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» 2019年11月28日 10時00分 公開

DXに向けて刷新が必要なのは「システムだけ」ではない:マルチクラウド環境における運用管理の課題と解決方法

デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流が高まる中、多くの企業がマルチクラウド環境の活用に乗り出している。だが、DX実践で求められるビジネス展開のスピードアップや柔軟性の向上は、インフラを刷新しただけで実現できるものではない。クラウド特有の運用手法を取り入れ、既存のオンプレミス環境と適切に融合させなければ、ビジネスの成果につなげることは難しい。現行のシステム運用を行いながら、DXに貢献するためには、運用管理をどのように刷新したらよいのだろうか。野村総合研究所に話を聞いた。

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運用管理の世界で起こっている“分断”

 デジタルトランスフォーメーション(DX)のトレンドが加速する中、システム運用の在り方も大きく変わってきた。例えばDX実践のカギになる技術として、IoTやAIなどが挙げられる。これらはインフラに高度な拡張性、柔軟性が求められる点で従来のオンプレミスシステムでは対応しにくいことが多い。そこでクラウド上にIoTデータを蓄積したり、AIに必要な計算リソースをクラウドで調達したりと、さまざまなクラウドサービスを活用するケースが増えている。

 もちろんクラウドが必要なのはこれらに限らない。社外向け/社内向け問わず、システム/ITサービスを一定のパフォーマンスでコスト効率良く運用する上で、オンプレミスとクラウドを使い分けることが不可欠になっている。加えて、ここ1〜2年でこうした状況はさらに高度化・複雑化している。

ALT NRI クラウドサービス事業本部 クラウド運用ソリューション事業部 部長 石井信一郎氏

 クラウドの選択肢が増え、マルチクラウド利用が当たり前になりつつある。例えば、IaaS基盤は「Amazon Web Services」や「Oracle Cloud Infrastructure」を利用しつつ、オフィス基盤は「Microsoft Azure」、データ分析は「Google Cloud Platform」などを利用するといったケースだ。サービスについても、コンテナやサーバレスなどの最新技術を利用する例が増えている。

 こうしたマルチクラウドの浸透は、言うまでもなく運用管理をますます複雑にしている。NRIの石井信一郎氏は、運用管理の世界で「さまざまな分断が起こっています」と指摘する。

ALT マルチクラウド環境に即した新たな運用管理スタイルが求められている

 「オンプレミスとクラウドでは管理手法や運用要件が異なります。オンプレミスの運用ノウハウでそのままクラウドを管理することはできません。例えば、マルチクラウドを管理する場合は、クラウドごとに管理コンソールが異なり、それぞれで管理ノウハウを習得していかなればなりません。障害時のインシデント管理や構成管理、また、リソースやコスト管理なども、新たに検討する必要があります。管理対象の責任範囲もこれまでと異なります。クラウドという新たな管理対象が、運用管理のプロセス、組織体制、ツール、それぞれに変革を促し、それが多大な負荷となっているのです」

本番運用に移ったときに問題が顕在化

 NRIは「Senju Family」に代表されるシステム統合運用管理ツールを長らく提供してきた。金融業や流通業をはじめ、高度な信頼性と安定稼働が求められるミッションクリティカルシステムの運用管理を支えている。石井氏は、「DXトレンドは、そうした企業の運用管理の在り方も大きく変えようとしています」と指摘する。

 「ご存じの通り、FinTechなどの新しい取り組みは、ベンチャー系企業だけではなく、これまでの金融業でも盛んです。流通、製造などの企業も顧客分析や製造ラインの改善などにIoTやAIを活用しつつあります。こうした新しい取り組みはクラウド環境でスタートさせるのが一般的です。また、本番運用ではオンプレミスの基幹システムと連携させる例もあります。そこで問題になるのが運用管理です。DevOpsのアプローチで開発と運用が一体となり、マルチクラウド環境でも安定的に本番運用できる体制を築ければいいのですが、多くの場合それが難しい。運用要件も大きく変わるため、既存システムを運用しながら新しいインフラ、新しい運用プロセスに適応していくことが困難になっているのです」

ALT 人的リソースやノウハウが限定的な中で、オンプレミスの運用にクラウド特有の運用が追加される

 新しいサービスを開発する場合、例えばコンテナやサーバレスなどの技術を使って開発と運用を一体的に運営することも多い。だが一般的なエンタープライズ企業の場合、本番サービスの稼働後は専門の運用部隊が運用を引き継ぐ形が一般的だ。運用部隊は、ミッションクリティカルな基幹システムをはじめ、多様な既存システムを運用しており、日々の業務に忙殺されている。

 「コンテナやサーバレスなど、クラウド特有の環境で開発したITサービスが本番稼働に入ると、そのサービス運用は既存の運用部隊が担うことが求められます。このとき、オンプレミスの既存システムとは異なる管理ノウハウが必要になります。しかし、サービスを開発した開発者は運用引き継ぎやスキルトランスファーが不十分なケースが多い。また、ガバナンスやセキュリティは既存システムと同等のレベルが求められるわけです。コスト効率に配慮しつつ、状況に応じて基盤を拡張してパフォーマンスを担保するなど、クラウド特有の運用ノウハウも求められます。では、既存システムの運用管理で多忙な中、新規領域のサービスも安定運用するにはどうすればよいのか――『既存の運用スタイルを生かしつつ、DXの取り組みを推進したい』というのが運用管理者の切実な願いなのです」

これまでの運用プロセスを生かしつつDXに対応――「Senju Family 2020」と「mPLAT/Clouday」

 こうした課題を解決するポイントとして、石井氏が指摘するのが「オンプレミスとクラウド、開発と運用の“分断”をつなぐ仕組み」だ。具体的には、「マルチクラウド環境における、複数のプラットフォームに対応した統合管理の実現が重要」だという。

 そこでNRIでは、パッケージ型ソリューションの「Senju Family」に加えて、Senjuの機能を組み合わせて、クラウドサービスとして提供する「mPLAT」を提供してきたが、2019年10月にリリースした新バージョン「Senju Family 2020」と、mPLATの新サービス「mPLAT/Clouday(エムプラットクラウデイ)」では、こうした「分断をつなぐ」機能強化を図ったという。

 具体的には、大きく3つのポイントがある。1つはクラウド管理機能の強化。2つ目はAIを活用した自律型運用機能の強化。3つ目はマルチクラウドを統合管理する機能の提供。石井氏は「これらによって、既存の運用スタイルを生かしつつ、DXの取り組みを実践できるようにしました」と話す。

ALT マルチクラウド環境に運用管理を無理なくシフトするための要件

 まず「クラウド管理機能の強化」とは、サーバレス環境、コンテナ環境への対応を指す。従来の仮想環境やクラウド上の仮想マシンだけではなく、サーバレス環境でのジョブスケジュール管理機能や、コンテナ環境の監視機能を実装した。

 大きなポイントは、オンプレミスと同様のインタフェースで、サーバレスやコンテナ環境の管理が可能な点だ。つまり、これまでと同じ運用ノウハウを活用して、メトリックスデータを分析してサービス障害の予兆を検知したり、クラウドリソース管理の傾向を分析したりすることで、サービス障害の発生を未然に防ぐことができる。

ALT DevOpsポータルで、オンプレミスもクラウドも統合管理できる

 「AIを活用した自律型運用機能の強化」は、クラウドの運用業務で蓄積したインシデント情報や、障害対応のノウハウをAIで分析し、対処をレコメンドするものだ。オペレーターに対応すべき内容を通知したり、自動でナレッジフローを実行したりすることができる。

 「管理画面を刷新し、パネル型でタスクを一覧表示することで、優先度や各チケットの対応状況をひと目で把握できるようにしました。また、キーワードの入力頻度やチケットの参照頻度などを基に、障害につながる事象の気付きや発見をサポートすることもできます。これにより、クラウド運用ノウハウの蓄積が不十分なシステムに対しても、人の負荷を下げながら運用業務を効率化・確実化できます」

ALT AIを活用し、運用管理スタッフの負荷低減と確実・迅速な対応を両立

 3つ目の「マルチクラウド統合管理」は、mPLAT/Cloudayの提供を指している。この新サービスを利用すると、Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどのマルチクラウド環境において、「どの部門が、どのクラウドを、どのくらい利用しているか」を可視化・把握したり、「どこで障害が起こっているか」を把握したりすることができる。

 「部門ごとの課金状況」などを統合的に把握できる点も大きなポイントだ。ビジネスを支えるITリソースの使用状況を具体的な金額で示せることは、「経営への寄与」が強く求められているIT部門の役割を大きく支援するものといえるだろう。

ALT 各種クラウドの課金状況もひと目で把握できる

 なお、mPLAT/Clouday自体もマイクロサービスアーキテクチャを採用することで、カスタマイズ性を高め、クラウド環境そのものが変化することに俊敏に対応できるようにしているという。

顧客に寄り添い、既存資産を最適化しながら、変化への対応を支援していく

 日本企業の多くは、「既存システムの運用管理にかける手間やコストが、新たな取り組みの足かせになっている」といわれている。経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」でも「システムの維持管理費がIT予算の9割以上を占める」と指摘。また、既存システムが事業部門ごとに構築されている、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化/ブラックボックス化が進んでいることも問題視されている。

 DXを推進する上では、レガシーシステムを刷新し、以上のような問題を解決することが不可欠だ。だが、ひと足飛びにシステムを切り替えることは現実的ではない。そこで重要になるのが、システムと運用プロセスを“段階的に切り替えていく”アプローチだ。NRIでは、そうした「既存システムを持つエンタープライズがDXを推進する上で“欠かせない要件”」を最も重視しているという。

 「スコープを決めて新しいシステムへとシフトしていくことで、既存ビジネスへの影響や、運用品質低下、セキュリティレベル低下などのリスクを抑えながら、システムを刷新することができます。しかし、こうしたアプローチでは複数のシステムが並存することが前提となります。また、システムだけではなく、運用プロセスや人のスキルもシフトしていかなければなりません。その負担やリスクをどう下げるか――それが今回の機能強化で留意したポイントです」

ALT 「これまでと同様に、DXという大きな変化にも対応できるよう、NRIは顧客企業に寄り添って支援していきます」

 また、自動化をキーワードに、多様な運用管理ツールが実際に使われているが、そうした既存資産を最適に活用するアプローチを採っていることもNRIの大きな特長だ。石井氏は、「既存の管理ツールを全て自社製品に置き換えてもらおうということではなく、これまでの管理ツールはそのまま生かしていただき、NRIは“管理ツールを一元的かつ透過的に管理できるプラットフォーム”を提供している形です」と解説する。

 「運用管理の現場はお客さま固有のノウハウやナレッジが蓄積されており、規模も運用スタイルも各社各様です。弊社が得意とするのは、そうした多様な環境における課題と最適解を発見し、技術力と経験によってさまざまな問題を解消することです。これまでもツールやサービスの提供だけでなく、運用プロセス改善支援なども含めて常に顧客企業に寄り添い、迅速かつ着実に“変化”に対応できるよう支援してきました。レガシー刷新、クラウドへのシフトという大きな変化が求められるDX推進においても、そうしたスタンスは変わりません」

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提供:株式会社野村総合研究所
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2019年12月27日

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