連載
» 2019年10月25日 05時00分 公開

現場から見た「DXの真相」(1):単なるバズワードではない「DXの正体」とは何か

バズワードとなりつつある「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。だが、ちまたで語られるDXは手段が先行しているように見える。本当のDX実現のために何が必要なのか。長年IT業界で働く著者が現場の目線で解説する。

[渡邉 信之,株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン]

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 何かと話題になっているデジタルトランスフォーメーション(DX)ですが、危機感をあおる情報に踊らされ、「新しい製品やサービスを導入しないとDXが実現できない」と早合点してしまう企業は少なくありません。しかし、本当のDX実現のためには、経営者やIT担当者はDXの考え方や定義を正しく理解し「本当に実現したいこと」を整理する必要があります。

 本連載では、約20年間IT業界で働き、ITベンダーと事業責任者という両方の立場に身を置いた著者の経験を基に「DXの真相に迫る」というテーマで深堀りします。まず第1回目は「DXの本当のゴール」について解説します。

バズワードとしてのDX

 DXを語る上で2018年9月に経済産業省から発表されたDXレポート(正式名称は「DXレポート 〜ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開〜」)は外せません。DXレポートは端的にいえば「レガシーシステムを何とかしてDXを進めないと、2025年以降で巨額の損失が出る」といった内容です。ここでいうレガシーシステムとは長期間の利用などで複雑化、ブラックボックス化した既存のシステムを指します。多くのメディアで取り上げられ、注目を集めています。

 企業は対策を進めようとしていますが「非デジタルな業務をデジタル化することがDXのゴール」と考え、結果としてRPA(Robotic Process Automation)やプロセス管理システムなど「話題になっている製品やサービスを導入して終わり」になっていることが少なくありません。確かに業務効率化といった点では効果はあると思いますが、導入しただけで「DXが実現できた」とはいえません。

 こうした誤解が生じるのは2つの背景があると考えます。

ITベンダーへの依存

 さまざまなITベンダーが「2025年の崖」の解決に向けた製品やサービスを提供しています。DX実現のためには適切にITを活用する必要がありますが、そのためには導入後の運用を含めたさまざまな検討が必要です。ですが、手っ取り早く目の前の課題を解決できる製品やサービスを見て「これこそDXだ」と後先考えずに導入してしまう経営者やIT担当者がいます。ITベンダーも利益を出す必要があるので「これを導入してくれ」と言われれば当然断りません。

 意地の悪い見方をすれば「今こそビジネスチャンスだ」と言葉巧みに危機感をあおり、製品やサービスの導入を急かすITベンダーがいるかもしれません。経営者やIT担当者が「DXはよく分からないからITベンダーに任せよう」という姿勢では、ITベンダーに勧められるまま不必要な製品やサービスを導入することになります。

DXレポートの読み込み不足

 例えばDXレポートには「データを活用しきれなければ、ビジネスモデルを柔軟・迅速に変更できず、デジタル競争に負ける」(要約)とあります。これだけを見ると「データ活用=デジタル競争の勝者」という解釈になりますが、このレポートのメッセージは別にあります。

 それは、企業があらゆる競争環境で戦っていくために自社のコアコンピテンシーを再定義し、「どの市場で何を価値提供していくのか」という基本的な経営戦略を見直す必要があるということです。データ活用は手段の一つです。製品やサービスを導入する場合、それらは「見直した経営戦略を実行するための仕組み」でなければなりません(参考記事:経済産業省に聞く「DXレポート」の真意)。

本当のDXのゴールとは

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