連載
» 2019年08月09日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(120):デジタルビジネスにおけるAIアプリケーションの6つの設計原則

CIOは、デジタルビジネスの戦略目標に向けた取り組みにAIを適用することで、これを最大限に活用できる。AIプロジェクトの評価に役立つ6つの設計原則を紹介する。

[Gloria Omale, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 人工知能(AI)は、人間が現在行っている判断や作業の高度化や自動化を実現する。そのため、デジタルビジネストランスフォーメーションに不可欠だ。企業はAI活用により、人件費を削減したり、新しいビジネスモデルを創出したり、ビジネスプロセスや顧客サービスを改善したりできる。だが、ほとんどのAI技術は、まだ成熟していない。

 「この問題を克服するには、CIOは、戦略的なビジネス目標(売上高の拡大やサービスのスケーリングなど)を達成するためのアプリケーションの設計が、戦略的な計画に基づいて行われるようにしなければならない」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのホルヘ・ロペス氏は語る。

 ロペス氏は、CIOや企業が戦略的な意図で提案された全てのAIアプリケーション(業務改善だけでなく、ビジネス成果の達成を支援することを目指したアプリケーション)を評価するのに役立つ6つの設計原則を挙げる。AIアプリケーションは、6つの原則全てを満たす必要はないが、2つ以下の原則しか満たさないアプリケーションは再検討すべきだ。

設計原則1:先を見越す

 デジタルビジネスにおいて、AIはビジネスの実行に直結する洞察を生み出す。戦略的AIアプリケーションは、将来の特定の状況における顧客、市場、その他のエンティティの行動や動きと、これらに影響を与えるために企業に何ができるかについてのきめ細かな洞察を生み出す。AIが生み出す洞察の信頼性が高いほど、企業はビジネス実行の指針としてそれらに頼るようになる。

設計原則2:自律的に動く

 AIアプリケーションは、既存の手動プロセスを自動化することで価値を提供する。だが、ビジネスの自律的オペレーションを可能にすれば、企業に一段と貢献できる。自律的に稼働する戦略的AIアプリケーションは、人間の指示なしで動き、生産性を大きく向上させる。人間が行う作業の高度化および省力化を実現し、人間がよりパーソナライズされた仕事も行えるようにするからだ。

 自律的オペレーション用のAIアプリケーションを設計する際は、作業が行われる場所のできるだけ近くにAIアプリケーションを配置し、何が起こっているかをほぼリアルタイムで把握し、その場での意思決定を支援するインテリジェンスを提供できるようにする。

設計原則3:顧客とつながる

 デジタルビジネスでは、市場と顧客についての知識が成功を左右する。デジタルビジネスをサポートするには、AIアプリケーションはできるだけ顧客に近づかなければならない。巨大デジタル企業は、AIに基づく人気の技術を利用して企業と顧客を結んでいるが、CIOはこれをヒントにするとよい。

 例えば、消費者はよくAmazonの「Alexa」やAppleの「Siri」を使って、他企業のプラットフォームの機能にアクセスする。そのため、AmazonとAppleの方が、そのサービスを提供する企業よりも良い顧客データを集めることができる。同様に、CIOは、時間とともに顧客とより密接な関係を築くのに役立つ重要な情報を収集できる、戦略的なAIアプリケーションの提供を考えるべきだ。

設計原則4:物理世界で効果を発揮する

 戦略的AIアプリケーションは、物理世界で違いを生み出す必要がある。AIは、他の高度な技術の機能を拡張することで、物理的なインパクトを与える。例えば、3Dプリンティングは高度化が進んでいる。GE Aviationは現在、3Dプリンティングを使って、ジェットエンジンの基幹部品であるファンブレードを製造している。AIを組み合わせることで、3Dプリンティングをさらに複雑なユースケースに拡張できる。例えば、多くの変数を制御する必要がある製造工程に対応し、3Dプリンティングのプロセスを調整するといったことが可能になる。

設計原則5:見えないものを検知する

 AIは、人間にはできない方法でオペレーションを管理できる。戦略的AIアプリケーションはこの機能を利用するとよい。この機能は、複雑さを増す状況について、AIが人間よりはるかに迅速に判断を下せることによるものだ。例えば、既に高速取引アプリケーションは、ほぼナノ秒単位で資金を移動できる。このアプリケーションは、株価や気象、政治的情勢といった変数を考慮したアルゴリズムに基づいている。これにより、トレーダーは数百万件の注文を数秒で実行でき、自社に大きな優位性をもたらす。

設計原則6:リスクを管理する

 セキュリティ、リスク、プライバシーは、AIアプリケーション開発の最大の課題だ。AIアプリケーションを、戦略的なビジネス目標を達成するために使用する場合、これらはさらに大きな意味を持つ。1つの失敗でオペレーションが中断しなくても、会社のブランドや信頼が失墜することもある。このため、CIOはAIアプリケーションの挙動に対する制限を定義する必要がある。こうした制限により、コンセプトからの逸脱のリスクを減らし、アプリケーションが損害をもたらす事態を防ぐことができる。

出典:6 Design Principles for Artificial Intelligence in Digital Business(Smarter with Gartner)

筆者 Gloria Omale

Manager, Public Relations


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。