連載
» 2019年09月13日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(124):デジタルビジネスの成功に不可欠な「ContinuousNext」戦略、5つの要素とは

2019年6月にカナダのトロントで開催された「Gartner IT Symposium/Xpo」において、Gartnerのアナリストが、同社の「ContinuousNext」のコンセプトと、CIOがこのコンセプトに基づいて新しい考え方とプラクティスをどのように構築・推進し、共有できるかを解説した。

[Kasey Panetta,Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 デジタルビジネスが急速に進化する中、企業は、ビジネスモデルと業務モデルを適応させていかなければならない。カナダの企業はビジネスモデルの変革を推進しているが、やるべきことはまだたくさんある。実際、カナダのCIOの22%が「ビジネスモデルの変革は着手していない」と回答している調査結果もある。いずれにしても、ほとんどの企業にとって、ビジネスの優先事項を達成するには、何らかの変革が必要になる。

 「適切な戦略を進めながら新たな動きに常に迅速に対応すれば、持続的かつ急速な変化への対処が可能になる。われわれの『ContinuousNext』のアプローチでそれを実現することで、デジタルトランスフォーメーション、そしてさらにその先の展開の推進力が得られる」。Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのクリス・ハワード氏は、2019年6月にカナダのトロントで開催された「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」のオープニング基調講演でそう語った。

 「ContinuousNextは、絶えず変化する世界で成功を収めるための戦略だ」(ハワード氏)

 同氏は、会場に詰め掛けた900人以上のCIOとITリーダーに、次のシンプルな方程式から出発することを勧めた。

(マインドセット+プラクティス)×技術=ケイパビリティ

 マインドセットを変えれば新しいプラクティスが行われるようになり、技術によってその効果が増幅される。こうして新しいケイパビリティが生まれ、新しい成果をもたらす。

 ContinuousNext戦略を自社で実行するには、リーダーはリソースの制約や文化の変革に対する抵抗を考慮し、以下の5つの重要必須事項に取り組まなければならない。

プライバシー

 プライバシーを厳格に保護し、信頼されるデジタルなつながりを構築することは、ContinuousNextを実行する上で喫緊の課題だ。Gartnerは、カナダのプライバシー規制は他の国より進んでいると考えている。ContinuousNextでは、プライバシー技術とデータセキュリティ技術の進化が続くと想定されている。

 だが、プライバシーは、企業がダイナミックなビジネス展開を実現、維持する上で最大の障壁の1つだ。プライバシーに関する消費者の意識や対策は変わってきている。今日の消費者は、プライバシー設定を更新したり、ソーシャルメディアのアカウントを完全に削除したりしている。さらに、政府はCASL(カナダのスパム対策法)やGDPR(欧州連合の一般データ保護規則)のような規制を施行している。

 消費者は、便利さのためにセキュリティや安全性を犠牲にしてもよいとは思わなくなっている。そのために企業は、消費者データによる価値創出と、消費者データの保護の間で慎重にバランスを取らなければならない。プライバシーは、今や取締役会レベルの課題であり、CIOはデータ保護を維持することで、ContinuousNextの進化を支えるダイナミズムを確保する必要がある。

拡張知能

 人工知能(AI)は目覚ましい進歩を遂げ、拡張知能の域に達している。近年では、AIは読解、中国語と英語の翻訳、がんの診断などに関しては、人間に匹敵する能力を発揮するようになっている。幅広い技術の集合体であるAIは、プログラミングされる技術として機能するのではなく、プログラミングよりもデータに依存し、学習するシステムとして機能する。AIシステムはネットワーク化されているため、ピアAIシステムから相互に学習し、さらに飛躍的に進歩すると予想される。

 AIの取り組みをまだ始めていない企業は、AIが人間の仕事を奪うのではないかと懸念する。だが、AI技術を導入した企業は、そうした事態にはならないことに気付いている。ハワード氏は、「企業はAIを、実際には人間を置き換えるためでなく、人間ができる仕事を拡張するために利用し始めている」と指摘した。

 人々はAIと協働し、AIは人々の能力を拡張して、人々がより影響力の大きい仕事を行えるようにする。言い換えれば、最もインパクトのあるAIの実装は、人々とAIがコラボレーティブシステムにおいてやりとりを行う実装であり、独立したシステムとしてのAIに人々が相談するだけという実装ではない。

継続的なモダナイゼーション

 企業は、レガシーインフラを単にサポートしたり、回避したりすることから脱却しなければならない。現在では、コアインフラをモダナイズし、変革を実現してデジタルトランスフォーメーションを推進することが焦点となっている。Gartnerは、これを「継続的なモダナイゼーション」と呼んでいる。

 カナダの企業では、コアのモダナイズが既に大きく進んでいる。例えば、モダナイゼーションはクラウドを活用する戦略と結び付いている場合が多いが、カナダのクラウドサービス支出は、米国に次いで2番目に多い。

 「だが、継続的なモダナイゼーションを成功させるには、CIOとIT部門は、3つのことに力を入れなければならない。それは、『パートナーとの連携によって、ビジネス部門との間で、これまでとは異なる関係を築くこと』『継続的なモダナイゼーションの中心的なダイナミズムを認識することで、レガシーインフラへの考え方を転換すること』『洞察と新しい視点を、経営者などのリーダーやビジネス部門、パートナーおよびチーム間で共有すること』だ」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントのキャサリン・ロード氏は語った。

 「刷新されたコア技術プラットフォームは継続的にモダナイズされ、企業をContinuousNextの取り組みの次の段階に進ませるだろう」(ロード氏)

デジタルプロダクト管理

 どの業種でも、一部の極めて強力な企業は、デジタル技術をプロダクト(一般的な製品に加え、サービスやソリューションなども含む)に融合し、新しい管理プラクティスを生み出している。今では、あらゆる業種でデジタルプロダクトが提供されており、そのためにデジタルプロダクトマネジャーへの強い需要が新たに生まれている。

 「デジタルプロダクト管理は、ContinuousNextの中核となる必須事項だ。導入を加速する必要があり、すぐに導入を始めなければ追い付けなくなるかもしれない」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのハン・ルホン氏は指摘した。

 「Gartner 2019 CIO Survey」調査では、業績が高い企業は他の企業と比べて、プロダクト中心の提供を行っている企業の割合が2倍高いことを示している。ルホン氏によると、デジタルプロダクト管理は、これまでとは異なるIT運営方法であるだけでなく、これまでとは異なるビジネス運営方法でもある。

 デジタルプロダクト管理の考え方に切り替えることで、企業は顧客を開発の中心に据えることができる。例えば、Desjardinsは「Radar」アプリのような外部向けプロダクトと、購買注文管理アプリのような内部向けプロダクトについて、デジタルプロダクトマネジャーを置いている。Orient Overseas Shipping and Container Line(OOCL)も、社内外の顧客に航路や船の位置、貨物追跡などの情報や分析を提供するSaaS(Software as a Service)プラットフォームを利用して、デジタル変革を行った。

組織文化

 企業がContinuousNextを実現するには、ダイナミックな組織文化が必要になる。だが、CIOの46%は、「組織文化がデジタルビジネスの潜在力の実現を阻む最大の障壁になっている」と報告している。

 Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのマリー・マザーリオ氏は、「組織文化を変革する上で最も重要なことは、どう変えたいかを明確にすることだ」と語る。その目標に到達するには、大きな変革を数多く実行する必要があるだろう。だが、リーダーがお膳立てをすることで、小さな行動の積み重ねが大きな変革効果をもたらすことも可能になる。

 大々的な発表や、100ページのスライドを使ったプレゼンテーションを行うことなく、組織文化を変革するスマートな方法は、“カルチャーハック”を始めることだと、マザーリオ氏はアドバイスする。

 「カルチャーハックは、弱点を見つけてシステムに不正に侵入することではない。カルチャーハックで肝心なのは、文化の脆弱(ぜいじゃく)な点を見つけて根本的に修正し、その変化を定着させることだ」と、マザーリオ氏は説明する。

 「カルチャーハックは遠大な変革を、人々が日々の業務の中で実践しやすい、直感的でインパクトのある行動に落とし込む。優れたカルチャーハックは、すぐに感情的反応(ショック、愛、恥、誇りなど)を呼び起こし、即効性があり、一気に多くの人に伝わる」(マザーリオ氏)

出典:Gartner Keynote: 5 Significant Imperatives for Digital Success(Smarter with Gartner)

筆者 Kasey Panetta

Brand Content Manager at Gartner


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。