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» 2019年11月12日 05時00分 公開

Go AbekawaのGo Global!〜Li Rutong編(後):「エンジニアの本当の技量が問われる、だから楽しい」――コーディングを楽しむCTOがエンジニアに伝えたい“焼脳”とは (2/2)

[取材・文:阿部川久広(Go Abekawa), 構成:中村篤志,@IT]
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一番大切な仕事は「自分がいらないシステムを作る」

阿部川 CTOという職業は、普通のエンジニアとは少し違うと思うのです。現在と同時に、少し先のことを見据え、実務でコーディングもする。さまざまなことをさまざまレベルで考えなければなりません。そんな中でルートンさんの一番大切な仕事は何だとお考えになっていますか。

ルートン氏 そうですね……(と少し口ごもり)ちょっと変な言い方になるかもしれませんが、今私が作ろうとしているシステムは、私がいらないシステムです。チームが自立し、自己管理し、外部からの手助けがなくとも自ら運営し、それを管理できる。そういったチームを育てる、あるいはそんなチームが育つ環境を作ることが私のミッションだと思っています。

阿部川 「自分が必要ではなくなるような組織に早く成長させる」それがCEOとしての最も大切な仕事だと、よく経営者の方々が異口同音におっしゃいます。またCxOと呼ばれる人は「次のCxOがもっと素晴らしい仕事のできる環境を作るのが一番大切な仕事」とおっしゃる方が多い印象です。

ルートン氏 そうですか、じゃ僕の考え方も間違ってはいないですね(笑)。皆が楽しくやれて、チームが自立し、自分で成長していく、そんな環境ですね。

阿部川 それを実現するために、何か特に気を遣っていることはありますか。

ルートン氏 成長は「自分で決める」ことで実現できるものだと思うので、メンバーになるべく「決めるチャンス」を与えるようにしています。物事を決めるというは大変なことですし、いったん決めるとしっかり実行しないといけない。他人の決めたことをやるのはある意味簡単ですが、それでは依存関係ができていつまでも成長しなくなると思います。

阿部川 駄目な会社というのは、物事を決めるときに人任せにして、それが失敗したら、決めた人のせいにする。そして、それを繰り返すから、物事を決めない、新しいことをやらない、という企業文化になってしまうのだと思います。

ルートン氏 私たちが注意しているのは、決めるというのは、同時に責任も伴うものだということを理解して物事を決めることです。ですが、それで間違ったとしても罰を与えることはほとんどありません。罰を与えることに前向きの意味はありませんので。むしろ、その間違いから学べる環境を作るようにしています。よく皆に、失敗するなら、早く失敗しよう、物事を決めずに、ズルズル進むよりも、早く失敗してしまって、次のことにチャレンジしましょうと言っています。

阿部川 特にIT業界はスピードがなくなったら命取りですからね。とはいえ、本来の意味で失敗を許容する組織を作るのは簡単ではありません。人は間違うと、やはり多少萎縮してしまいますからね。

ルートン氏 当社では間違いを「自虐ネタ」にして、それで笑いを取れるようにと勧めています(笑)。

「焼脳」で脳の筋トレを

阿部川 エンジニアは、キャリアの構築について、たくさんの悩みを抱えていらっしゃいます。そのようなエンジニアの方々にアドバイスをいただけますか。

ルートン氏 問題解決をしなければいけないときに、自分が知っている方法ではなく、全く知らない方法で解決できないかと考えてみましょう。つまり、未知の新しいものを使って、目の前の問題を解決する、それを常に意識して繰り返す。これを苦しいではなく、楽しいと感じる体質になってほしいです。

 筋トレと一緒です(笑)。筋肉は傷つくことで成長しますし、疲れるまで走らないと、早く走れるようにはなれません。よく「頭が焼ける(まで考える)」までといいますが、もともとこれは中国語で、「焼脳」と書くんですよ。

阿部川 えー、そうなんですか!(ととても驚く)

ルートン氏 漢字からイメージすると変な食べ物に間違いそうですが(笑)。

阿部川 どういう意味なのですか。

ルートン氏 頭を使って、自分に意地悪をする、あるいは自分を追い込むことです。追い込むことでドーパミンが分泌して、新しいアイデアが生まれます。これを繰り返すと、脳が自然に強くなっていきます。この過程で学んだことは単なる知識ではなく、メタ知識です。だから自然に伸びるんです。ただ、中国で今使うと古過ぎる表現だと笑われるかも知れません(笑)。

阿部川 いい言葉ですね。ぜひ使っていきたいと思います(笑)。

Go's thinking aloud 〜インタビューを終えて〜

インタビューに現れたのは、大学院生といっても通るような、髪を長く伸ばしたジーパン姿の青年だった。若いエンジニア特有の自信にあふれた瞳をしている。しかし随所に「運が良かった」と繰り返す。いわく、中学の授業のおかげ、両親のおかげ、会社のおかげ、そして失敗したおかげ。自分が一番伸びたのは、会社を倒産させて、失敗したときだったと迷いなく豪語した。「焼脳」で鍛えてきた姿勢がまた一気に加速された。スーパーエンジニアは、とっくに次のステージを見据えていた。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、レポーター

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。

編集部から

「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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