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» 2020年05月15日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(158):CIOが今、デジタルトランスフォーメーションのパイオニアになるには

CIOは、自社のデジタルトランスフォーメーションをリードし得る有利な立場にある。だが、戦略を立ててこれを的確に具体化し、影響力を行使しなければ期待に応えられない。では、何をすればいいのか。

[Lisa Bigelow, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 スティーブ・ジョブズ氏、サラ・ブレークリー氏、マーク・ザッカーバーグ氏の共通点は何か。この人たちは産業全体を生み出す、あるいは一変させる発明によって企業をけん引し、成長させた。だが、独力で成し遂げたわけではない。3氏と同様にディスラプション(創造的破壊)に熱意を注ぐリーダーが支えていた。扱う商品が「iPhone」であれ何であれ、各氏が率いる経営委員会全体にこうした精神がみなぎっていた。

 CEOが業界の変革をリードしようと意欲を燃やすのは、驚きではない。「2018 CEO Survey」によると、CEO(最高経営責任者)の78%は、自社が業界のパイオニアであるか、ファストフォロワー(早期追随者)であると考えている。

 だが、ディスラプションを実現するには、こうしたCEOの周囲にパイオニアのマインドセットに共鳴する人々が必要だ。「デジタルトランスフォーメーションは必然」という考え方の下にリーダーたちが結集することで、CIO(最高情報責任者)が経営委員会にエキサイティングな新しい影響を与えるまたとないチャンスも生まれる。

 「CIOは現在、おのずと有利な立場に立てる。『デジタル』があらゆるトランスフォーメーションの要となるからだ」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターを務めるダニエル・サンチェス・レイナ(Daniel Sanchez Reina)氏は指摘する。

 「だが、有利な立場には大きな責任が伴う。CEOは、CIOがトランスフォーメーションの最前線の開拓において、主要な役割を果たすことを期待するからだ」(サンチェス・レイナ氏)

 CIOは、デジタルトランスフォーメーションをリードするための技術的な洞察を持っているが、策定された戦略を的確に具体化し、影響力を発揮することが求められる。“言うは易し行うは難し”だが、このためにCIOは戦術的な工夫を凝らした実践を積むことで、先進的なアイデアを打ち出し、これに磨きをかけるとともに、おのずと経営委員会、そして将来のビジネスの中心を担える。

願望を形にすることから始める

 パイオニアは常識に挑戦する。自社を競合他社から差別化し、業界に変革を起こすアイデアを首尾よく実行する。こうした創造的破壊をもたらす可能性があるアイデアを生み出す1つの方法は、願望を言葉にすることだ。

 「直属の部下に尋ねたり、チームメンバーに対してサンプル調査をしたりし、『自社やIT部門、自分の仕事にとってのリスクがゼロだとしたら実行したいこと』という条件で、突拍子もないアイデアを出させるとよい。ただしそのアイデアは、自社を戦略的目標の達成や、競争優位の獲得に導くものでなければならない」と、サンチェス・レイナ氏はアドバイスする。

 こうしたアイデアを検討するセッションでは、どんなアイデアもけなしてはならない。代わりに、どのように手を加えればアイデアをより現実的なものにできるかを、チームとして徹底的に話し合うようにする。アイデアを穏当なものにすることで、元のアイデアのディスラプティブな(創造的破壊をもたらす)インパクトを見失わないようにすることがポイントだ。

 「アイデアを着地させる過程では、一定レベルのリスクを想定しておく必要がある。さもないと、個々のアイデアのゼロリスクバージョンができてしまいがちだ。そうなれば、それはもはやディスラプティブではなくなっているはずだ」(サンチェス・レイナ氏)

根本的な“真実”を問い直す

 ディスラプティブなアイデアの創出に向け、あえて悲観的なディストピア思考(や計画)から出発する手法も、興味深い結果につながる。

 こうしたセッションでは、顧客や商品、社内の文化、市場についての“根本的な真実”を問い直す。例えば、「顧客はわれわれの商品やサービスを必要としている」という認識について、社内で異を唱える人はほとんどいないだろう。だが、自社の商品が必要とされない世界を想像することが、既存の枠にとらわれない考え方のきっかけになる。

 まず、直属の部下やチームメンバーに、根本的な真実と反対の状況を説明させる。続いて、そのディストピア的状況の解決策を見つけさせる。

 「人々が通常とは異なるシナリオで考えるように導くことで、生まれるアイデアも違ってくる」(サンチェス・レイナ氏)

CxOを巻き込め

 ブレーンストーミングをして現状打破に挑むことで、デジタルトランスフォーメーションへの好スタートが切れる。だが、社内の文化は、新しい考え方を受け入れなければ変わらないだろう。とはいえ、組織文化の変革は、新しいプロセスや技術を導入するだけでは実現しない。CIOが経営委員会のメンバーと密接に連携することが、革新的なマインドセットを全社的に育成するのに役立つ。

 「CIOがCEOに直属しているか、他のCxO(最高責任者レベルの役員)に直属しているかにかかわらず、CEOは新しい行動が全社に定着することを期待する」と、サンチェス・レイナ氏は語る。

 「GartnerがCIOや他のCxOと行ってきたコミュニケーションから、『ツールやオペレーションモデルを変えるだけでは組織文化は変わらない』という認識が高まっていることが分かる」(サンチェス・レイナ氏)

次のステップは?

 組織文化の変革はトップダウンで始まり、CxOのリーダーシップによって全社のステークホルダーに浸透する。CIOは、デジタルトランスフォーメーションの専門家という自然な役割を受け入れ、経営委員会の他のメンバーが自らが統括する組織のために何を必要としているかに耳を傾け、自社のビジネス全体を変革するデジタルソリューションを構築すべきだ。

 さらに、CIOはCxOに対し、チームメンバーと「目指す組織文化的な特徴を備えるためには、どのような行動、慣習、考え方が変わらなければならないか」を話し合うよう呼び掛けるとよい。例えば、官僚主義をなくすことが目標なら、「購買プロセスにおける承認者を6人から3人に減らす」といったことがその達成指標になる。

 「CIOはCxOとともに、自社に欠けていると考える組織文化的特徴――例えば、説明責任、リスクを取ること、コラボレーション、迅速な意思決定などを洗い出し、今後を見据えたときにそれらがなぜ重要なのかを話し合っておく必要もある」(サンチェス・レイナ氏)

 戦略を策定し、こうした課題に対処して達成すべき成果を明確に定めたロードマップを作成したら、チェンジエージェントの役割を引き受ける。チームメンバーと定期的に(15日ごとになど)顔を合わせて、全員の進捗(しんちょく)評価をサポートするとともに、組織文化的変革を後押しし、加速させる必要がある。

出典:Be a Digital Transformation Pioneer(Smarter with Gartner)

※この記事の原文は2020年1月に公開されており、その時点での世界の企業の状況を前提としています。

筆者 Lisa Bigelow

Freelance Thought Leadership Writer


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