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» 2019年11月21日 05時00分 公開

経営層は「IT部門こそがDXの足かせ」と認識?:経産省が語る 「2025年の崖」克服のポイント――21年以上稼働する老朽システムが6割以上、トラブルリスクが3倍に (1/2)

アイティメディアが開催した「ITmedia DX Summit 2019年秋・ITインフラ編」の基調講演に経済産業省の「DXリポート」作成者である和泉憲明氏が登壇。2025年の崖を克服するためのDX実現のポイント、DX推進ガイドラインやDX推進指標の概要について語った。

[唐沢正和,ヒューマン・データ・ラボラトリ]

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経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 和泉憲明氏

 アイティメディアは2019年9月17日、「ITmedia DX Summit 2019年秋・ITインフラ編」を開催した。このセミナーでは、経済産業省のDXリポート「2025年の崖」問題も踏まえ、硬直化したレガシーインフラを、変化に強いハイブリッド/マルチクラウドインフラに変革するためのロードマップを紹介した。

 本稿では、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課の和泉憲明氏による基調講演『「2025年の崖」問題に対するDX推進政策〜デジタルインフラ導入の動向を踏まえて〜』の内容を要約してお伝えする。

 和泉氏は、基調講演の冒頭で、「ITシステムのトレンドには、BPRやERP、ASP、IoT、RPAなどの“アルファベットスープ”が次々出てくるが、それらはビジネスのコンセプトにつながるものではない」と指摘した。アルファベットスープとは、アルファベットの文字を重ねた技術トレンドはどれもスープであり、いつまでたってもメインディッシュにはたどり着かないということを“やゆ”したものだ。つまり、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)においても、単に新しい技術を追い掛けるのではなく、本質を見極めないとデジタル企業への変革は難しいということである。

最重要課題の克服とサービスレベル向上の同時実現も――米国、日本のDX事例

 和泉氏は、デジタル企業へと変革した代表例に着目し、「かつて書籍の通信販売会社だったA社は、ロングテール戦略にフォーカスし、いまやデジタル企業の代表格となっている。同社は、現在もさまざまな事業領域を横断してイノベーションの施策を打ち出しているが、共通しているのは、『顧客体験を最適化』するという点。全ては、そこから逆算して展開されている。以前、同社の関係者と意見交換をした際に、『テクノロジーから生み出されているものはない』と当たり前のように言っていたのには驚かされた」と話す。

 また、米国航空会社のDXの取り組みとして、「予約システムのインフラを刷新し、搭乗前にモバイルアプリでフードコートのメニューから食べたいものを注文すると、搭乗後に機内でそれを食べることができるサービスや、乗客が自分のタブレット端末から最新映画を鑑賞できるサービスを提供している」ことを紹介。これは、システムインフラへの投資によって、機内からキッチンやディスプレイをなくした点がポイントで、航空機経営の最重要課題である機体の軽量化を実現しながら、乗客へのサービスレベル向上も果たしている。

 日本におけるDXの事例にも触れ、「大学病院では、看護師が使う端末を全てスマートフォンに変えて、QRコードやカメラ機能を活用することで、医療の質的向上と病院経営の効率化に成功した。また中小製造業では、3次元CADを導入して少品種大量生産から多品種少量生産へとビジネスを変革。その結果、受注の80%が1〜2個の少量生産品になり、利益率が20%まで高まった」としている。

日本の大学病院のDX事例(和泉氏の講演資料から引用)

21年以上稼働する老朽システムが6割以上、トラブルリスクが3倍――なぜ、DXレポートを作成したのか

 こうした事例を踏まえて和泉氏は、経済産業省が取り組んでいるDX推進政策の概要について説明した。

 まず経済産業省では、政策の中でDXの定義を「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と設定している。

 DXレポートを発表するに至った背景について和泉氏は「このコンセプトを打ち出した一方で、国内企業のビジネス状況を見ると、クラウドビジネスが想像以上に速いスピードで進展しているにもかかわらず、それに対してリアリティーを感じていないという現実があった。そこで、日本企業が抱えるDXへの課題を浮き彫りにすべく、DXレポートの作成に取り組んだ」と明かした。

 DXレポートでは、「日本企業の多くは、DXを推進するための体制やシステム構築ができていない」ことを課題に挙げている。具体的には、既存の老朽システムが問題なく使えていると『誰も困っていない』となり、ハードウェアやパッケージの維持限界が来るという将来的なリスクを経営層に説明しにくい。このため、現行の技術、ビジネスに固執し、目先にある改元対応、消費税増税、軽減税率などのシステム改修にしか目が向かなくなってしまう。しかし、デジタル経済が浸透する中で、このまま老朽システムを放置していると、ブラックボックス化による保守費が高騰する上に、DXに向けた業務プロセスの変革ができなくなり、デジタル競争の敗者になるリスクが高くなる。

既存システムの運用、保守に割かれてしまう資金、人材……(和泉氏の講演資料から引用)

 そして、2025年の崖を迎えると、21年以上稼働する老朽システムが6割以上を占め、老朽システム起因のトラブルリスクが3倍になり、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしている。

DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜(和泉氏の講演資料から引用)
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