Windows Server 2019ベースのAzureゲストOSファミリー6がリリースMicrosoft Azure最新機能フォローアップ(71)

Microsoft AzureのCloud Servicesで、Windows Server 2019ベースの「AzureゲストOSファミリー6」がリリースされました。ゲストOSファミリー5以前でデプロイしたサービスがある場合は、ゲストOSファミリー6へのテストとアップグレードを検討してください。

» 2019年01月31日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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クラウドサービスのゲストOSファミリーとは?

 「Cloud Services(クラウドサービス)」は、Microsoft Azureの初期(当時はWindows Azure Platformと呼ばれていました)から提供されている、PaaS(Platform as a Service)の主要なフルマネージドサービスの一つです。

 クラウドサービスには、フロントエンドを受け持つ「Webロール」とバックエンド処理を受け持つ「Workerロール」の2つがあり、これらのロールとSQLデータベースなどの他のサービスと連携して、スケーラブルなアプリケーションを構築することができます(以前は「VMロール」というものもありましたが、VMロールはAzure仮想マシンに置き換えられました)。

 WebロールとWorkerロールは、Azure上に自動で作成、自動でスケールされるWindows仮想マシンにデプロイされることになります。この仮想マシンのゲストOSが「ゲストOSファミリー」であり、その最新バージョンが2019年1月24日(米国時間)にリリースされた「ゲストOSファミリー6」になります。

 クラウドサービスにアプリケーションをデプロイする側は、仮想マシンのメンテナンスについて考慮する必要はありません。その点がIaaS(Infrastructure as a Service)のAzure仮想マシンと大きく異なるところです。

 最新のゲストOSファミリー6は、2018年10月初めにリリースされ、11月中旬に再リリースされたWindows Server 2019をベースにしたもので、.NET Framework 3.5および4.7.2がインストールされています(画面1)。また、2019年1月23日リリースのAzure SDK for .NET 3.0を使用する必要があります。

画面1 画面1 Windows Server 2019ベースのAzureゲストOSファミリー6は、2019年1月24日(米国時間)にリリース

ゲストOSファミリーのサポートポリシー

 Azureの既定では、WebロールおよびWorkerロールのゲストOSは、「サービス構成(.cscfg)」で指定したOSファミリー内でサポートされている最新のイメージに定期的に更新されます。

 新しいOSファミリーへの更新を自動にすることも可能ですが、アプリケーションの互換性に影響する可能性もあります。そのため、テスト用デプロイを一時的にセットアップし、新しいゲストOSファミリーでテストして、その後、ゲストOSファミリーの更新を自動に切り替えることが推奨されています(画面2)。

画面2 画面2 新しいゲストOSファミリーへのアップグレードは、一時的なテスト用デプロイで互換性を確認したあと実施することが推奨される

 Azureでは、最新の2つのゲストOSファミリーと、ゲストOSファミリー内で最新の2つの更新バージョンがサポートされます。新しいゲストOSファミリーがリリースされると、12カ月間の告知期間後、最も古いゲストOSファミリーがサポート対象外になります。

 ただし、現在は、Windows Server 2008 R2 SP(Service Pack)1をベースにしたゲストOSファミリー2以上の5つのゲストOSファミリーが利用可能です。完全に提供が終了したのは、Windows Server 2008ベースのゲストOSファミリー1だけです。

 ゲストOSファミリー1の提供終了は2013年6月1日に発表され、2014年9月2日に新しいサービスのデプロイを終了し、デプロイ済みのサービスに対する延長サポートは2014年11月3日に終了しました。次の提供終了の判断が行われれば、対象の古いゲストOSファミリーを使用しているデプロイに対してアップグレードを促す通知があるはずです。

Azureの新しいサービスへの移行も選択肢

 クラウドサービスはAzureの初期から存在し、現在でもPaaSの中核サービスです。しかしながら、Azureポータル上で「Cloud Services(クラシック)」と表示されるように、Azureのレガシーな「クラシックデプロイモデル」のみをサポートし、新しい「リソースマネージャーデプロイモデル」をサポートしない唯一のサービスです。

 Azureにはクラウドサービスの代替アーキテクチャとなる、より新しいPaaSサービスが複数あります。例えば、Webロールは「Azure App Service」(Web Appsなど)に、Workerロールは「Azure WebJobs」に置き換えできる可能性があります。

 また、クラウドサービスの後継といえる「Service Fabric」もあります。これらのサービスでもサポートされている「Windowsコンテナー」や「Linuxコンテナー」のアーキテクチャやサービス(「Azure Container Instances」や「Azure Kubernetes Service」)もあります。

 Service Fabricは、WindowsやLinuxの物理/仮想マシン上に「Service Fabricクラスター」(またはスタンドアロン)として導入でき、開発者はService Fabricの抽象化されたプラットフォームに対してサービスをデプロイできます。

 Service Fabricは、AzureのIaaS環境、他社クラウドのIaaS環境、オンプレミスのWindows ServerやLinuxの物理/仮想化環境に構築することができます。また、フルマネージドサービスとして2018年7月に「Azure Service Fabric Mesh」のパブリックプレビューが開始されています。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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