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» 2019年05月13日 05時00分 公開

教えて! キラキラお兄さん:ITで日本のアパレルの問題を解決できますか? (2/3)

[星暁雄,@IT]

学術の知識を社会にうまく出していきたい――研究者時代

 和泉さんは博士号を取得した後、熊本県の崇城大学情報学部で助教授になった。

 車椅子の人など「歩行弱者」のための道案内を、ITを駆使して行う「市街地のユニバーサルデザイン支援ツールの研究」や「市民共働のための雨水グリッドの開発」などを研究テーマとして手掛けた。

 「例えば、都市をどう整備するといいのか、実際に車椅子の人と一緒に街中を歩くワークショップを他の専門家とも協力して実施しました。それをいかにITに落とすかが私の研究テーマでした」

 あるとき和泉さんは、熊本で創業したシタテル創業者 河野秀和さんと出会い、相談を受けた。内容は「衣服の工場には閑散期があり、業界が疲弊している。仕事をうまく流して工場の稼働を平準化すると業界が盛り上がる」というものだった。「これは面白い」と思った和泉さんは、「ボランティアで手伝います」と申し出た。

 「ITを活用すれば解決できそうなのに、人や知識が足りていない。大学の知識をうまく社会に出していきたかったのです」

 和泉さんは当時の思いをそのように表現する。そして、2017年4月に技術アドバイザーに就任し、2018年4月からはCTOとしてフルタイムで参加することになる。

 大学の教員、研究者からスタートアップ企業のCTOへ移ったもう一つの理由として、大学を取り巻く環境が変化していたことがある。「研究は順調でしたが、大学の中でできることの限界を感じていました。文部科学省の締め付けが厳しくなり管理業務が増え、研究にも教育にも、どちらも時間が取れなくなっていました」

 こうして和泉さんは、熊本から東京へ、大学からスタートアップ企業へと身の置き場を移すことになった。

複数のプレイヤーをマッチング&マネジメントする――sitateruの思想

 和泉さんがCTOを務めるシタテルは、「衣服生産のプラットフォーム」を提供するスタートアップ企業だ。同社が提供する衣服ソリューション「sitateru」は「企業が制服を作りたい」といった個別のニーズに対応して衣服を作る環境をワンストップで提供する。

 「服を作る」と一口にいっても、企画、デザイン、生地の調達、縫製など多くの工程があり、得意分野が異なるプレイヤー(専門家、工場など)が存在する。シタテルが狙う事業領域は、この多くのプレイヤーのネットワークを作り、顧客の希望に合わせて小回りが利く体制で対応することだ。

 衣服の企画、デザインから生産まで一貫して受注することもあれば、生産だけを手掛けるスタイルもある。

 背景となるニーズとして、飲食店、ホテルなどで、企業イメージを打ち出したデザインの制服を新たに作る取り組みが進んでいる。一方、既存のアパレルメーカーではこのような多様なニーズにきめ細かく対応することは簡単ではない。そこで衣服生産に関わる複数のプレイヤーをネットワークで結び、対応できる幅を広げていくのがsitateruの狙いだ。

 和泉さんは、最初は相談に乗る形で、次にフルタイムでコミットする形でsitateruのビジネスモデルやシステムの立ち上げに関わってきた。基本的なアイデアは、「アパレル業界は全体最適化がなされていない。間に入って最適化すれば、お互いにメリットがある」というものだ。

 sitateruが手掛ける領域は、多くのプレイヤーのマッチングと生産管理である。「プロジェクトマネジメントみたいなイメージです」と和泉さんは話す。

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