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» 2019年11月29日 05時00分 公開

自らの業の役割を何と心得るか!:プライバシーフリーク、就活サイト「内定辞退予測」で揺れる“個人スコア社会”到来の法的問題に斬り込む!――プライバシーフリーク・カフェ(PFC)前編 #イベントレポート #完全版 (3/5)

[鈴木正朝, 高木浩光, 板倉陽一郎, 山本一郎,@IT]

リクルートキャリアの言い分

山本 リクルートキャリアの弁明のやり方はいかがでしょうか。

高木 会見の際に公表された資料では、「旧スキーム」と「新スキーム」があるとの説明でした。

図4

 「リクナビ2019」と「リクナビ2020」では実施方法が違っていたということです。2019の「旧スキーム」では、「個人が特定できない情報を当社(リクルートキャリア)に開示」して、「リクナビが保有するCookie情報と突合し、当社では個人が特定できない状態」で「スコアを算出」し、「スコアを納品」したとあります。そして、求人企業がそれを「IDと照らし合わせることで個人を特定」して内定辞退推測に使ったという説明です。

 リクナビとしては、「スコアの納品は個人情報の提供に当たらず、個人情報保護法に触れていない」という前提で説明しています。この説明を個人情報保護委員会も否定していない、というのが現状です。

山本 その辺り、個人情報保護委員会の認識と、今回踏み込んだコメントをした厚生労働省との考え方の違いがあるのではないかと思いまして、この後議論が深まっていく中であらためて解説していただきたいです。リクルートキャリアの最初の釈明をみるだけでは何のことだかまだよく分からず、機械学習の狙いや仕組み、妥当性と、関連法規との関連も含めてもう少しきちんと説明してもらわないといけないと思うのですが、鈴木先生いかがでしょうか。

鈴木正朝(以降、鈴木) 「Cookieの個人情報該当性」が論点だろうと思います。この事例では明らかに人に結びついて運用しているので、個人情報として捉えていくべきだろうと思います。

 厚労省は、労働法上の法目的に沿って対象情報を捉えればいいし、公正取引委員会は必ずしも「個人情報」概念を用いる必要はなく、独占禁止法上の取引対象としてのデータの取り扱い方を評価していけばいいと思います。従って、他省庁が個人情報保護法上の「個人情報」を用いるなら、個人情報保護委員会との調整は当然必要ですが、固有の法分野で完結するのであれば、不要ですよね。Cookieに限らず、個人情報の定義の在り方は、今後もっと詰めていくべき課題だと思います。

書類選考で落とされた事例

山本 高木先生、読売新聞で報じられた事例をお話しください。

高木 2019年9月6日の読売朝刊の解説「リクナビ問題 個人情報保護法に限界」という記事ですね。有名国立大学の女子学生――成績優秀がな方のようです――が、書類選考の段階でことごとく落とされてしまったそうです。大学の就活担当者も「うちの大学では前例がない」とコメントを出している。その学生が実は国家公務員を志望していて、それをリクナビにも登録していた、そのせいで落とされたのでは、という疑いを持っているという話です。

 リクナビのせいで書類選考で落とされていたのだとすれば、つまり、書類選考落ちが本当の志望先をリクナビに示していたせいだとすると、大変な問題ですね。

山本 国家公務員志望者は自動的に内定辞退率が上がらざるを得ないかもしれません。民間企業の内定を得る時期を経た後で国家公務員試験があり、そちらが本命の学生は必然的に民間企業の内定辞退をすることになるからです。いかがですか?

鈴木 ここは立証が困難じゃないですか。そこが難しいからこそ、現行法は、個人情報の取り扱い方という形式的、手続的な規律でしばっているところもあるんだろうと。「個人データのこうした自動処理によって、あなたを落とすという決定につながった」と言えればいいんでしょうが、そもそも現行法ではプロファイリングなど自動処理による権利侵害的決定を制約する条項もありません。現行法は個人情報保護法の形式的、手続的なところまでなので、第三者提供の制限や利用目的の特定などの条項でしっかりと抑えておかないと当面の弊害は押さえられないですよね。

山本 これはもう、追加の立ち入りで、実際どうだったか――いかなる内定辞退情報が利用企業に提示され、その結果内定見送りに至ったのか、バイネームで調べていくしか方法はないのかもしれないですよね。

鈴木 立入検査で何を押さえて、どう分析していくかは、今後の課題なんでしょうね。

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