特集
» 2019年12月27日 05時00分 公開

特集:DXを成功させるための組織論(1):DXの成功に「組織」が不可欠なのはなぜか

素早い開発サイクルでサービスを提供するためのベストプラクティスは整いつつあるが、それを「組織に浸透させる」ベストプラクティスは見当たらない。DXを進めている企業の事例を基に「DXを進めるための組織作り」には何が必要かを探る。

[編集部,@IT]

 「デジタルトランスフォーメーション」(DX)は企業が取り組む喫緊の課題として広く認知されるようになった。「2025年の崖」という分かりやすいキーワードで有名な2018年9月発表の経済産業省のDXレポート(正式名称は「DXレポート 〜ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開〜」)を読んで、DXに取り組み始めた経営者も多いだろう。

 IT部門などの開発部隊が主体となったアジャイル開発の採用、コンテナを使ったシステムのマイクロサービス化などの事例も増えている。だが、そういった事例でよく耳にするのは「今後、どうやって全社に展開するか」「経営層をどう巻き込むか」といった課題だ。

「やり方を変えることの不安」をどう解決するのか

 DXに限らず、既存のやり方を変えようとすると現状を維持する動き(抵抗勢力)が出てくる。

 アジャイル開発で例えれば「前例がない」「予算が見積もれないから駄目だ」「要件は出すから後は開発に任せたい、スクラムに参加したくない」などだ。アジャイルを知っている開発者であれば「失敗(要件との不一致)を少なくするためにユーザーストーリーで要件を明確化し、スプリント単位での機能の見直しをする」「開発する機能ではなく開発する期間に予算を付ける」といった対処方法が分かっている。しかし、経営層や事業部門は知らないため、不安になる。

 マイクロサービス化でいえば、本来は「業務のデジタル化」を前提として、独立させる機能を絞り込み、開発チームも少数精鋭にするのが理想だ。しかし、実際には自部門で必要だからという理由で「分割すべき複数の機能をひとまとめにする」「独自機能を残す」ということがあったり、実際の組織構造と同じような開発体制になってしまい、モノリシックなサービスになってしまったりすることがある。

 こうした例のように、組織がDX実現に与える影響は少なくない。経営層や事業部門が「ITだから自分たちは関係ない」「自分たちの都合を通すのが開発の役割だ」などと考えたままでは、本当の意味でのDX実現は難しいだろう。それどころか既存の仕組みにこだわるあまり、DX実現の足を引っ張りかねない。

 最近では基幹システムの保守などを担当するIT部門とは別に、事業部門内で開発チームを持つ企業が増えつつある。人手不足や保守作業で手いっぱいのIT部門に代わり、自分たちで進めてしまうという発想だ。確かに、事業部門への協力は初めから取れているのでその点は問題ない。しかし、IT資産の一元管理が難しくなるという懸念がある。事業部門で開発チームを持つ、という発想はスモールスタートとしては問題ないものの、そのまま全社に展開するのは不安が残る。

 DXを実現するためには開発部門だけではなく、事業部門を含めた組織そのものがDXのために変わる必要がある。

DX実現に必要なのは「事業部門を巻き込む力」

 本当のDX実現のためには「ビジネスそのもののデジタル化」が必要で、そのためには組織の変革が前提となる。

 しかし、その道のりは険しい。一般的に部門間を横断するようなプロジェクトでは、規模の大小にかかわらずさまざまな問題が発生する。DXという企業全体を巻き込むプロジェクトならなおさらだ。Tablyの代表取締役でTechnology Enablerを務める及川卓也氏は書籍『ソフトウェア・ファースト あらゆるビジネスを一変させる最強戦略』(日経BP)の中で、「DXは『第2の創業』に近い」という表現を使っている。DX実現は創業に匹敵するほどの大きなプロジェクトということだ。では既にDXに向けた取り組みをしている企業は、それほど大変なプロジェクトをどのように進めているのか。

 本特集では、DXに向けた取り組みを進める企業の中でも一般的に制約が大きいイメージのある非ITサービス系企業、いわゆるエンタープライズ企業に注目した。彼らはどのようにしてこの問題に対処しているのだろうか。「正論だけでは進められない」状況に対してどういったアプローチをして、どんな成果が出ているのか。エンタープライズ企業の事例を中心に「DXを実現するための組織を作るには何が必要か」について紹介する。本当の意味でのDXを実現するためのヒントにしてほしい。

特集:DXを成功させるための組織論〜エンタープライズ企業に学ぶ DXを進めるための組織作り〜

アジャイル開発手法やコンテナを利用したマイクロサービス化など「業務のデジタル化」のベストプラクティスは整いつつある。しかし、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が順調に進んでいるようにはみえない。これは、企業の中で「DXはサービス開発の新しい手法」としか捉えられていないためだ。DXの神髄とは「企業のビジネスがデジタル化すること」で、そのためにはDXに適した組織が必要だ。本特集では従来型の組織構造を持つイメージが強いエンタープライズ企業の事例を中心に「DXを実現するための組織を作るためには何が必要か」について紹介する。



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