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» 2019年12月09日 05時00分 公開

後悔はしていない:インセンティブを求めて異業種に転職した「辞めジニア」の告白 (1/3)

年の近い先輩が退職した日、彼女は静かに絶望した。

[竹内充彦, 鈴木麻紀,@IT]

 「エンジニアとして生涯活躍していきたい」と考えている読者に、問いたい。「本当にエンジニアでいいのか?」と。あなたに合っている職業は本当にエンジニアなのかと。

 これからエンジニアを目指す学生、今後のキャリアに悩んでいる若手エンジニアに、若手エンジニアの経験を通じてキャリアを構築する際に考えるべきこと、取るべきアクションなどをお伝えする本連載。今回はあえて「エンジニアを辞めた女性」にお話を伺った。

 文系卒の彼女はなぜIT業界を就職先に選んだのか、就職前と後でどのようなギャップがあったのか、そして彼女は何に絶望し、エンジニアを辞めたのか――。

 現在は全くの異業種/異職種で働く彼女は、「こんなはずではなかった」「就活や転職活動のときに、もっと●●をしていれば」といった後悔をする人を一人でも減らしたいとの思いから、今回の取材に協力してくれることになった。

吉田恵子さん(仮名)

石油を掘りに行く? それともソフトウェア開発する?

 現在29歳の吉田恵子さん(仮名)は、国際政治経済学部卒。レポート作成や調べものをするためにPCを所有してはいたものの、Microsoft Excelすらまともに触ったことがなったという。

 「社会政治学でODA(政府開発援助)を学ぶうちに、社会インフラに関わる事業に携わりたいと思うようになり、漠然と、飛行機を作ったり、石油を堀りに行ったり、そういう職業に就きたいと考えていました」

 さらに勉強を進めていくうちに、重工業や石油エネルギー関連企業だけではなく、ITもさまざまな分野で社会を支えていることを知った。

 そして就活シーズンを迎え、当初の目標通りエントリー先の7割に重工、石油エネルギー関連企業を選んだ。そして、残る3割はIT企業にエントリーした。

 「ITも重要な社会インフラであることを知ったのに加え、IT業界は教育や研修がしっかりしていると聞いたので、手に職(技術)が付けられるかな、と。プログラミング技術を身に付けたら、将来、結婚や出産などで会社勤めを続けられない状況になっても、フリーランスで働けるかもしれないと考えたんです」

 最終的に彼女が選んだのは、ソフトウェア開発会社だった。

 「業界研究を重ねていくうちに、『イチからものを作り上げていく』という部分に興味を抱くようになりました」

 ここで注意したいのは、彼女が行った「業界研究」の内容だ。インターネットや書籍で調べたり、就活仲間の友人や同期から話を聞いたりしたそうだ。つまり、IT業界に詳しい人、IT業界で働いている人から話を聞いていないため、全てが「想像」でしかなかった。

 ひとくちにIT業界といってもさまざまな種類の会社があること、職種もいろいろあり、彼女がなると思っていた「プログラマー」以外の職種もあることなど、もちろん知らなかった。

 誰しも経験があると思うが、「知らない」ことを自力で調べても、一定の範囲にとどまり、全体像を理解するのは難しい。全てを「イメージ」で進めてしまった吉田さんは、LINEやヤフーなどは「チャラい」と避け、大手企業の下にぶら下がっている「チャラくない」企業に応募した。

 「会社の立ち位置を確認すればよかった」と、吉田さんは当時のことを振り返る。会社のパワーバランスで、やることやできることが変わることを、就職後に嫌というほど思い知ることになるからだ。会社を探す基準も、研修の有無などの「条件」ばかりで、「何をしたいか」の視点が欠けていたと後悔する。

 ともあれ、メーカー系大手と中堅の2つのソフトウェア開発会社から内定をもらい、あえて中堅企業の方を選んだ。

 「中小企業は組織として小回りが利くので、分業化がハッキリしている大手よりも、幅広い経験が積めるのではないかと考えたからです」

 入社後、3カ月間の入社時研修を受け、論理的思考、Java、JavaScript、HTML、CSSなどをマスターし、Webアプリケーションを開発するために必要な基礎的なスキルを身に付けた。

 ところが、吉田さんが配属されたのは、プログラム開発チームでなく、基幹システムの導入チームだった。同チームが扱うのは、さまざまな機能が盛り込まれた既存パッケージソフトウェアで、顧客のビジネスニーズをヒアリングしながら、ソフトウェアの機能設定を行っていく。プログラムを書くことはほとんどなかった。

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