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» 2019年10月08日 05時00分 公開

Go AbekawaのGo Global!〜David Malkin編(後):デイビッドは「カンパニーニューロンシステム」の夢を見るか (2/2)

[取材・文:阿部川久広(Go Abekawa), 構成:中村篤志,@IT]
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新しい技術の発明だけではイノベーションは起こらない

阿部川 新技術が登場すれば、良くも悪くも生活に影響が出て、生活の質が向上したり下降したりするのが常です。今後は大げさではなく、これまで人類が経験したことのないようはコンピュータ社会が訪れようとしています。それは「シンギュラリティ(Singularity)」と呼ばれたり、「AI社会」と呼ばれたりしますね。

マルキン氏 そうですね、コンピュータに関する議論は往々にして1つの方向から語られがちな点が問題です。シンギュラリティにしても「それが起こるか、起こらないか」だけでなくその定義なども、もっとさまざまな角度から検証されないといけないと思います。ですから例えば「AIの5年後」というだけではなく「AIと5Gが同時に進化すればどんなことが起こるのか」と考えないといけないと思います。

 なぜなら歴史上、技術の破壊的ともいえる変化が起きるのは多くの技術がミックスされたときだからです。インターネットやモバイルフォンは優れた仕組みですが、現在のように急激な変化が起きたのはこの2つが同時に使えるようになったおかげです。同時に使えるようになると、モバイルフォンのバッテリー消耗が問題になり、省電力や長時間使えるバッテリーなどが登場するきっかけとなりました。

 iPhoneは絶好の例です。多くのテクノロジーが一度に出てきて、それが一個の製品に結集しました。スティーブ・ジョブズの素晴らしいところは、新しいテクノロジーを開発したのではなく、従来のテクノロジーを最適に組み合わせることに気付き、そして製品として実現させたことだと思います。

画像 iPhoneを例に説明するマルキン氏

阿部川 スティーブ・ジョブズがやったことこそ、イノベーション(革新)だと思います。多くの方々は革新とは全く新しいことを発明することのようにお考えだと思いますが、実は、今あるテクノロジーのコンビネーションから新しい製品を作り出すのもイノベーションです。それがなければ、今ここにiPhoneはありません。

マルキン氏 おっしゃる通りです。ディープラーニングに関する議論をリサーチの専門家と行うことで新しい発見がありますし、オープンソースのコードを単に用いるのではなく、私たち独自のアルゴリズムとミックスさせて作ることでまた新しい発見があります。データそのものはデータ以外の何物でもありません。それを用いて何をどうしたいか、が大切ですから、まだまだたくさん仕事をしなければなりません(笑)。

日本はもっと「ダイバーシティー」と「フランクな議論」を重視すべき

阿部川 現在社員は65人とお聞きしていますが。

マルキン氏 ほぼ半数がエンジニアです。世界中からエンジニアを採用しています。最初のビジネスプランは日本語ですが、それを実行しているのはグローバルなエンジニアチームとリサーチチームです。エンジニアそのものがグローバルであるからという理由は当然として、そのようにした方が「最先端のテクノロジーを学びそれに適応したり、応用したりしてプロダクトに反映させることが比較的容易にできるから」というのがもう一つの理由です。

阿部川 スキルだけではなくて、カルチャーもミックスさせる理想的な環境ですね。

マルキン氏 はい、非常にダイバーシティー(多様性)に富んでいます。このようなグローバルな環境から私たちがソリューションを出していることそのことを非常に高く評価してくれるクライアントもいます。

阿部川 なるほど、ありがとうございます。最後に何かメッセージをいただけますか。

マルキン氏 今日お話ししたのは、全て私が毎日の仕事で実際に関わっていることです。単に本を読んで得た知識というより、実際に多くの人と議論する中から生まれた考えです。ただ日本は「よりフランクな議論の場」が少ないように思います。どちらかというと気心の知れた、いつも同じ仲間同士が、小さなグループを作って一緒にディナーに行くといった印象です。

 ロンドンやシアトルでは、多くのテクノロジーに関する素晴らしいアイデアは、正式な会議の場というよりは、よりフランクな会話の中から生まれます。日本も昔に比べれば、そうなってきているとは思いますが、もっと砕けた会話ができるといいと思います。

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Go's thinking aloud

 代官山のオフィスは想像以上に"グローバル"だった。デスクトップが整然と並んではいるが、雰囲気は大学の研究室のようで、適度なカオスがあり、そして社員のエネルギーにあふれていた。最先端のAIやテクノロジー、エンジニアの世界の刺激ある新しいトライアルが、この異なる考えの混じり合いの中で自然に醸成されていく。

 中村伊知哉先生はその名著『超ヒマ社会をつくる』(ヨシモトブックス)で、「AIをマネジメントする能力こそが人のコンテンツ価値になりそう」と看過した。それはここに、既に実現していた。AIの進化は、楽しみ、などという一言では到底表せない。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、レポーター

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。

編集部から

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