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» 2020年01月07日 05時00分 公開

「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(72):最後の不具合が除去されるまで、働き続けてもらいます (2/3)

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]

請負と派遣の「都合の良いとこ取り」契約はあり?

 残念なことに、開発したシステムには複数の不具合が残っていた。詳細は分からないが、受注者が契約に基づいた代金の支払いを求めていることから、製品として売ることは可能で不具合の修正も可能であったことがうかがえる。

 しかし発注者は、契約は請負であり、支払いの対象となる成果物は「動作保障」されているべきだ、不具合のあるソフトウェアは「動作保障された」とはいえないので、代金は払わない、と支払いを拒否した。

 無論、受注者は「この契約は、工数を定めて発注者の指示に従って作業をするもので、請負とはいえない。発注者の指示に従って作業を行った分の費用は当然支払われるべき」と反論し、争いは法廷に持ち込まれた。

 確かに、請負契約であっても、発注者側が費用の妥当性を確認できるように、受注者に作業工数を求めることはあるが、それは商談上の資料にすぎず、実際に作業を行い、その工数が当初示した通りでないからといって、支払い金額に影響はない。それが請負契約というものだ。

「動作保障」とは動くまでお金を払わないということ?

 前述の通り、契約の内容には、大きな問題がある。成果物と工数が共に定められるような記載は、少なくとも契約書で行うべきではない。

 さらに、もう一つ気になるのは、契約書の中にある「動作保障された」という文言だ。

 この言葉は、発注者側に都合良く考えるなら、「ソフトウェアから全ての不具合が除去されない限り、受注者の要員は発注者の指示に従って働き続けなければならない」と考えることもできる。しかしソフトウェア開発においては、納品時に不具合が全くないということはおおよそ考えられず、このような解釈が成り立つなら、世の開発プロジェクトというもののほとんどは、受注者に長期にわたる無償作業を強いることになってしまう。

 「納品物の動作保障」という言葉の持つ意味が、「完全に動かなければ、お金を払わなくてもよい」という意味なのか――これも争点の一つとなった。

 いずれにせよ、この契約は不備であり、かつ発注者に都合良くできている。とはいえ、契約書は契約書である。軽視したら、今度はソフトウェア開発契約というものの、社会的な安定性にも影響する。

 さて、裁判所はどのように判断したのだろうか。

動作保証されるまでお金は払わないって、どういうことですか!(画像はイメージです)

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