Windows 10からの挑戦状、再び――これまでEducationエディションではWDAGが使えなかった山市良のうぃんどうず日記(155)(2/2 ページ)

» 2019年06月18日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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もう一つエディションLTSCの状況とWDAGのOS要件まとめ

 WDAGのシステム要件(ハードウェアおよびソフトウェア要件)は、以下の公式ドキュメントにあります。

 つい先日まで、OS要件は次のようになっていました。その後、フィードバックが反映されて修正されました。

・Windows 10 Enterprise edition, version 1709 or higher

・Windows 10 Professional edition, version 1803 or higher

・Windows 10 Education edition, version 1709 or higher

・Windows 10 Pro Education edition, version 1803 or higher


 バージョン1809以前のEducationエディションでは実際には利用できなかったことに気付いた筆者は、さまざまエディションとバージョンを組み合わせて利用可否を確認しました。それに基づいてOS要件を整理すると、以下の表1のようになります。

エディション SKU
番号
Fall Creators Update
バージョン1709
April 2018 Update
バージョン1803
October 2018 Update
バージョン1809
May 2019 Update
バージョン1903
Enterprise 4 ○(S/E)*1*2 ○(S/E) ○(S/E) ○(S/E)
Enterprise評価版 72 ○(S/E)*1*2 ○(S/E) ○(S/E) ○(S/E)
Pro 48 × ○(S)*2 ○(S)*2 ○(S)*2
Pro for Workstation 161 × ○(S)*2 ○(S)*2 ○(S)*2
Pro Education 48 × ○(S)*2 ○(S)*2 ○(S)*2
Education 121 × × × ○(S/E)
表1 WDAGを利用可能なWindows 10のバージョンとエディション。S=スタンドアロンモードで利用可能、E=エンタープライズモードで利用可能
*1 WDAGコンテナは英語(en-us)版Microsoft Edge
*2 WDAGコンテナでダウンロードしたファイルのホストOSへの保存を許可できない

 全ての組み合わせを試したわけではありませんし、主にスタンドアロンモードで起動できることを確認しただけで、Proエディションで制限される機能を試したわけでもありませんが、おおむね正しいと思います。Pro Educationエディションで利用できて、その上位エディションであると誰もが思っているEducationエディションで利用できないというおかしな状況は1年と1カ月かかってようやく解消されました。

 表1には、WDAGに関してグレーゾーンなところがある長期サービスチャネル(LTSC)の「Windows 10 Enterprise LTSC 2019」を含めています。「Windows 10 Enterprise 2019 LTSC」」や「Windows 10 Enterprise LTSC、バージョン1809」と表現されることもあり、製品名自体があやふやなのですが、Windowsのシステム情報としては「Windows 10 Enterprise LTSC、バージョン1809」が正しいようです。

 グレーゾーンなところがあると言ったのは、Windows 10 Enterprise LTSC 2019でも「Windowsの機能の有効化と無効化」を用いて、WDAGの機能を有効化できるからです。また、Windows 10 Enterprise LTSC 2019の新機能を説明する以下の公式ドキュメントにも、2019年5月17日に修正されるまでWDAGについての記述がありました(現在はWDAGの部分がカットされました)。

 修正前の「What's new」ドキュメントでは、「Windowsセキュリティ」には「分離されたブラウズ」からWDAGのインストールを開始できることが、新機能として説明されていました。実際、その説明は正しく、「Windowsの機能の有効化と無効化」で有効化がブロックされることはありませんでした。しかし、「What's new」ドキュメントには、「Windowsセキュリティ」に追加された「分離されたブラウズ」と「Application Guardの設定」の説明しかありませんでした。

 筆者は、LTSCバージョンは「Microsoft EdgeとInternet Explorer」というブラウザー要件の一方を満たしていないので、WDAGを有効化できても使用はできないと予想していました。ホストOSにMicrosoft Edgeが存在しないので、少なくとも、Microsoft Edgeの「新しいApplication Guardウィンドウ」から開始するスタンドアロンモードでの使用はできないでしょう。

 エンタープライズモード(アクセス先のドメインに基づいたInternet ExplorerまたはWDAGへの誘導)ならどうかと試してみたところ、「初期化しています……(50%)」から「開始しています……(90%)」を何度か繰り返し、最終的にエラーコード「0x80070512」で動作を停止してしまいました(画面6)。

画面6 画面6 Windows 10 Enterprise LTSC 2019(バージョン1809)で、エンタープライズモードでWDAGを試してみたがエラーで開始できなかった

 これは筆者の想像ですが、WDAGコンテナを提供するOS環境がMicrosoft Edgeを含まないLTSCベースのイメージであり、途中まで起動するものの、Microsoft Edgeのバイナリ(MicrosoftEdge.exeなど)が見つからずに失敗しているのではないでしょうか。「C:\ProgramData\Microsoft\Windows\Containers\BaseImages」の配下にフラットに展開されたベースイメージのファイル構造を見るとそんな感じがします。「Windows\SystemApps\Microsoft.MicrosoftEdge_8wekyb3d8bbwe」には空っぽの各言語用のディレクトリがあるだけでした。

 今回の内容をまとめると、Microsoftの公式ドキュメントや公式ブログでは、実際とは異なる不正確な情報が公開され、長い間放置されていることがあるということです。気になる点はフィードバックするようにしていますが、うまく意図を伝えるのが難しかったり、修正されるまで時間がかかったりします。ページ内のフィードバックのやりとりから想像することもできますが、どのように修正されたのか更新履歴がなく、しれっと修正されていることも多々あるので注意してください。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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