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» 2019年03月22日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(101):デジタルトランスフォーメーションの進捗状況を測定するには

デジタルトランスフォーメーションの取り組みは、何らかの形で進捗(しんちょく)が計測できなければならない。CIOは、期待するビジネス成果を示せる明確な指標を策定する必要がある。

[Susan Moore, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 欧州のある自動車メーカーの工場では、生産ラインから90秒ごとに完成車が出てくる。この場合、ITの問題でラインが1時間止まると、車を40台生産する機会が失われることになる。これはIT部門が、デジタルリスクをビジネスの文脈で説明する方法の一例だ。ダウンタイムという言葉を使わずに、ビジネス(在庫や売上高など)への直接的な影響を提示していることがポイントだ。

 Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのポール・プロクター氏は、2018年10月に豪州で開催されたGartner Symposium/ITxpo 2018で講演し、CIO(最高情報責任者)がデジタルトランスフォーメーションの進捗(しんちょく)状況を測定するには、これまで使ってきたオペレーション効率の指標ではなく、経営幹部が重視する尺度を当てはめる必要があると述べた。

 「指標にビジネスの文脈があれば、想定されている指標の利用者は一層興味を持ち、より大きな効果を発揮する。デジタルトランスフォーメーションの良い指標を策定する作業は、複雑で難しいものではないが多くの企業が苦労している。策定する上での選択肢が多岐にわたるからだ。経営チームや取締役会にとって何が重要かを理解するには、彼らに尋ねなければならない」と、プロクター氏は説明した。

 GartnerのCIOを対象にした最新の調査によると、デジタルの取り組みは2019年の最優先課題となっている。デジタルの取り組みを何も行っていない企業は4%にすぎない。このことは、デジタルがオプションから主流のプラットフォームに変わってきていることを示している。ところが、Gartnerの別の調査では、ほぼ半数のCEO(最高経営責任者)がデジタルビジネストランスフォーメーションを評価する指標を持っていないことが分かった。

 一般的に、取締役会はデジタルトランスフォーメーション計画を進めることによる、または何もしないことによるメリット、コスト、リスクを把握しようとする。そのためには、デジタルトランスフォーメーションの進捗状況を測定できる一連の主要業績指標(KPI)が必要になる。

重要な事象を測定する

 デジタルトランスフォーメーションのKPI(以下、デジタルKPI)を策定するに当たっては、シンプルなものにすべきだ。

 「簡単に測定できるKPIを選択するようにする。多数のKPIから成る階層を作ろうとはせず、5〜9個の指標だけを選び、それらを追跡し、レポートを作り、それを踏まえて行動することが重要だ。指標の価値は、ビジネスの意思決定に生かせることにある」(プロクター氏)

 Gartnerによると、良い評価指標の特性は次のようなものだ。

  • ビジネス成果との因果関係を正当化でき、明確に定義されている
  • 先行指標としての役割を果たす
  • 対象者が具体的で明確である
  • ITを専門としない対象者も理解できる
  • 緑から黄、赤へと変化し、アクションを促せる

 「トランスフォーメーションの適切な指標を使えば、成功する力を高めるとともに、主要なステークホルダーにその成功をより的確に説明できる」と、プロクター氏は語った。

効果的なデジタルKPIの作り方

 プロクター氏は、Gartnerの顧客から一番よく尋ねられる質問の部類に入るのが、「主要な業績指標――つまり、デジタルKPIはどのように作るのか」や、「取捨選択して使うことのできる、KPI群の標準的な手本はあるのか」だと述べた。

 「誰もが使っているデジタルKPIのリストを探すのはやめるべきだ。適切に作られていても、他社のリストはあなたの会社のトランスフォーメーションには当てはまらないからだ。デジタルKPIが有意義で役に立つためには、業種に特有で、さらに企業に特有でなければならない」と、プロクター氏は説明した。

 デジタルKPIを作るには、鍵となる以下の5つの質問を自問するとよい。

  1. 測定対象は? 例えば、「顧客とのやりとりが仮想化/デジタル化されている割合(%)」など
  2. 現在の段階は?
  3. 自社の目指す目標は?
  4. 自社にとって望ましいビジネス成果/メリットは? 例えば、「顧客の成果が50%向上し、自社のコストが20%下がる」など
  5. 自社の調整点はどこか?

 “調整点”は、企業が過度なデジタル化を行うべきでない理由を説明する。デジタルビジネスには収穫逓減(しゅうかくていげん)の法則が当てはまり、100%を目標に設定するのは意味がない場合がある。例えば、ある南米の企業が、全ての顧客をモバイル取引に移行したいと考えるかもしれない。だが、消費者の100%がスマートフォンを使っている国もあれば、15%しか使っていない国もある。

出典:How to Measure Digital Transformation Progress(Smarter with Gartner)

筆者 Susan Moore

Director, Public Relations


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