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» 2019年02月08日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(95):“感情AI”技術、気付きにくい13の活用法

“感情AI”は企業の顧客エクスペリエンス向上やコスト削減にどう役立つのか。さまざまな業界における、13の気付きにくい活用方法を紹介する。

[Susan Moore, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップ。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 “感情AI”(感情を読み取る人工知能)の概念は、顧客サービスに携わる人型ロボットの姿を連想させる。「ホテルで宿泊客を迎える本物そっくりのレセプショニスト」といったイメージだ。多くの企業がパーソナルアシスタントロボットに感情認識機能を追加し、より人間らしいやりとりができるようにしようとしている。

 「だが、人型ロボットは、感情AI技術における多くの潜在的な用途の1つにすぎない」と、Gartnerのアナリストで、バイスプレジデントを務めるアネット・ジマーマン氏は指摘する。

 大手IT企業や小規模な新興企業が10年以上にわたって感情AIに投資しており、人間の感情を認識するためにコンピュータビジョンや音声解析を利用している。こうした企業の多くは、当初は市場調査にフォーカスしていた。商品やテレビのCMに対して人々が抱く感情を分析し、捉えるためだ。現在、感情AIは仮想パーソナルアシスタント(VPA)や自動車、コールセンター、ロボット、スマートデバイスで少しずつ導入が進んでいる。

 Gartnerは、2022年にはパーソナルデバイスの10%で、内蔵機能またはクラウドサービスとして感情AI機能を利用できるようになると予想している。この割合は2018年時点では1%に満たない。

 「われわれは次の1年も、感情AI技術の新しいエキサイティングな使い方を数多く発見し続けるだろう。だが、小規模なプロバイダーは、多くのものを多くの人に届けようとするのではなく、取り組みのターゲットとなるアプリケーションや業種の数を絞る必要がある」(ジマーマン氏)

新しい使い方が続々登場

 この2年間に感情AIベンダーは全く新しい分野や業種に進出し、企業の顧客エクスペリエンスの向上やコストの削減に貢献している。感情AIの新しい使い方には以下のようなものがある。

1.ビデオゲーム

 ゲーム機/ビデオゲームがコンピュータビジョンにより、ゲーム中にプレイヤーの顔の表情から感情を読み取り、それに合わせてゲームの調整を行う。

2.医療診断

 ソフトウェアが音声解析により、医師によるうつ病や認知症といった病気の診断を支援する。

3.教育

 子どもの感情に適応する学習ソフトウェアのプロトタイプが開発済みだ。課題が難しすぎたり、簡単すぎたりして子どもが不満を示すと、プログラムが課題の難易度を調整する。他にも、自閉症の子どもが他人の感情を認識する手助けをする別の学習システムもある。

4.従業員の安全

 Gartnerの顧客への調査によると、従業員の安全をサポートするソリューションの需要が拡大している。感情AIは緊急救援隊員など、過酷な仕事に携わるスタッフのストレスや不安のレベルの分析を支援する。

5.患者のケア

 “看護ボット”は、長期間治療を受けている高齢の患者に薬の服用を思い出させるだけでなく、こうした患者と毎日会話し、体調をモニタリングする。

6.安全運転

 自動車メーカーはコンピュータビジョン技術により、ドライバーの感情の状態をモニタリングできる。感情が高ぶっていたり、眠そうにしたりしていると、ドライバーに警告できる。

7.自律走行車

 将来、自律走行車の車内には、カメラやマイクと多数のセンサーが装備される。何が起こっているかをモニタリングし、ユーザーにとってどのような乗り心地なのかを把握するためだ。

8.詐欺検知

 保険会社は音声解析により、顧客が保険金請求書の提出時に事実を話しているかどうかを判断する。各種の独立調査によると、回答者の最大30%は保険の補償を受けるために、自動車保険会社にうそをついたことを認めている。

9.人材採用

 採用面接時に候補者の信頼度を確認するためにソフトウェアが使われている。

10.コールセンターのインテリジェントルーティング

 怒っている顧客を最初から特定して、十分な訓練を積んだ担当者に割り当てることができ、担当者は会話の状況をリアルタイムに画面でも確認しながら調整できる。

11.コネクテッドホーム

 VPA対応スピーカーは、話し掛けてくる相手の気分を察し、それに合わせて対応する。

12.公共サービス

 感情AI技術ベンダーと監視カメラメーカーの提携事例が登場している。アラブ首長国連邦(UAE)では、公共の場に設置されたカメラが人々の顔の表情を読み取り、これによって人々の一般的な気分を推測している。このプロジェクトは、UAEの幸福省によって開始された。

13.小売り

 小売業者は、コンピュータビジョンを使った感情AI技術を店舗に導入することを検討し始めている。来店客の客層情報や気分、反応を調べるためだ。

 しかし、感情AIの普及に向けては課題が残っている。Gartnerが最近行った消費者調査では、個々の感情AI技術に対する信頼の問題がまだ大きいことが分かった。すなわち、ユーザーは音声解析と比べ、カメラ撮影による感情AI技術により大きな不安を感じている。

 「関連サービス提供者は透過的なデータ管理ポリシーを実施することで、『人々の感情データは安全であり、匿名化された形で他のシステムをトレーニングするためにだけ使用される』と、人々を納得させる必要がある」と、ジマーマン氏は警告している。

出典:13 Surprising Uses For Emotion AI Technology(Smarter with Gartner)

筆者 Susan Moore

Director, Public Relations


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