教育/ハンズオン環境に適した「Azure Lab Services」の新ラボ環境、一般提供開始Microsoft Azure最新機能フォローアップ(73)

2019年2月27日(米国時間)、Azure仮想マシンのラボ環境をユーザーに提供するための新しいサービス「Azure Lab Services」の一般提供が発表されました。Azureでは既に開発やテストに適した「Azure DevTest Labs」というラボ環境が提供されていますが、将来的にDevTest LabsはAzure Lab Servicesの傘下に組み込まれる予定です。

» 2019年03月06日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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Azure Lab Servicesとは?

 「Azure Lab Services」は、2018年5月に米国シアトルで開催された開発者向けイベント「Microsoft Build 2018」で発表され、同時にパブリックプレビューとして提供されていました。パブリックプレビューが終了し、一般提供となったことが2019年2月27日(米国時間)に発表されました。パブリックプレビュー中は50%オフのプレビュー料金で提供されていましたが、一般提供となったことで2019年5月1日からは正規料金に移行します。

 なお、Microsoft Azureでは「Azure DevTest Labs」という、開発やテストに適したラボ環境のサービスが既に提供されています(画面1)。

画面1 画面1 DevTest Labsでは、ユーザーは許可されたMarketplaceまたはカスタムイメージ、許可されたサイズから、許可された数の仮想マシンを作成して実行できる

 DevTest Labsを使用すると、ラボ管理者はユーザーに対して、Azure Marketplaceで利用可能なイメージ、Azure仮想マシンの利用可能なサイズ、カスタムイメージ、作成可能な仮想マシンの最大数、自動開始や自動シャットダウンを制御できます。

 MicrosoftはLab Servicesの発表時、DevTest Labsの拡張として「クラスルームラボ」という新しい種類のラボ環境をプレビューとして追加し、プレビュー終了後は「Lab Services」に統合されるとしていました。Lab Servicesの配下では、クラスルームラボは「マネージドラボ」、DevTest Labsは「カスタムラボ」とも呼ばれています。

 今回、一般提供されたのは、クラスルームラボ(マネージドラボ)のサービスです。現状、Azureポータル上では、DevTest LabsとLab Servicesは別々のサービスとして提供され、料金体系も統合されていません(画面2)。

画面2 画面2 一般提供が開始されたLab Servicesのクラスルームラボ。現状、Azureポータル上ではDevTest Labsとは別のサービスとして提供されている

 ただし、公式ドキュメントは「Lab Servicesのドキュメント」として既に統合されており、今回の新サービスと従来のDevTest Labsは、それぞれLab Services配下の「クラスルームラボ」と「DevTestラボ」としてドキュメント化されています。

新しいクラスルームラボの利用イメージ

 Lab Servicesのクラスルームラボを利用するには、Lab Servicesのラボアカウントを作成し、ラボアカウント配下に1つ以上のラボを作成します。ラボアカウントでは、Azure MarketplaceにあるWindowsおよびLinux仮想マシンのイメージから、ラボで利用可能なイメージを選択できます。

 ラボアカウントの所有者(Azureサブスクリプションの管理者)は、Azure Active Directory(Azure AD)のアカウントに「ラボの作成者ロール」を割り当てることで、そのアカウントに対してラボアカウント内での新しいラボの作成を許可することができます。

 ラボの作成は、Azureポータル(https://portal.azure.com/)とは別の「Lab Services専用ポータル」(https://labs.azure.com/)で行います。

 クラスルームラボの使い方は、まず、ラボに名前を設定し、ラボに準備する仮想マシンの数を設定します(前出の画面2)。次に、ラボに準備する仮想マシンのサイズとAzure Marketplaceのイメージを選択し、共通の資格情報(ユーザー名とパスワード)を設定して、仮想マシンのテンプレートを作成し、ラボに発行します(画面3)。テンプレート作成時には仮想マシンにRDP(Windows仮想マシンの場合)またはSSH(Linux仮想マシンの場合)で接続して、アプリケーションのインストールなどが行えます。

画面3 画面3 ラボに準備する仮想マシンのサイズとイメージを選択し、テンプレートを作成してラボに発行する

 仮想マシンのサイズは以下の3種類があり、ラボユニット数で時間当たりの利用料金が決まります。1時間当たりの1ラボユニット料金は、1.12円(5月1日からの正規料金)の予定です。

  • 小(S):2コア、4GBメモリ、20ラボユニット
  • 中(M):4コア、8GBメモリ、42ラボユニット
  • 大(L):8コア、28GBメモリ、84ラボユニット

 テンプレートをラボに発行したら、ラボへのアクセスを許可する生徒(Student)ユーザーをメールアドレスで指定し、登録リンクをユーザーに配布します。ユーザーは登録リンクを使ってLab Servicesの専用ポータルにサインインし、テンプレートからデプロイされた仮想マシンを開始して、RDPまたはSSHで接続して、仮想マシンのコンソールにアクセスします(画面4画面5)。つまり、仮想マシンへのアクセスをユーザーに許可するために、Azureへのアクセス許可やAzure ADへのアカウント作成などの作業は必要ありません。

画面4 画面4 ユーザー(生徒)は登録リンクを使用してLab Servicesのポータルにサインインし、仮想マシンを開始して接続できる
画面5 画面5 ラボアカウントの所有者(教師)は、ラボの仮想マシンの使用状況を参照できる他、仮想マシンの開始/停止操作や、ユーザーがラボを利用可能な日時のスケジュールを構成することができる

明瞭な料金体系がクラスルームラボの魅力の一つ

 このように、マネージドラボとも呼ばれるクラスルームラボは、DevTest Labsのようなカスタマイズ性はありませんが、数クリックでテンプレートを作成、発行するだけですぐに利用を開始できます。また、ラボの削除(仮想マシンは全て削除されます)も簡単です。

 クラスルームラボの利点は、シンプルなサービスというだけでなく、その明瞭な料金体系にもあります。DevTest Labsのサービス自体は無料ですが、DevTest Labsのラボ環境に作成した仮想マシンのコンピューティング、ストレージ、ネットワークの料金は、通常のAzure仮想マシンと同じ価格で課金されます。例えば、仮想マシンを停止(割り当て解除)しない限り、コンピューティング料金が発生します。

 これに対して、クラスルームラボはLab Servicesのサービス料金だけで利用でき、仮想マシンが実行中の間だけ課金されます。そのため、料金の見積もりやコスト管理が容易です。例えば、生徒10人がSサイズ(2コア、4GBメモリ、ラボユニット20)のWindowsまたはLinux仮想マシンを10時間使用する場合、その料金は「10(人)×20(ユニット)×1.12(円/1ユニット時)×10時間」=2240円のように簡単に算出できます。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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