コミュニケーションが苦手?――なら「なたもだ」で解決すればいいじゃない仕事が「つまんない」ままでいいの?(60)(3/3 ページ)

» 2019年12月11日 05時00分 公開
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論理的に伝える

 私はオンラインでやりとりする際、「論理的に伝える」ことを意識しています。なぜなら、オンラインでは情報量が限られるため、分かりやすく、効率的に伝えたいと思うからです。

 論理的に伝えるためには、「なたもだ」がおすすめです。なたもだとは、国語作文教育研究所の故宮川俊彦氏が提唱した論文や文章の組み立て方で、「なぜなら(理由)」「たとえば(例)」「もし(反証)」「だから(結論)」の頭文字をとったものです。

「なたもだ」ってなぁに?

 結論を最初に一言で書いた後、「なぜなら〜」「たとえば〜」「もし〜」「だから〜」の順番で文章を組み立てると、論理的で分かりやすい文章になります。メールなど、用件を論理的に伝えたいときにこのフレームワークで文章を考えると便利です。

 例えば「対面コミュニケーションが苦手なら、オンラインコミュニケーションを活用しては?」と伝えたいのなら……

 「結論」 対面コミュニケーションが苦手なら、オンラインコミュニケーションを活用すればいいのではないかと、私は思います。

 「なぜなら(理由)」 なぜなら、苦手なことを克服するよりも、得意なことや強みを生かした方が、無理なくコミュニケーションができるからです。

 「たとえば(例)」 例えば、対面コミュニケーションでは緊張してなかなか言葉が出てこないことは少なくありません。でも、オンラインコミュニケーションなら、相手の顔は見えませんし、瞬時に答える必要もありません。オンラインの方が得意な人にとっては、コミュニケーションのストレスがありません。

 「もし(反証)」 もし、対面コミュニケーションだけにこだわっていたら、ますます自信をなくしてしまうでしょう。コミュニケーションの本来の目的は、お互いの考えや感情を交換することのはずです。

 「だから(結論)」 だから、対面コミュニケーションが苦手なら、得意なオンラインコミュニケーションを活用すればいいのではないかと思うのです。

 「なたもだ」に近い方法に、「PREP法」もあります。「Point(結論)」「Reason(理由)」「Example(例)」「Point(結論)」の順番で伝える方法です。

 また、なたもだは文章だけではなく、プレゼンテーションなど対面コミュニケーションでも有効です。オンラインコミュニケーションで意識的に使うと、ふと気付いたときに、「私の意見では○○です。なぜなら〜」のように、対面コミュニケーションでも論理的で、分かりやすく伝えられている自分に驚くでしょう。

理想を共有する(理詰めで追い込まない)

 エンジニアは仕事柄、物事を理詰めで考えるのが得意です。なぜなら、仕事柄、物事を論理的に考えることが多いからです。そのため、何かしらの問題が生じたとき、時に「なぜ、そうなっているのですか?」「いつからですか?」「具体的には、誰が、そうしろと言ったのですか?」のように、理詰めでやりとりしてしまいがちです。

 もちろん、問題を解決するためには、理詰めで原因を究明し、現状を明らかにするのはとても大切です。でも、時と場合によっては、相手に威圧的な印象や、「面倒な奴だな」と思わせてしまう恐れがあります。

 問題を解決したい場合、過去の原因追求も大切ですが、それ以上に意外と重要なのが「理想的な状態は何か?」「そのためには、何をする必要があるか」という、未来に向けた解決志向の視点です。「原因追求型のフィードバックをされると、気がめいる」も参考にしてください。

肯定的に言い換える

 日常的にオンラインコミュニケーションをしている中で、「この人はステキだな」「尊敬できるな」と思うのは、肯定的な言葉を使う人です。なぜなら、否定的な言葉を投げかけられると嫌な気分になりますが、肯定的な言葉を掛けられると、前向きになれるからです。

 先日、大勢の前のプレゼンをしたとき、何となく聴衆の反応が悪くて、「もう少し、別の伝え方があったんじゃないかな」と後で落ち込みました。そんな悩みを友人にメールで伝えたとき、「今度はさらにすばらしいプレゼンになりそうですね!」とコメントをくれました。

 こういった励ましの言葉は何度読んでもうれしいもの。繰り返し読めるのはオンラインコミュニケーションの良さの一つです。

苦手な方法よりも、得意な方法の方が仕事は楽しい

 「エンジニアにはコミュニケーション力が必要」――よく言われる言葉です。もちろん、それも事実なのでしょう。

 でも、苦手を克服するのは、なかなか難しいものです。

 幸いなことに、私たちにはオンラインコミュニケーションがあります。もちろん、コミュニケーションの手段は相手にもよりますが、苦手な方法で自信をなくすよりも、得意な方法でコミュニケーションをした方が、スムーズで、楽しく仕事ができるのではないでしょうか。

筆者プロフィール

竹内義晴

しごとのみらい理事長 竹内義晴

「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。

著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。


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