ワコールがオムニチャネル戦略、コスト削減に向けて「Oracle Exadata X6-2」を2台導入した理由Quarter RackからEighth Rackの半分のサイズにH/W更改し、従来以上の性能を実現

新たなIT活用のため、安定性と柔軟性を兼ね備えたITインフラを必要としていたワコール。これまでもITを活用してビジネスを展開してきた同社だが、オムニチャネル戦略や働き方改革など、新たな取り組みを推進するためのプラットフォームとして「Oracle Exadata Database Machine X6-2」の導入に踏み切った。

» 2020年03月02日 07時00分 公開
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新たなIT活用のために安定性と柔軟性を兼ね備えたITインフラが必要に

 1946年に創業したワコールは、婦人肌着の製造卸を主要なビジネスとして展開する他、スポーツウェアや子ども服、パジャマなどの衣料品を世界中に提供している。2019年3月期のグループ売上高は1942億円、2万1000人を超える従業員を擁し、国内外に多くの拠点も構えている。

 ビジネスを支えるために、ワコールではこれまでもITに投資を行ってきた。だが、ITを積極的に活用して、ビジネスを成長させるという動きはあまり目立っていなかったという。その状況が、近年徐々に変化してきている。最新の中期経営計画となる2019年からの3カ年計画では、組織を横断したプロジェクトでITを活用して、オムニチャネルの実現や働き方改革に取り組むことが明記されているのだ。

 既にオムニチャネルでは、独自の取り組みが始まっている。これまでワコールでは、店舗に「ビューティーアドバイザー」を置き、顧客に直接コンサルタントが対応する販売スタイルを採用してきた。これに対し、新たに3Dスキャナーを用いて顧客が自らサイズ計測を行い、得られた計測結果からITシステムが適切な商品を推奨するという、アドバイザーなしの商品販売の実現を図っているのだ。その他にも、店頭でタブレット端末を利用するなど、さまざまなIT活用が始まっている。

 店舗現場におけるIT活用には、基幹系システムなどの安定稼働が欠かせない。つまり、同社のオムニチャネル戦略は、バックエンドのITシステムの変革までも含まれているのだ。基幹系システムが安定して動くと同時に、新しい技術の取り込みが柔軟に実現できなければならない。そのためには、安定性と柔軟性の両方を兼ね備えたITインフラが必要となる。それを実現するプラットフォームとして、ワコールは「Oracle Exadata Database Machine X6-2」(以下、X6-2)を採用 した。

X3-2のシングルノード構成で性能問題は解決、だが新たな課題が発生

ALT ワコール
情報システム部
グループ情報システム課
課長
大西輝昌 氏

 ワコールでは、既に2013年に「Oracle Exadata Database Machine X3-2」(以下、X3-2)を導入している。「大規模なデータベースシステムを導入することで、ばらばらだったデータベースを集約し、データを横串に活用できるようにする取り組みでした」と話すのは、ワコール 情報システム部 グループ情報システム課 課長の大西輝昌氏だ。

 X3-2導入以前は、基幹系システムに性能面の課題を抱えていたという。ビジネスのデジタル化が進んだことでデータ量が増え、バッチ処理が夜間に終わらない。あるいは、月次処理や季節変動のビジネスピーク時に処理が集中すると十分な性能が出ない、といった課題だ。また、システムごとにばらばらだったデータベースを集約できれば、ライセンス費用も削減できると考えた。

 X3-2の統合データベース環境には、販売、物流、会計など、6つのデータベースが統合された。十分な性能も確保でき、ばらばらだったデータベースもX3-2の上でスキーマを分けることで集約できたことで、ライセンス費用の削減効果も得られた。ワコールとしてはさらに他のシステムの統合も検討したが、「データ量がさらに増え、容量が逼迫(ひっぱく)し、全てをX3-2に統合することはできませんでした」と大西氏は当時を振り返る。性能重視のハイパフォーマンス構成とデータ容量重視のハイキャパシティー構成のうち、ハイパフォーマンス構成を選択したからだ。

 また、別の課題も発生した。データベースの集約で、リスクもX3-2に集中することになったのだ。

 「ワコールではX3-2を導入した当時、安全性、安定性、信頼性を十分に検証して環境を整備すれば、次に移行時期を迎える5年後くらいまで、なるべくシステムには触れずに運用できるだろうと考えていました。特にバージョンアップや大規模なパッチ適用などをせずとも使い続けられ、それで大きな問題は出ないと想定していたのです」(大西氏)

 だが、X3-2を安定稼働するには、ハードウェアの保守対応が必要となり、ソフトウェアにはセキュリティパッチを当てる必要もあった。システムがばらばらであれば、システムごとに個別にパッチ適用のタイミングなどを判断し、適宜対処すればよかった。だが、統合されているとなると、X3-2上に載っている全てのシステムが一度にパッチ適用などの影響を受けることになる。

 さらに、X3-2を導入した際の最小構成はQuarter(4分の1)Rackだった。現在のExadata では柔軟に構成できるエラスティック構成も可能だが、X3-2当時は Quarter Rack, Half Rack, Full Rackという3種類の固定構成しかなかった。ワコールでは当時、Quarter RackのX3-2を2台導入する予算は確保できなかったため、1台のX3-2で本番用、開発用のインスタンスに分け運用する構成を採るしかなかったのだ。

 この構成でもデータベースのソフトウェアパッチならば、まずは開発用に適用し、検証してから本番用に適用することができる。だが、ハードウェアに依存するような修正は、インスタンスごとにパッチを適用することはできない。つまり、安定稼働にはタイムリーにパッチを当てるようなメンテナンス作業が必要だが、シングルノードではスムーズに行えなかったのだ。

ハードウェア刷新により性能、容量の問題を解決し、ライセンスコスト、運用を最適化できる

 新たな課題が浮かび上がる中、ワコールではX3-2の更新時期を迎える。移行工数の観点から、Oracle Database以外に乗り換えるのは得策ではないと考えていた。また、パブリッククラウドの採用も検討したが、当時はデータベース以外のシステム全てを移行するのは時期尚早との判断もあった。一方、X3-2で十分な処理性能が得られていたため、ハードウェアが刷新されるX6-2であれば、必要な処理性能は十分に確保できることは分かっていた。

ALT X3-2の更新に当たってワコールで検討したシステムの課題《クリックで拡大します》

 その上で「Oracle Exadataを導入するならば、2台構成が絶対に必要だと考えていました」と大西氏は言う。幸いX6-2では、Quarter Rackよりも小さいEighth(8分の1)Rack構成も選択できる。データ容量重視のハイキャパシティー構成を選択すれば、半分のサイズの構成でありながら、データ容量不足の課題も解決できると考えたのだ。HDDは年々大容量化しており、ハイキャパシティー構成のX3-2とX6-2を比較しても、HDD容量は約2.7倍増加している。

 検討の結果、ワコールでは2017年にX6-2の2ノード構成を新たなデータベースインフラとして採用した。「ハイキャパシティー構成ではHDDの回転数が低くなり、Eighth RackはHDD本数がQuarter Rackに比べて半分で、スループットやIOPSも半分になるため、性能に問題が出るのではとの心配もありました。しかし、Smart Flash Cache機能によって、利用頻度の高いデータはHDDよりも高速なNVMe Flash上に配置されるため、十分な性能が出ることも分かりました」と大西氏。また、X6-2上で「Capacity-on-Demand」ライセンスを使うことで、データベースのライセンスコストを最適化できることも、X6-2の採用を後押しした。

 現在までにワコールでは、2ノードのX6-2を開発用、本番用と分け、それぞれで3インスタンス、36スキーマを稼働させている。つまり、36のデータベースを統合しているのだ。

ALT X6-2導入から現在までのワコールのシステム。2ノードのX6-2を開発用、本番用と分け、それぞれで3インスタンス、36スキーマを稼働《クリックで拡大します》

 既存のX3-2からX6-2への移行に関してワコールでは、両システムを並行稼働することで、コストをかけながらも堅実に実行している。そのため、データベースにおいては特に苦労することはなかったという。とはいえ、X6-2の導入に合わせ、クライアント環境の刷新を図っていることもあり、それに対応するためのアプリケーション変更など、システムには手を入れる必要はあったとのことだ。

 X6-2への移行により、36のデータベースを統合しても、十分な処理性能を発揮できているという。さらに、2ノード構成になったことで、ハードウェアパッチの適用も開発ノードで十分に検証してから本番ノードに適用できるようになっている。このような運用メンテナンス手順が取れることで、統合によるリスク集中の課題にも対処できている。

 また、バックアップなど日常の運用管理の手順も統合で1つに標準化され、簡素化できたとしている。監査に関しても、システムごとに対応するのではなく、X6-2に対し一度だけ実施すればよいので、この手間の削減は大きなメリットとなっている。

 運用管理の手順が標準化できたことで、人為的なミスの発生も減っている。「ITシステムの運用は外部のパートナーにアウトソースしていますが、そことやりとりする社内体制もシンプルになり、安定稼働に貢献しています」(大西氏)

 さらにオムニチャネル戦略、働き方改革などにおける新しい施策を始める際にITインフラを用意する手間が圧倒的に減り、迅速性も増したという。

 「新しい施策のITインフラを考える際、データベースのことを考える必要がなくなりました。以前なら何か新しい施策を行おうとすれば、そのためのサーバを用意し、データベースライセンスの追加も考えなければなりませんでした。今はスキーマを切り出すだけで、すぐにデータベース環境を用意できます」(大西氏)

組織を横断したデータ活用も容易に。さらなる統合、活用も

 X6-2の性能、容量にはまだまだ余裕があり、今後もさらにデータベース統合が可能な状況だ。また、販売系システムに加え、製造系システムもデータベースが統合されたことでデータが1つのX6-2に集まっており、組織を横断したデータ活用も容易になっているという。

 だが、このX6-2も数年後には更新時期を迎える。その際には、あらためてパブリッククラウドの採用も検討する必要があるという。ワコールには極めて厳重に管理しなければならない顧客データなどもあり、そうしたものを含め「どのようにデータを管理すればよいか」は十分に考慮しなければならない。

 「必ずしも全てをパブリッククラウドに移行するとはかぎりません。ワコールでは、徐々にクラウド化していくことになると思われます。場合によっては、『Oracle Cloud at Customer』のようなものを採用すべき、との判断も出るかもしれません」(大西氏)

 企業ごとに、最適なITインフラの姿は異なる。ワコールにとっての最適なITインフラ環境を提供するためにも、Oracleには海外の先行事例などの情報も踏まえ、今後もさまざまな情報提供が求められている。

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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2020年3月15日

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