中堅企業向けデータとアナリティクスの4大トレンドGartner Insights Pickup(118)

中堅企業はデータとアナリティクスの新しいトレンドを取り入れ、ビジネス価値の創出につなげるべきだ。ここでは、中堅企業が行動につなげるべきデータとアナリティクスに関する4つの注目トレンドを紹介する。

» 2019年07月26日 05時00分 公開
[Kasey Panetta,Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 データとアナリティクスは、中堅企業に大きなメリットをもたらす。中堅企業にとって競争上の差別化や、さらには長期的な存続に不可欠となっている。

 例えば中堅規模の農場は、ディスラプション(創造的破壊)を起こすような形でアナリティクスを活用することにより、生産性や成長力、収益力を抜本的に向上させられる。農業事業者は同じ人数の(またはより少ない)従業員で、格段に広い土地を耕作できる。小売業者はビデオアナリティクスと可視化により、買い物客のプロフィールや行動パターンを把握できる。

 中堅金融サービス企業は、リスクモデルの改良に継続的に取り組んでいる。リスク評価が正確なほど、収益を伸ばせる可能性が高くなるからだ。世界の中堅メーカーは、“What If”分析と感度解析、予測モデルを組み合わせ、品質変動の原因究明を推進している。

 こうしたプロジェクトによるイノベーションや変革のインパクトを高めるために、先進的な中堅企業は新しく、かつ簡素化された技術を利用して、データサイエンス能力の拡張を進めている。その一環として行っているのが、市民(シチズン)アナリスト(専任ではないアナリスト)が効果的な分析を行えるように、アナリティクス拡張技術で支援することだ。こうした技術の活用は、中堅企業のCIOが注意を払うべき、データとアナリティクスに関する4つの主要トレンドの1つだ。

 「機械学習と人工知能(AI)の台頭など、データとアナリティクス技術のトレンドは、無視できない大きな流れだ」と、Gartnerのバイスプレジデントでアナリストのアラン・ダンカン氏は語る。

 「中堅企業のCIOはこうしたトレンドを取り入れ、新しいビジネス価値を生み出すデータ主導の組織を構築すべきだ」(ダンカン氏)

トレンド1:データ主導のビジネス意思決定の改善に向けてビジュアルデータディスカバリを導入する

 中堅企業はこれまで、幾つかの異なるプラットフォームでデータを見てきた。だが、この5年間に異なるツールからのデータをレイヤー化し、密結合された対話型可視化レイヤーを構築する技術が登場してきた(訳注:セルフサービスBIを支える視覚的データ分析技術のこと)。こうしたビジュアルデータディスカバリ技術により、CIOはデータを迅速に組み合わせ、ビジネス課題の診断や、現行のオペレーションが効果的かどうかを定期的にテストすることができる。

 大抵、こうしたビジュアルデータディスカバリプラットフォームはクラウドベースであり、深い診断分析機能とともに柔軟性と拡張性をもたらす。「このソリューションは、中堅企業のCIOがビジネスユーザーコミュニティーと関わり、このコミュニティーをサポートする機会を最大化する」(ダンカン氏)

トレンド2:生産性とデータガバナンスの向上を目的にデータ準備ツールを使用する

 データの活用準備を整えるのは、時間がかかり、大変な場合がある。中堅企業は、データ準備をうまく行うための適切なリソースを持っていないことが多い。データの準備は、効果的かつ効率的にデータを整え、共有や再利用、ガバナンスを改善するための反復的なアジャイルプロセスだ。データ準備ツールは、ユーザーにデータ内の重要なつながりを見いだし、発見結果を共有する機会を提供する。拡張機械学習機能やデータカタログのような新しい技術は、ビジネス洞察の共有を格段に容易にする。

トレンド3:拡張アナリティクスでセルフサービスや自動化を促進する

 データの可視化は、データとアナリティクスの一部の課題を単純化するが、洞察を発見し、アナリティクスモデルを構築するのは、依然として複雑で時間のかかる作業だ。しかも、どの洞察に基づいて行動を起こすか、どの洞察が重要かを判断するのは難しい。拡張アナリティクスはAIを利用して、データ準備、洞察の発見、共有といった分析プロセスを簡素化する。

 「そのおかげで、ビジネスユーザーや市民データサイエンティストはモデルを作成したり、アルゴリズムを書いたりすることなく、有意義な分析結果――例えば、相関、例外、クラスタ、セグメント、外れ値、予測などを自動的に特定し、可視化して説明できる」(ダンカン氏)

トレンド4:価値の高いビジネスシナリオにアナリティクスを最適化して組み込むために、予測的アナリティクスを実装する

 予測的アナリティクスは、「何が起こるか」という質問に答える。これまでは、マーケッターが顧客の行動を予測するためにこの技術を使用してきた。だが、今では予測的アナリティクスは、これまでになく多くのビジネスアプリケーションに組み込まれるようになっている。データ量が増加の一途(いっと)をたどる中、データの質の向上がますます求められており、予測的アナリティクスを活用して成果を挙げる企業が続々と現れていることから、この技術への関心が高まっている。

 また予測的アナリティクスは、特定のビジネス業務への導入が比較的簡単だ。中堅企業は、ほとんどのユースケースにパッケージアプリケーションを実装できる。ただし、この選択肢は、アジリティやカスタマイズ性、競争上の差別化効果が限られる場合がある。代替策としては、IT部門にアナリティクススキルの向上やデザイン思考の進化を求めることや、外部のデータおよびアナリティクスサービスプロバイダーと組むことが挙げられる。

出典:Top 4 Data and Analytics Trends for Midsize Enterprises(Smarter with Gartner)

筆者 Kasey Panetta

Brand Content Manager at Gartner


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