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» 2019年06月04日 05時00分 公開

DXは今のビジネスの必要条件:20年以上Yahoo! JAPANを運営するヤフーは「モダナイゼーション」にどう取り組んでいるのか? (2/2)

[齋藤公二,@IT]
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600社超が採用するIBMのプライベートKubernetes基盤

日本IBM クラウド事業本部 クラウド・ソフトウェア テクニカルセールス アドバイザリーITスペシャリスト 岩品友徳氏

 続く日本IBMのセッション「モダナイゼーションを加速するIBMのプライベートKubernetes基盤」では、日本IBM クラウド事業本部 クラウド・ソフトウェア テクニカルセールス アドバイザリーITスペシャリストの岩品友徳氏が、IBM Cloud Privateの特徴を紹介した。

 IBM Cloud Privateは、Kubernetesをベースにしており、既存アプリケーションのモダナイゼーションを支援するツールから、モニタリング、ログ管理、セキュリティ、高可用性など企業システムに求められるさまざまな機能を統合して利用できることが特徴だ。岩品氏は「IBMでは、オープンな技術を用いることでベンダーロックインされない世界を実現することを目指しています。IBMのデータ&AIプラットフォームもハイブリッド、マルチクラウドに対応したオープンなプラットフォームであり、次世代システム基盤に必要となる技術を包括的に提供します」とした。

 その上で、具体的な機能やサービスとして、マルチクラスタ管理を担うマルチクラウド管理ツール「IBM Multicloud Manager」や、モダナイゼーションを支援する「トランスフォーメーションアドバイザー」、統合開発環境「Microclimate」などを紹介。

 「IBM Cloud Privateは、2017年6月のリリース以来1年半で600社超が採用しました。国内でも地銀グループや大手都銀、大手保険会社に採用されています」と国内でも活用が進んでいることを紹介した。

日本の企業はデジタルトランスフォーメーションにどう関わるべきか

 最後のパネルディスカッション「『2025年の崖』問題に日本の企業はどう立ち向かうべきか、ヤフーと日本IBMに聞く」では、ヤフーの服部氏と日本IBMの樽澤氏がパネリスト、アイティメディア 統括編集長 @IT編集部の内野宏信がモデレーターとなり、「日本企業がどうデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むべきか」の議論が交わされた。

 最初の議題は、DXと企業の関わり方について。服部氏は「DXは今のビジネスの必要条件だと思っています。ヤフーでも以前は企画を練り込んで期間をかけてサービスを作り上げていました。それがデータの時代になって、とにかく速くサービスを出して改善していくことが重要になった。サービスの作り方が変わっています」とヤフーのDXに対する考え方を紹介。新興のWeb企業と違い、20年を超える歴史の中でレガシー資産も多いことが変革の必要性を痛感する背景にあることも補足した。

 これに対し樽澤氏はベンダーの立場から「DXは近年のバズワードになっているが、危機感自体は企業の間に以前からあったと感じています。本業がうまくいっていない企業が変革への危機感を強く抱く一方、本業がうまくいっている企業の間でも既存の事業を見直してモダナイズしていかなければならないという危機感があります」と現状を分析した。

 「具体的に、どうモダナイゼーションを進めるか」について服部氏は「モダナイゼーションについては『どうコンテナ化するか』といった技術側の話にフォーカスされがちです。技術側が言っているからやるのではなく、ビジネスを回復させるためにやるのがモダナイゼーション。アジャイルやDevOpsの考え方を取り入れ、テクノロジーとカルチャー、プロセスをセットでモダナイズすることが重要です」とした。

 すると、ビジネス部門を巻き込むことが必要になり、取り組みの難易度は上がり、テクノロジーだけでは解決できない課題も増えてくる。それに対し服部氏は「テクノロジーはビジネスのためにあるということを言い続けました。徐々にモダナイゼーションを進め、アジリティーを持って取り組むことで実績ができ、社内から理解を得ていくことができました」とヤフーでの取り組みを振り返った。

オーナーシップを意識することが重要

アイティメディア 統括編集長 @IT編集部 内野宏信

 ヤフーでは、アジャイル開発のフレームワークとしてスクラムを採用したが、ビジネス側だけではなく、エンジニアの間で、そうしたフレームワークの採用に抵抗した者はいなかったのか。その問いに対し、服部氏は「落ち着いて開発したいという反発はありました。また、プラットフォームの場合は、ヤフー独自にアレンジやカスタマイズを施すケースも多かったのですが、独自習得していたスクラムから正式なスクラムを推進したことに対して、現状の開発の仕方などから変化が生じてしまうことへの反発はありました」と明かす。

 反発に対しては「ヤフーのサービスはユーザーのためにあり、ユーザーにフォーカスすることが重要」と言い続けたという。「WebやITは変化が激しく、お客さまの要件も激しく変わりますから迅速に対応していくことが求められます。といったことを言い続け、納得してもらいました」(服部氏)

 モダナイゼーションの進め方について樽澤氏は「現場から始めるとさまざまな利害関係が障害となることが多い。そのため理想はCEOが決断してトップダウンで進めることです。とはいえ、日本の企業文化としては、説得や社内勉強会などを行いつつ既成事実を作り、ボトムアップで取り組んでいくのが次善の策ではないでしょうか」とした。

 DXやモダナイゼーションの取り組み方では、デジタル推進室やCCoE(Cloud Center of Excellence)のような専門組織を作ってPoC(概念実証)を実施していくアプローチもよく採用されている。ただ、そうした専門組織とIT部門との連携が取れずに「PoC止まり」になってしまうケースも見られる。これについて樽澤氏は「自分ごととして考える」「オーナーシップを意識する」ことをポイントに挙げた。

 「サービスを誰が利用するのか、利用部門やビジネス部門がオーナーシップを持ってプロジェクトに積極的に関与できるようにすること。専門組織を作ってもそこで全ての要件を作り込むようなことをせず、オーナーシップを意識しながら、チームとしてアジャイルを実践していくことが重要です」(樽澤氏)

 服部氏もこれに同調し、「ヤフーでもプラットフォーム部門だけでメンバーは300人を超え、どうアジャイルを回すかは常に試行錯誤している状況です。スクラムを導入するときも、プロダクトオーナーに一定の権限を与えて、メンバーそれぞれが責任を持って取り組むことを心掛けましたが、しばらくは成果が出ませんでした。それでも、ぐっと我慢して口を出さずにいると、次第に立ち上がってきて、大きな組織でも動くようになりました」と自社の経験を紹介した。

「全てはビジネスのためにある」「失敗してみることが大事」

 アプリケーションモダナイゼーションについて、技術面からIBMに寄せられる相談にはどのようなものがあるのだろうか。樽澤氏によると、さまざまあるが、特に近年はコンテナ化に関するものが多いという。

 特に、エンタープライズ領域では、既存のレガシーシステムを運用しながら、新しい技術を活用していく難しさがある。それらをコンテナ化していく場合も、既存のプロセスやセキュリティ、ガバナンスを考慮していく必要がある。服部氏は「歴史のある会社ほど、そうした既存のプロセスを省略しにくく、省略すれば速くなるわけではありません。一つ一つ手順を踏みながら、技術を活用してプロセスを新しいものに置き換えていきました」とヤフーの事例を紹介した。

 開発者や運用担当者に求められるスキルや方向性については、樽澤氏が「開発や基盤それぞれに求められる役割を全て経験しておくことが理想だと思います。ビジネスのスキルセットも身に付けておきたい。そうすることで、業務の人が何を考えているか想像しやすくなると思います」とした。

 「開発も運用を分けていた時期もありましたが、現在は、両者を1つのチームとして分けずに考えています。重要なのはユーザーにフォーカスすることであり、そのためにはステークホルダーとのコミュニケーションなど新しいスキルも求められます。また、ヤフーでは新規のサービスを開発することよりも、既存サービスをいかにグロースさせるかも重要です」(服部氏)

 最後にメッセージを求められた服部氏は「DXで重要なことは技術起点にしないこと。全てはビジネスのためにあるという意識で取り組んでいくことが大切です」と強調。また樽澤氏は「フェイルファーストでチャレンジし、失敗してみることが大事。現場レベルで何か変えてみて、そうした動きを全社に広げていってほしいと思います」とアドバイスした。

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