ドライバーの“入札”で路上駐車料金を調整するアルゴリズム、テルアビブ大が開発都市部の駐車場不足を解決か?

イスラエルのテルアビブ大学は、世界の都市で問題になっている駐車場不足に焦点を当てた研究を発表した。路上に駐車する際、ドライバーの“入札”に役立つ駐車アルゴリズムが、問題を解消する可能性があるという。

» 2019年01月16日 11時00分 公開
[@IT]

 世界の都市部で駐車場不足が深刻化する中、イスラエルのテルアビブ大学は、道路脇の路上駐車を効率化する手法を開発した。

 ドライバーの“入札”に役立つ「駐車アルゴリズム」である。アルゴリズムによって、路上駐車場間における混雑のばらつきを緩和し、より安価なエリアに駐車できるようになる。さらに駐車需要の高い都心部で路上駐車場を見つけやすくなる可能性があるという。

 このアルゴリズムを用いたスマートフォンアプリを使えば、路上駐車場の供給が少ない都心部で駐車が困難な一方、それ以外の地域で路上駐車場が空いているという問題を解決できるかもしれない。

 テルアビブ大学の地理・人間環境学部教授のイツァク・ベネンソン氏が主導した今回の研究「Establishing Heterogeneous Parking Prices for Uniform Parking Availability for Autonomous and Human-Driven Vehicles」は、2018年11月にIEEE Intelligent Transportation Systems Magazine(ITSM)で発表された。

需給バランスを路駐料金に反映する

 ベネンソン氏はこう説明する。「都市の路上駐車料金は現在、大都市地域では一定だ。だが、これは、特定区域ごとの固有の需給を反映していない。需給を無視した低料金が設定されていると、需要が供給を上回る地域では、路上駐車場を長時間探しても見つからないことが多い。また、需給を無視した高い料金の場合は、路上駐車場の利用率が低くなり、経済活力が損なわれる」

 「地理情報システム(GIS)ベースのわれわれの駐車料金アルゴリズム(NPPA:Nearest Pocket for Prices Algorithm)は、路上駐車料金、さらに主要道路から離れた場所の駐車料金を確立するための特定地域向けアルゴリズムだ。地域全体での路上駐車場の使用率が、あらかじめ設定した水準になることを保証できる」(ベネンソン氏)

 サンフランシスコの「SFparkプロジェクト」など世界の幾つかの都市では、路上駐車料金をリアルタイムに調整するパイロットプロジェクトが始まっている。だが、こうしたプロジェクトでは、数百万ドルのコストがかかる路上センサーを設置し、運用する必要がある。これだけの費用を投じても、路上駐車場の使用率を60〜80%の範囲で安定させる状態が限界なのだという。

路上駐車場の利用率を90%に高める

 研究者によると、新開発の駐車料金アルゴリズムは、イスラエルのテルアビブ市近郊のバトヤム市でテストが続けられている。かさばる高価な機器を設置することなく、リアルタイムの料金調整により、90%の路上駐車利用率を保証しているという。さらに需給バランスを考慮する際、都市全体ではなく、個別の建物とその前にある道路という「解像度」で路上駐車場を提供できる。

 都市のGISデータを使うことで、建物が何階建てなのかを把握し、その建物に関係する人員の数を推測して、路上駐車場の需要予測に利用する。道路にかかっている規制や道路同士の結合関係をGISデータから引き出して駐車可能な台数も計算する。このような情報は自治体が提供するGISの標準コンポーネントとして容易に入手できるのだという。

 「(単純なアルゴリズムを採用した場合)ある特定地域の無料スポットが減れば、料金は上がる。一部の地域の路上駐車スポットは、料金が高騰するために空いたままになる。だが、われわれの料金調整アルゴリズム(では入札の仕組みを取り入れたこと)により、本当に目的地の近くに駐車する必要があるドライバーは、駐車スペースが見つかるようになった」(ベネンソン氏)

 「あらゆる経済的不平等は、特別な無料駐車許可や割引料金によって解決される。目的地に車で移動するときに、駐車料金について知らせるアプリがあれば、駐車や交通に関する問題は解決できる」(同氏)

 研究者は、ドライバーの実際の駐車行動と研究所の実験での駐車行動を調べ、それらの結果をシミュレーションモデルでの駐車行動と比較した。

 「われわれは、都市では将来、調整型の路上駐車料金が採用されるようになると確信している。このメカニズムにより、都心部に来た人が長時間にわたって路上駐車場を探したり、不便な場所で高価な料金を課金されたりする問題が解消できる。路上駐車スペースは公共資産であり、公共資産として管理されなければならない」(同氏)

 研究チームの次の目標は、イスラエルのMaaS(Mobility as a Service)政策における駐車方式と適合する研究だ。公共交通機関の利用者やドライバー、乗客のそれぞれに役立つ手法へと応用し、将来普及が見込まれる自動運転車にアルゴリズムをスムーズに採用できるようにすることだ。

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