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» 2019年04月22日 10時00分 公開

SAP ERP導入支援ビジネスを展開するALSIに聞く:データをコピーするだけで3〜4日はかかる――SAP ERPにおけるテストデータマネジメントの課題とは

業務改革を推進するための中核的なソフトウェアとして1990年代から導入が進められたSAPシステム。現状のSAP ERPについてユーザーは何を課題に感じているのか。それをどのようにすれば解決できるのか。SAP ERP導入支援ビジネスを展開するアルプス システム インテグレーションと、開発、運用を手助けするさまざまなツールの国内展開を手掛けるアシストの対談から、SAP ERPにおけるデータマネジメントやデータ活用の課題、その解消方法を探っていきたい。

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 業務改革を推進するための中核的なソフトウェアとして1990年代から導入が進められたSAP ERP。製造業や流通小売業、商社、サービス業など多岐にわたる業界で採用が広がり、今日も主要な基幹系システムとなっている。また、SAP ERP 6.0(ECC 6.0)の2025年でのサポート終了をひかえ、SAP S/4HANAへの移行やシステム基盤のクラウド移行も大きなトピックだ。

 企業組織の中で、データを一貫したシステムで統合管理することで得られるメリットは大きい。ただ、使い方によっては、システムがスムーズな業務の妨げになるケースも出てくる。いわば「データの制約に人が合わせている」状態だ。

 現状のSAP ERPについてユーザーは何を課題に感じているのか。それをどのようにすれば解決できるのか。その答えを探る上で参考になるのが、SAPパートナーやSAP ERPの開発、運用を手助けするパッケージインテグレーターの意見だろう。

 そこで今回、SAP ERP導入支援ビジネスを展開するアルプス システム インテグレーション(ALSI)と、開発、運用を手助けするさまざまなツール(パッケージ)の国内展開を手掛けるアシストに対談してもらった。両社の対談から、SAP ERPにおけるデータマネジメントやデータ活用の課題、そして、その解消方法を探っていきたい。

左からアルプス システム インテグレーション 中野友芳氏、同社 武井順也氏、アシスト 平沼真人氏

製造現場で培った「ものづくりDNA」を生かしたSAP ERP導入支援ビジネス

──まずは、それぞれの事業や会社の紹介をお願いできますか。

武井氏 ALSIは、電子部品と車載情報機器の総合メーカーであるアルプスアルパイン(旧、アルプス電気)のグループ会社です。グループ向けの情報システム業務だけではなく、デジタルソリューション、セキュリティ、エンベデッドソリューションという3つの柱でソリューションを提供しています。われわれの部署では、デジタルソリューションの中でも、SAP ERPの導入支援やSAP ERPと他システムとの連携を手掛けています。

中野氏 「製造業」を支える各種システムを、構築から運用サポートまで長年サポートしてきており、そこで培った業務経験やシステム支援ノウハウを外販に活かすことができるのがわれわれの強みです。「ものづくりDNA」の思想を原点にし、さまざまなツールやシステムを組み合わせ、現場のニーズに応じたソリューションを提供しています。SAP ERPとの連携システムとしてはインフォマティカ社の「PowerCenter」やNTTデータイントラマート社の「intra-mart」などがあります。

平沼氏 アシストはパッケージインテグレーターです。この意味は、ソフトウェアを提供するだけではなく、そのソフトウェアを使いこなす上で必要な全てのサービスをインテグレートし、お客さまの情報活用をトータルにサポートすることです。さまざまなパッケージソフトウェアを扱っていますが、現在、私が担当しているのがデータベース仮想化ソリューション「Delphix」です。

 Delphixはグローバルでは全体の約4割がSAP ERPへの適用事例となっています。ただ、日本ではSAP ERPへの適用事例はまだ少なく、われわれにもSAP ERPの導入支援経験がないので、今回は、どのようなケースで利用できそうかを知りたいという気持ちが強くあります。

3システムランドスケープ(開発環境、検証環境、本番環境の3つの環境を利用、維持すること)の中で「テストデータをどう作るか」という問題

──今、SAP ERP導入プロジェクトの現場は、どのような悩みを抱えているのか、プロジェクトの難しさについてあらためて課題を教えていただけますか。

アルプス システム インテグレーション デジタルソリューション事業部 エンタープライズソリューション部 ビジネスソリューション1課 課長 武井順也氏

武井氏 一般的なベーシス観点の課題としては、まずは「プロジェクト導入時の環境構築のリードタイムをどう短縮するか」が挙げられます。プロジェクトを進める上では、テスト環境を各フェーズで準備していく必要があり、テスト環境準備に時間がかかります。次に、「テストデータを作る」という課題があります。その際にもさまざまな工夫を手作業で実施する必要があります。

中野氏 アプリのテストデータを作るための環境整備も必要です。SAP ERPのパラメーターを設定し、インタフェースを準備し、ジョブを設定します。新しい環境ごとにそうしたデータの整備が必要になります。こうした作業にトータルで2〜3週間はかかります。データをコピーするので、ディスク容量もそれなりに必要です。

平沼氏 データをコピーするという作業はどのくらいの時間と手間がかかるものなのでしょうか。

武井氏 環境構築でSAPが提供しているツールを使用するケースがあります。「SAP Test Data Migration Server(TDMS)」と呼ばれるもので、ハードウェアに容量制限がある場合は、このTDMSを使って環境を構築することがあります。TDMSを使ってデータをコピーする際には、特定の期間の、特定のテーブルを指定してデータを取得します。プロジェクトの進捗(しんちょく)に合わせて指定する範囲を変えることができます。しかし、データをコピーするだけで3〜4日はかかっています。

 本番機や検証機でコピーのプロセスを並行させて走らせることもできますが、稼働しているシステムに負荷がかかるのを避ける必要があり、そのため、土日などを狙って実施することがあります。

中野氏 環境を作るためにストレージが足りないので、データを消去してから作るということもあります。SAP ERPでは、「SAP ERP Central Component(ECC)」と呼ばれるERPのコア機能以外にも、計画系管理に必要な「SAP SCM Advanced Planning and Optimization(APO)」などの機能でも環境を整備する必要があります。環境構築時、特定の作業が終わるのを待つなどで時間がかかっているのが現状です。

 検証環境を構築するには、工数や時間がかかったり、リソースに制限があったり、と常に本番機同等ではないため、本番に近いデータを自分たちで作ることもあります。

平沼氏 それらをお客さまごとに実施するとなるとかなりの手間ですよね。

障害対応、監査対応で「本番データを利用できない」という課題

──テストデータ作成が大きな負担であることが課題の一つとのことですが、他の課題はどういったことでしょうか。

武井氏 テスト実施時は、本番にできる限り近いデータを使うことが望まれます。本番に近ければ近いほど、トラブルの芽を摘むことができるからです。これは、運用時のトラブルシューティングでも同じことがいえます。「障害」が発生したときにどう対応するかという運用時の課題です。

平沼氏 「障害」というのは具体的に何を指すのでしょうか。また、調査はどのように行うのでしょうか。

アルプス システム インテグレーション デジタルソリューション事業部 エンタープライズソリューション部 ERPデプロイメント課 課長 中野友芳氏

中野氏 障害には、一般的に2種類あります。「データの不正」と「プログラム不具合」です。調査は基本的には、データの中身、オブジェクトの中身を見て、他のデータと比べて同じなのか違うのかを確認します。また、「どのようにオペレーションしたか」のログが残るので、それをテスト環境で見て、同じようにオペレーションして「再現するかどうか」「データによって起こるケースと起こらないケースはあるのか」を確認します。その中で、「プログラムの問題なのか」「データ混入の問題なのか」「オペレーションミスなのか」「ジョブとのバッティングで起きたことなのか」を切り分けしていきます。そのためには、本番データ、あるいは本番にできるかぎり近いデータが必要です。

平沼氏 かなりの手間ですね。いろいろなケースを想定しながら、一つ一つつぶしていく作業が必要になるのですね。データの不整合の原因はプログラムか入力ミスかの2つに絞られるイメージもありますがそういうわけでもないのでしょうか。

中野氏 2つに絞られるわけではありません。プログラムの場合は、リリースしてすぐ分かるケースがほとんどです。ただ、中にはリリースしてから数年たって発生するものもあります。「障害」が発生してしまうオペレーションパターンが数年も行われておらず、使われてみて発生したケースですね。潜在的な不具合というのか、眠っていたものが後で見つかるということです。中には、システムの要件やデータの構成によって、SAP ERP標準にフィットせず問題になるケースもあります。

平沼氏 私は、パッケージソフトを開発していた経験があるのですが、データの不整合により発生した不具合を解消するための調査には、私もかなりの時間を費やしました。

武井氏 同じような課題としては、監査対応があります。監査では「いついつまでのデータを保存しておく」ことが求められるのですが、SAP ERP標準の機能で保管する場合、開発やハードウェアリソースが必要になります。

本番データを全て持ってテストするのが理想的な姿

──そのような課題に、例えばDelphixのようなツールは、どう対応できるのでしょうか。

アシスト データベース技術本部 技術統括部 技術4部 課長 平沼真人氏

平沼氏 Delphixは、本番データベースの過去から現在に至る任意のタイミングのデータを瞬時に生成し、開発、テスト、品質保証、マイグレーション、レポーティングなどさまざまな目的で利用できるデータベース仮想化ソリューションです。仮想化技術により、物理的なデータのコピーは行いません。そのため、コピーによって、ストレージの容量が増えることがありません。また、複製も数分で行えます。使い勝手も良く、誰でも簡単に利用できることが特長です。

 ユースケースとしては、マスターのリポジトリデータベースをDelphixにより複製し、それぞれの開発者にデータのコピーを配布して、並行開発するといったものがあります。また運用においては、本番データから任意のタイミングでスナップショットを作成し、テストに用いたり、障害の調査や、バックアップや災害対策に用いたりできます。また、他システムへのデータの受け渡しなどの連携にも活用できます。

武井氏 開発という観点では、テストデータをいかに本番データに近づけるかという点で適用ができるのかもしれませんね。システムコピーやTDMSを使ったデータコピーは時間と手間がかかり、簡単には準備ができないため、本番データを全て持った状態でテストするのは難しいことですが、本番データを使ってテストするのが理想的な姿だと思います。

 一方で、SAP ERPでの並行開発に適用するのは難しさも感じます。開発環境を分けたことがないのではっきりとは分かりませんが、SAP ERPのテストでは、ロジスティクス系のシステムからデータを入れて、順番に処理して最終的に会計データで確認するという流れになります。一連の流れをチェックする意味では1つの方がいいと思います。ただ、プロジェクトが同時進行する場合は分けることもありなのかもしれません。

中野氏 かつて製造系の環境と会計の環境を分けて開発したことはあります。これは締め処理のテストや月次、四半期の処理の問題で、製造チームと、会計チームが別の次元でテストしたいということで分けました。状況によっては分かれていることで効率的にテストが実施できる可能性はあるかもしれません。

武井氏 確かにお客さまの中にはクライアントを複数持っている場合もあります。国によってクライアントを変えたり、プロジェクトの進め方によって変えたりしているようです。導入期間の1年のうちに最初の半年は「A」というクライアント、次の半年は「B」というクライアントと、使い分ける場合は、複数環境があった方がいいのかもしれませんね。

平沼氏 SAP ERPの場合は、データとアプリケーションがセットであり、データだけ戻してもアプリケーションとの整合性がとれないと動きません。開発に利用する場合は、その辺りを考慮する必要がありそうですね。

複数のスナップショットを取得し、データ活用やコンプライアンスに活かす

──開発やテストフェーズでの適用を想定したお話でしたが、運用フェーズについてはどうでしょうか。

中野氏 私が仮想データベースを活用するといいなと思ったのは、大きく2つあります。

 一つは、障害時の対応です。障害対応のときに、データを再現しようと思ってもできないことがあります。複数のスナップショットを簡単に取得しておけるなら、元の状態に近づけることで「データの不整合がどこで起こったのか」が突き止めやすくなります。

 もう一つは、複数の断面に戻ってオペレーションを追跡できるということです。業務的な観点でいうと、お客さまからよく「過去に戻って、その時点でのデータが取れないのか」という依頼を受けます。その場合、データは複数回更新されているため、「過去といっても、どの時点のデータなのか?」を判断することは困難です。時系列でデータを複製でれば業務で利用できる可能性があります。

武井氏 複数の断面を取得し、それをSAP ERPとは別のシステムとしてお客さまがいつでも見られるように提供すれば、お客さまの利便性も高まる。Delphixには、そうしたユースケースはありますか。

平沼氏 あります。SAP ERPに限らず、まさにおっしゃったような、オペレーションの履歴や過去のある時点のデータをユーザーにサービスの一つとして開放しているケースがあります。

中野氏 MRP(Materials Requirements Planning:資材所要量計画)システムでも、MRPを実施した後しかデータが分からないという事情があります。SAP ERP標準で履歴が取れないので、自分たちで取得しておくしかない。もしそれが断面として取れるのはすごく意味があると思います。「あのとき、どうだったか」をきちんと把握し、追えることは業務面でも大きなメリットです。

 また、先ほども話がありましたが、監査もそうですね。「特定の時点のデータを取っておいて」と言われても、その時の実行結果が確認できないからです。

平沼氏 Delphixが監査要件やコンプライアンス要件で採用されるケースも多いです。複数のシステムのある時点のデータをアーカイブとして保存し続けることは大変です。Delphixなら、何年分をどのような条件で保持するのかといった設定が簡単にできます。「正しいオペレーションが実施されたかどうか」の証明として使えます。なお、データのマスキング機能も備えているので、個人情報や機密情報を伏せた状態で利用することもできます。

SAP ERPの課題をDelphixで解決していきたい

──最後に、今後の展開について、それぞれご紹介いただけますか。

武井氏 ALSIとしては、PowerCenterやintra-martとSAP ERPとの連携を武器の一つにして、ビジネスを拡大していきたいと考えています。

中野氏 製造系の業務知識を身に付けている人材が多く、その強みが要件定義や開発提案などに活かすことで、さらにERPビジネスが広がっていくと思います。

平沼氏 アシストには、現場でのパッケージ開発やデータベース開発に携わってきた人間がたくさんいます。データベースは開発とインフラの中間に位置すると思っており、その意味では、開発とインフラ両方の観点から物を見ることができます。

 もともとDelphixは、そうした立場にいた人間が「現場の中でデータの制約に人が合わせている」実態を変えたいという思いから、取り扱いを始めた製品です。Delphixはデータ仮想化をさまざまなシーンに適用することで現場の課題を解決できます。海外では広く使われているように、日本のSAP ERPの課題も解決していければと考えています。

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提供:株式会社アシスト
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年5月31日

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