「金融系だからといって特別なハードルはない」、Web系エンジニアが感じたLINEのFinTechサービス開発の魅力とはWeb開発の知識やスキルはそのまま生かせる

FinTechサービスの拡充を進めるLINE。サービスを開発しているWeb系エンジニアは、知見も経験もない中で金融という領域に対してどのように向き合っているのだろうか。また、LINE Financialのエンジニアには、どのようなスキルが求められるのだろうか。

» 2019年03月25日 10時00分 公開
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「これから爆発的に普及する、面白そう」という直感

 これまでにないFinTechサービスの開発を目指すLINE Financial。これまで2回にわたって、その狙いと実際に現場で働く社員の声をお届けしてきた。第2回で登場いただいた赤澤剛氏と馮含嫣(Feng Hanyan)氏は、過去に金融システムの開発に携わった経験のあるエンジニアだった。今回登場する金森宏治氏(LINE フィナンシャル開発室 開発Nチーム 兼 LINE Financial 開発室)は、Webを主戦場としてキャリアを積んできたエンジニアだ。LINEの社内公募に手を挙げ、それまで経験のなかったFinTechサービスの開発現場に飛び込んだ。

LINE フィナンシャル開発室 開発Nチーム 兼 LINE Financial 開発室の金森宏治氏

 「LINEのFinTechサービスはこれから爆発的に普及して金融のインフラになり得ます。面白そうと感じました」と話す金森氏は、2010年にネイバージャパンに入社し、テーマ検索チームで人物やスポットの検索の開発を1年ほど担当。その後、NAVERまとめチームに移り、NAVERまとめを中心に周辺プロジェクトの開発を担当していた。

 もともとの出身は受託開発やプロダクト開発を行うシステム会社で、サーバサイドやアプリケーションの開発を幅広く担当してきた。LINEでは、主にJavaを使ったAPIやバッチ処理の開発、サーバの構成設計、構築、監視スクリプトの作成などに携わった。

 そんな中、2018年にLINE Financialの立ち上げに伴って社内公募が実施され、そこに社内エンジニア枠として応募し、フィナンシャル開発室へ異動。現在は、LINE証券のサーバサイド開発を中心に、エンジニアの採用面接なども担当する。

 「結構長いことエンジニアをしているので、自分のこれまでとこれからのキャリアを考えながら、新しいチャレンジをしました」(金森氏)

 新しい領域であるFinTechに対して知見も経験もないエンジニアがどう向き合い、仕事を進めているのか。実際にはどんなスキルや経験が求められるのか。また、採用担当という立場でどんなエンジニアがLINEに向いていると考えているのか。金森氏の考えを聞いた。

金融会社と協力したジョイントベンチャーの働き方

 金森氏が現在携わっているのは、証券システムとフロント側とをつなぎ込む部分の開発だ。フロント側は、ユーザーが株式や証券を売買するためのアプリケーションとなるが、一方の証券システム側はさまざまな要素で構成されている。例えば、証券取引所と接続して実際に取引を行うシステムの他、各種プロバイダーから株価情報や会社情報などを受け取るためのシステム、決済口座との連携システムなどだ。

 「アプリケーションから証券システムのデータを単純に呼び出すだけでは駄目で、さまざまなベンダーとシステムを連携させる必要があります。パートナーの野村ホールディングスと資本関係がある野村総合研究所のエンジニアと協力しながら、何をどう接続するかを調整してシステムに落とし込む作業に取り組んでいます」(金森氏)

 証券取引システムには、野村総合研究所が開発しているパッケージ製品を利用する。開発は、法規制への対応や会計との連携といった金融業としての知見やノウハウが求められる部分については野村総合研究所が、パッケージシステムをLINEから呼び出して利用する部分の開発や他のさまざまなシステムとの連携についてはLINE側が担当するという分業体制だ。さまざまなシステムとの連携が必要になることもあり、外部の協力パートナーは多岐にわたるという。

 「LINE証券は新しいサービスなので、既存のシステムをどうつなぎ込めばよいのか、ベストプラクティスと呼べるものがありません。既存システムについては、野村総合研究所にアドバイスを頂きながら、どんなものが必要になるか、そのためのシステムにはどんなものがあるかを教えてもらいながら進めています。逆に、システム連携部分についてはLINEの強みであるアプリケーションやWebの開発経験を生かしています。現場の雰囲気はどちらかというとWebベンチャー企業ですね。みんなで和気あいあいと進めています」(金森氏)

Web開発の知識やスキルはそのまま生かせる

 開発プラットフォームは主にJavaだ。金森氏はJavaを中心にキャリアを積んできたため、そのスキルをそのまま活用できているという。また、開発する機能に合わせて新しい言語やプラットフォームを使うことも増えている。

 「2018年の4月にスタートしたときはJava 8でしたが、サポート終了を受けてJava 11への切り替えを進めています。アプリケーション開発では、Androidのサーバサイド側の開発が必要になるのでKotlinも利用します。KotlinはJavaより簡単に書けて開発効率も良いのでよく使います。『金融ではCOBOLなどの特殊な技術が必要になる』と思うかもしれませんが、Web開発の知識やスキルをそのまま生かせます」(金森氏)

 LINEの社内システムと連携させる開発も多い。その場合は、LINEが社内向けに内製し、共有しているツールを利用する場合もある。また、必要に応じてツールを新たに開発する場合もある。

 「LINE社内での開発はアジャイルで行われています。開発中のプロダクトは、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)などが決まらないままテストすることもあります。しかしテストを行う品質保証チームは、プロダクトの開発者ではないので、どういうデータを投入して、テストしていいか分からないことがあります。そういうときに開発者が簡単なツールを急いで作って、品質保証チームに提供しています」(金森氏)

 LINE証券でも、そうしたLINEの文化を受け継ぎながら、ツールの内製や共有は必要に応じて行われているという。一方で、金融業務の規制の中で、取り扱うデータを制限したり、データを物理的に隔離して保管したりといった対策も必要になる。LINEと野村総合研究所のノウハウを持ち寄りながら、必要な言語仕様やツールを柔軟に選択しているという。

生活基盤にかかわるサービスを作りたい

 金森氏がLINE Financialへジョインする決め手になったのは、先にも触れたように「面白そう」という直感だった。背景にあったのは、中国で急速に発展してきたAliPay(支付宝)やWeChat Pay(微信支付)などのスマートフォンを使った小額決済サービスの存在だ。また、LINEでも2014年からモバイル送金/決済サービスとしてLINE Payを展開している。そのため、社内、社外から新しい風を敏感に感じ取れた。

 「こうしたペイメント系の領域は、他のFinTechサービスと組み合わせることで爆発的に普及すると肌感覚で感じていました。LINE Payにおいても、そうした取り組みがより一層進むことでもっと普及していくと思っています。ちょうどそんなときにLINE Financialの社内公募があり、それに乗っかってみようと思ったのです」(金森氏)

 金森氏は、過去にもそうした直感で自身のキャリアの方向性を変えたことがある。きっかけとなったのは、2010年のネイバージャパンへの転職と、その1年後にリリースされたLINEとの出会いだった。

 「当時は『インターネット』が普及して、そろそろ社会インフラになりつつあるタイミングでした。転職してすぐ新しいメッセージングサービスとしてLINEを出す話が社内で持ち上がりました。当初は、私自身にも『今更流行らないでしょ』という気持ちが少なからずあったのですが、慎さんが『次にくるのはメッセージングです。これから一般の生活に馴染んでいき日常生活に欠かせないインフラになります』と力説していました。その言葉を聞いてからは、生活基盤に関わるサービスを作りたいと思うようになりました」(金森氏)

 「慎さん」というのは、LINEの生みの親として知られる慎(シン)ジュンホ氏(LINE取締役 Chief WOW Officer)のことだ。2011年6月にLINEがリリースされると、慎氏の言葉通り、LINEは爆発的に普及していく。6カ月後の2011年12月には100万ダウンロードを達成し、2年後の2013年には1億ダウンロードを突破した。

 「慎さんの言った通り、今ではLINEは生活の一部になっています。慎さんの言うことを信じた私の直感からすると、LINEの次にくるのはLINE Payと思っていましたが、同時に、まだちょっと足りない部分があると感じていました」(金森氏)

 生活基盤にかかわるサービスを作りたいと思っていて、それに携わる面白さを実感していた金森氏にとって、手を挙げない理由はなかったというわけだ。

複数のデータセンターと5〜6本の専用線でつなぐ作業に四苦八苦

 LINE Financialに参加してからギャップを感じたり、苦労を感じたりはしなかったのか。それについて金森氏は「ほとんど感じなかった」とし、こう説明する。

 「金融系ということで、みんなスーツを着るような堅い仕事のイメージがあったんですが、そんなことはありませんでした。Web系のシステムで経験を積んだ人も多く集まっているし、外資系の金融システムに関わった人もいます。むしろLINEの社風に似ている人が多い印象です」(金森氏)

 ただ、システムの技術仕様については堅いイメージを感じることはあるという。

 「Web系のシステムでは、安定版として最新のStableバージョンを使うことが多いと思います。一方、金融系の場合、『安定版』というのは2〜3代前の旧バージョンでバグの枯れたものを指すことが多い。確かにバグは枯れてはいるのかもしれせんが、連携するソフトウェアと言語仕様が合わなかったり、バージョン間の依存関係が解消できなかったりします。そこで全システムをバージョンアップするのではなく、どのようにその問題を吸収するのか、その方法を考えることが、苦労といえば苦労ですね」(金森氏)

 スキル的には、Javaを中心に今まで取り組んでいた企業向けシステムの方法論やアプローチを容易に適用できるという。

 「『金融系だから難しい』というイメージは、最初持っていました。例えば、Web系ならPVが1〜2くらい違っていたとしても結果は許容できますが、金融系は1円でも計算が違えばまずいことになる世界です。ただ、実際に関わってみると、技術的にも、今までやってきたことをそのまま使えますし、応用も可能です。システム上での計算も正確に処理できます。今まで使っていたシステムの信頼性の高さを再認識しましたね」(金森氏)

 そうはいっても、新しい分野のシステム開発は苦労の連続だ。これまでもっとも苦労したのは、複数のデータセンター(DC)との接続をどのように構築していくかだという。Web系のシステムは1つのDCやクラウド環境に閉じているケースがほとんどだ。だが、金融システムの多くは、複数のDCを5〜6本の専用線で物理的につないでいくといった作業が必要になる。

 「こうした物理的なネットワークのことはあまり意識してこなかったので、かなり大変でした。インフラチームやパートナーと協力しながら、ネットワークを物理的に設計、構築、運用する作業を数カ月かけて取り組んできました。苦労した分、学びも多く、達成感も大きかったですね」(金森氏)

新しいサービス開発を楽しめる人が向いている

 現在、エンジニアの採用業務も担当する金森氏だが、LINE証券に向いている人とはどんな人なのだろうか。

 「LINEの社風に合っているかが一番だと思います。個人的な印象としては、オープンソースの世界で自分の好きなことをやってきた人が多い気がします。最新の技術やトレンドを追いかけている人で、自分の意見を言える人。ただ、高いスキルは求めていません。むしろ一緒に働いて勉強していってもらえばいい。吸収力が高く、学習意欲が高い人の方が、伸びていくと思います」(金森氏)

 また職場には外国人も多い。多様性のある環境だという意味でも、人の意見を素直に聞き、間違いを間違いとして認めて、話し合いで解決できるような姿勢を持った人の方が伸びていくという。

 金森氏自身のキャリアとしては、今後も開発を続ける一方、若い人に足りない部分をサポートし、バックアップしていくためのスキルやノウハウを身に付けていきたいと話す。

 「採用される若い子を見ていると、とても勉強熱心で、開発のレベルも以前より上がっていると感じます。ただ、経験が必要な障害対応やモニタリングなどはそもそも経験がないので対応が難しい。開発や設計を若い子に任せ、自分は一歩引いた立場で足りない部分をサポートしたり、実績をきちんと評価したりすることが必要だと思っています。開発を続けながら今後のキャリアを考えていきたいです」(金森氏)

 Web系から社内転職した金森氏は、金融知識のないWeb系エンジニアのロールモデルになり得る存在でもある。

 「もし金融系ということでハードルを感じていたら、それを感じる必要はないと言いたいです。本当にWeb系と同じように、自分の使いたい技術をどんどん導入していくことができます。その意味では、LINE証券に向いているのは、新しいサービスを開発することが楽しめる人ですね」(金森氏)

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提供:LINE Financial株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年4月24日

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