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» 2020年03月26日 05時00分 公開

「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(75):あなたの能力も態度も信用できません (3/4)

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]

続けるべきだったか、諦めるべきだったか

 判決文の続きを見ていこう。文が長いので、少しずつ区切りながら説明する。

費用追加の妥当性

 まずは「プロジェクト実施中の費用追加」について。

東京地方裁判所 平成30年10月12日判決から(つづき)

ベンダーは7回に及ぶ食品会社からのヒアリングを通じて、食品会社の現行システムの抱える課題を十分に把握した上で、これらの課題を全面的に解決するシステムとして、新販売管理システム、新生産管理システムの開発を食品会社に提案したものであったから、これらのシステムは、食品会社の要求する仕様ないし機能をもともと網羅的に備えたものであって、後日、食品会社からの仕様変更や機能追加の要求があり得るとしても、その程度は比較的軽微なものにとどまり、大幅な追加発注がないこと、従って、これに伴う大幅な開発費用の追加負担もほとんどないものとして食品会社に提案されたと考えられる。

 裁判所が注目したのは、プロジェクトの開始当初に実施された要件定義が十分であったかだ。

 不十分だったなら、後々必要な機能が判明して費用を追加することも分かる。しかし、7回もヒアリングして十分に検討したはずの要件なのにさらに追加費用が必要というのは、むしろベンダーのプロジェクト管理の稚拙さが影響しているのではないか、と裁判所は述べている。

検収後の不具合

 裁判所は続いて、「完成したはずの販売管理システムに発生している不具合」を検討した。

 不具合の発生自体もだが、それに対するベンダーの対応状況がどうであったか。もしも対応しきれていなかったらユーザーが契約を解除する理由となり得るが、果たしてどのような状態であったのか。

東京地方裁判所 平成30年10月12日判決から(つづき)

検収を終えたはずの新販売管理システムの成果物については、決して少なくないシステム障害が発見され、前回の定例会議で報告された不具合が次回の定例会議でも未対応のまま、別のシステム障害が新たに発見され、未対応の障害件数が累積していく状況にあった。さらに、このような状況下では当初の開発スケジュールを維持することも困難となり、本件基本契約の締結日から1年程度で、ベンダー自身においても、新販売システムの立ち上げ状況から判断して新生産管理システムの立ち上げ時期を見直す必要があることを余儀なくされていた。

 不具合の数とその対応の遅さにより、時が進むにつれ状況が悪化している状況を見て、裁判所はユーザーの判断を支持する考えを示した。

 さらに、ベンダーによる追加契約の見積もりも、内容が曖昧であり、必ずしも両者がよく検討を重ねた上で結んだものではないことなどを述べた後、以下のように結論づけた。

東京地方裁判所 平成30年10月12日判決から(つづき)

本件基本契約、これに基づく各個別契約の各締結に至るまでの間におけるベンダーと食品会社との交渉状況、ベンダーによる各個別契約の履行状況、食品会社により本件解除がされるに至った経緯(けいい)などに鑑みると、本件解除がされた当時、ベンダーによる(中略)債務の本旨に従った履行はもはや期待し得ない状況にあり、ベンダーと食品会社との信頼関係は既に破壊されていたというべきであるから、食品会社による本件解除は、かかる信頼関係の破壊を解除原因とするものとして有効なものであって(後略)

 ベンダー完全敗訴である。

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