、「FinTech」のようなサービスの潮流、そしてそれを支える「API」や「APIエコノミー」といった技術/概念の“今”に注目が集まっていたことがうかがえます。

4位:本当のFinTechは泥臭い――三菱東京UFJ銀行に見るセキュアで価値あるAPI開発

今やエンジニアは、ビジネス要件に応じた製品やサービスを「迅速」に、しかも「高い品質」で、できれば「低コスト」で開発し、リリースするという、相反する要求を同時に満たす必要に迫られている。そのヒントを三菱UFJフィナンシャル・グループの講演などから探る。


7位:「ITの未来はAPIで形作られる」と、このベンチャーキャピタリストが断言する理由

SDNブームの火付け役として知られるマーティン・カサド氏が、米有力ベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitzのゼネラルパートナーに就任して1年9カ月。同氏が自身の投資活動における最重点キーワードに掲げるのはAPIだ。


■CSSフレームワーク

 5位はCSSフレームワーク「Bootstrap 4」の正式リリースに関する記事でした。CSSの枠組みやスタイルなどを定義したライブラリを提供するCSSフレームワークは、素早い構築が求められるWeb制作に欠かせない存在です。他のCSSフレームワークとしては、JavaScriptを使用しない「Bulma」や、AmazonやTwitterのようなテーマを用意する「Semantic UI」などが登場しています。そのような変化の中で、「Bootstrap 3」の登場から5年ぶりとなるメジャーアップデートに、注目が集まりました。

5位:「Bootstrap 4」が正式リリース――IE10以降、iOS 7以降、Android 5.0以降に対応

オープンソースCSSフレームワークの最新版「Bootstrap 4」が正式リリースされた。CSSメタ言語を従来の「LESS」から「Sass」へ変更、Flexboxがデフォルトで有効になるなど、アーキテクチャの変更も行われている。


■アジャイル開発、DevOps

 6位、8位、そして10位は「アジャイル開発」「DevOps」に関連する記事でした。@ITは、2018年10月にリニューアルを行い、「アジャイル/DevOps」という枠組みを用意しました。今後も、開発、運用に関連する技術やノウハウを追いかけていきます。

6位:エンジニアが生き生きと働ける「まっとうなアジャイル開発」を――永和システムマネジメント

ITの力を使った「コト」作りが差別化の源泉となっている今、ビジネスはまさしく「ソフトウェアの戦い」に変容しつつある。そうした中にあって、アジャイル開発は企業の成長を支え、変革をもたらすドライバーになり得るのか。15年以上にわたってアジャイル開発の手法を使って多くの企業を支援してきた永和システムマネジメントに話を聞いた。


8位:モノ作りはアジャイルと相性が良い? デンソーの3つチャレンジに見るこれからの「開発」のヒント

今やエンジニアは、ビジネス要件に応じた製品やサービスを「迅速」に、しかも「高い品質」で、できれば「低コスト」で開発しリリースするという、相反する要求を同時に満たす必要に迫られている。では、どうすればその要求を同時に満たすことができるのだろうか?


10位:GitHubが「GitHub Actions」を発表、開発者が好きな機能を使ってワークフローを自動化

GitHubは2018年10月16日(米国時間)、米サンフランシスコで開催中のGitHub Universeで、ソフトウェア開発者のワークフローを自動化する機能「GitHub Actions」を発表した。開発者自身が、好きな機能やツールを組み合わせて、開発のパイプラインを効率化できるようにすることが目的だ。


■年収

 9位はプログラミング言語と求人データを基にした「年収が高いプログラミング言語」に関する記事でした。1位のGoは、Googleが開発するプログラミング言語。クロスコンパイルという、1つのソースコードで複数のプラットフォームに対応するアプリケーションを開発できる特長を持っています。

9位:年収が高いプログラミング言語は「Go」――「Scala」と「Python」が続く

ビズリーチは「プログラミング言語別年収ランキング2018」を発表した。1位は年収の中央値が600万円の「Go」、2位は「Scala」、3位は「Python」。スクリプト言語が多く、求人数ではRuby、Python、Cが際立っている。



 2019年は、日本における「システム/サービス開発」「プログラミング」を取り巻く環境がどのように変化していくのでしょうか。@ITでは引き続き、開発者、プログラマーをはじめ、ITに関わる皆さまに役立つ記事を、取材や連載を通じて紹介していきます。2019年も@ITをよろしくお願いします。

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