「周りの意見は聞くな」――起業家エンジニアの若き日の後悔Go AbekawaのGo Global!〜Dean Drako編(後)(2/2 ページ)

» 2019年07月19日 05時00分 公開
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「周りの人の意見は聞くな」

阿部川 最後の質問です。多くの若いエンジニアもわれわれの読者なのですが……。

ドレイコ氏 では、ぜひレジュメを当社に送ってほしいとお伝えください(笑)。私のメールアドレスは……。

阿部川 なるほど、それが第一のメッセージですね(笑)。では改めて、読者の方々に対して一言メッセージをお願いできますか。

ドレイコ氏 その前にちょっとお聞きいただきたいことがあります。Appleで仕事をしていたときにあるビジネスのアイデアが浮かびました。しかし当時は、起業をためらっていました。なぜってAppleの従業員でしたし、仕事には十分満足していました。給料も申し分なく、Appleの中でも成果を出して仕事をしている自負もありましたから。

 そこで周りの友人たちに聞いてみました。「こんなアイデアがあって、自分としてはとても良いと思うんだけど、これを実現させるために起業してもいいだろうか」と。するとほとんどの人が口をそろえて「リスクが高いからやめた方がいい」といって反対しました。それでそのときは諦めました。でも今思えば、それは大きな失敗でした。

 なぜなら周りにいるのは大抵、企業で働く「起業をしたことのない人」です。彼らがいくら起業のリスクを指摘しても、それは「経験」によるアドバイスではなく「想像」です。

 ですから、起業を考えている若いエンジニアの方々へのアドバイスは、「もしそのアイデアの価値を本当に信じているのなら反対する周りの人の意見は聞くな、すぐやってみろ」です。もし同じようにして起業した人がいたらその人の意見は聞くべきですが、周りにいるのは、大抵そうではありません。自信を持って自分のビジネスアイデアに突き進んでください。

 もう1つ、アドバイスがあります。それは一緒に長く仕事を続けられる、良いビジネスパートナーを見つけることです。2つの違ったスキルがあれば、互いに補いながら、ビジネスを大きく進めていくことができます。多くのエンジニアは、マーケティングやセールスのスキルが不足しがちですし、マーケティングやセールスはテクニカルスキルがありません。それをチームでやれば、強い企業を構築できます。

阿部川 起業やスタートアップについてはもっとお聞きしたいことがありますし、何日でも話ができると思います。今では多くの書籍でも学ぶこともできますからね。

ドレイコ氏 起業のハードルが低くなったのだと思います。「自分でもできる」と思えるようになりましたし、他の起業家がどうやっているかを皆が知りたいと考えるようになりました。大変良い傾向だと思います。日本は、多少はその流れから遅れてはいますが、確実にその流れは起こっていると思いますし、このような健全で強い流れが、日本でも大いに起こってほしいと思います。日本を変えていく力になりますし、起業家もどんどん成功していくと思います。

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Go's thinking aloud

 ウィキペディアによれば、ドレイコ氏は、「同時に多数のビジネスベンチャーを運営するという点に関して、イーロン・マスクと比較されることがある」。なるほど、では一体本当はどんな起業家で、どんな企業経営の哲学を持っているのだろうか……失礼ながら多少偏見をもってインタビューに臨んだ。

 それはすぐに誤解、あるいは杞憂(きゆう)だった。理由は3つ。

  1. ドレイコ氏は紛れもなくエンジニアで、とにかくモノを作ることが好きなこと
  2. 「顧客の笑顔が見たい」「ケアしたい」を連発したこと
  3. この2つを満足させる最良の方法が「起業」であること

 これらがインタビュー全体を通じてにじみ出ていた。とはいえ、16歳で、自身の開発したソフトウェアを売り、学費をたたき出した。起業家という言葉がまだないとき、彼はまぎれもなく起業家だった。単に天才というのはたやすい。そうではなくて私たちが学ぶべきことは、その行動力と考え方を、創業とゴーイングコンサーン(起業を継続的に発展させる)を繰り返し続け、それを自身の経営哲学として研ぎ澄まし続けてきた彼の姿勢ではないだろうか。Eagle Eye Networksは次の一手を、どこに打ってくるだろう。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、レポーター

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。

編集部から

「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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