Pivotal CEOが、「いつかKubernetes製品をやめる日がくる」と話す理由ロブ・ミー氏に聞く、企業アプリケーション開発環境の今(1)(2/2 ページ)

» 2019年01月16日 05時00分 公開
[三木泉@IT]
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Kubernetesが抽象度を高めてきても構わない

 そうはいっても、Kubernetesでは、「インフラ」と呼ぼうが何と呼ぼうが、より高いレイヤーでのプラットフォームとなるための機能強化が、数々のサブプロジェクトとして進められている。ミドルウェア、あるいはアプリケーション基盤としての差別化が徐々に難しくなってくる可能性はないのか。ミー氏は次のように答える。

 「Pivotal社内の開発者からも、『テクノロジーの動きはとても速い。Kubernetes、Istio、Knativeをはじめとしたさまざまな技術により、私たちの生み出してきた技術要素が少しずつ置き換えられてしまうのではないか?』と聞かれることがある。私の答えはいつも同じだ。『私たちは開発者にとって最高の体験を与え、企業にとって最高の結果をもたらすプラットフォームを作ってきた。時間を掛けて構築した膨大な技術群に基づき、これを成し遂げてきた。その中には、他の人々がこれまで取り組まなかったために開発せざるを得なかった技術要素もある。私たちは新たな技術を必要に応じて取り組み、場合によっては過去に自らが開発した要素を捨てるかもしれない。しかし、未来に私たちが提供するプラットフォームがどのようなものであっても、それは根底にある技術とは関係なく、これまでと同じような体験、および結果を顧客に与えるものであるはずだ。つまり、私たちのハイレベルでの戦略が変化することは全くあり得ない。高いレベルでの抽象化、自動化、セキュリティは求められ続ける。こうしたニーズには際限がなく、やるべきことはますます増えてきている』ということだ。Kubernetesは確かに抽象度を多少高めようとしているが、彼らの活動は、インフラ提供者がユーザーに提供することを期待されている部分を対象としている」

あらためて、PivotalはなぜKubernetes製品を提供するのか

 開発者にとって最高の体験を提供することがPivotalの戦略だというのなら、同社はなぜ、明らかに抽象度の異なるPASとPKSを、(BOSHという共通の管理レイヤーを備えるにしても)同時に提供しているのか。Kubernetesは現時点では、優れたデベロッパーエクスペリエンスを提供するために、アプリケーション開発者とプラットフォーム開発者が密接に協力する必要があるとされている。PASとPKSを併用するユーザー企業にとって、2つのプラットフォームを運用しなければならないことが大きな負担になっているのではないか。

 「ほぼ更新することのない古いシステムがあり、これをモダナイズすることが非常に困難であるなら、コンテナ化してPKS上で動かせばいい。あるいは、社内開発のデータサービスを活用したい場合に、コンテナ化して動かしたいかもしれない。(PKSの利用を既存システムの稼働に限定するなら)運用としてはこうしたシステムを動かせ続ければいいだけになる。しかし、頻繁に更新し、本番環境にプッシュしなければならないようなインタラクティブなアプリケーション開発にPKSを使うのは、得策ではないと思う。アプリケーション開発者には、複雑なKubernetes活用のプロセスに関わらせるよりも、PASやPFSを使って効率を高めてもらう方がいいと考える」

 「今は、多くの人々がコンテナとKubernetesに興奮を覚え、その一部はKubernetesが結局のところは基盤だという事実を見失っている。だが、アプリケーション開発者や企業における事業部門のトップ、そしてCIO(最高情報責任者)が最終的に気にしなければならないのは生産性、セキュリティ、そして一貫性だ。Kubernetesを使っている多くの人たちが、『もっと高い抽象度が欲しい』『使いにくすぎる』と言っている。だからこそPivotalでは、複数レベルの抽象度と、自動化の提供に注力している」

 次回は後編として、ミー氏から見た企業のクラウドネイティブアプリケーション開発の現状について聞いた部分をお伝えする。

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