CIOが2020年度に取り組むべき、10の目標例Gartner Insights Pickup(159)

CIOは、2020年度に自身の仕事力を高めるため、どのような目標を立てるべきか。10の目標例を紹介する。

» 2020年05月22日 05時00分 公開
[Kasey Panetta,Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 新年度の始まりを機に、多くの人が「週2回、運動する」「もっと本を読む」「100種類の果物と野菜を食べる」などの目標を立てる。

 では、CIO(最高情報責任者)は何を目指すべきか。職業人として取り組むべき目標は、個人としての目標とそれほど変わらない。無駄(時間とリソースの両方)を減らす方法を見つけ、新しい分野のスキルを磨くといった具合だ。

 「2020年度に、CIOはこれまでのやり方に安住することなく、リーダーシップや文化の育成、対人関係の能力を伸ばし、パフォーマンスを高めなければならない」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントの、マーク・ラスキーノ(Mark Raskino)氏は語る。

 Gartnerは、CIOが新年度も成長を続ける助けになるように、10の目標例をまとめた。取り組む目標を2つか3つ選び、デジタルデクステリティ(ビジネス成果を高めるためにデジタルを利用する目標および能力)を高め、個人能力に磨きをかけるのに役立ててもらいたい。

 この10の目標例は、次の3つのグループ(と1つの継続的な目標)に分類される。

  • クリーンアップ(整理する):悪い習慣や行動の一掃を進める
  • パワーアップ(強化する):自分とチームの能力向上に取り組む
  • スキルアップする:新しいスキルを身につけ、新しい物事を学ぶ

 「CIOは新しいグローバルな視点を持ち、新しい声にオープンに耳を傾ける必要がある。自らが置かれた複雑で絶えず変化する状況の解決策を、創造的に見つけ出さなければならない」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのマリー・マザーリオ(Mary Mesaglio)氏は語る。

目標その1:重荷を取り除く

 CIOとそのチームは、より少ないリソースでより多くの成果を挙げるよう求められている。無駄をなくして、重要なことに取り組むゆとりや余力を確保することが有益(かつ必要)だ。その1つの方法は、物理的な変更だ。例えば、古い本や手工芸品がぎっしり並んだ棚を取り除くといったことだ。また、たまった残務を調査し、重要ではないものを省略するといったプロセスベースの方法もある。

目標その2:目的を明確にする

 準備が整っているかどうかにかかわらず、自社の社会的目的を明確にすべきときだ。大企業への信頼は低く、人々は企業に懐疑的な目を向けている。技術が今、企業の目的とミッションに及ぼす影響を考えると、CIOは、自社の目的に関する対話を提起できる立場にある。自社のミッションをデジタル時代に適合させるとともに、例えばプラスチック汚染や公衆衛生など、組織が影響を与えられる大きな社会的問題を追及し、テクノロジーによっていかに違いを生み出せるかを考えるべきだ。

目標その3:会議を立て直す

 たいていの会議は前向きな意図で行われるが、実態としては、非生産的な場合や無駄な場合が多く、改善が必要とされている。幾つかのシンプルな変更で効果はてきめんだ。例えば、会議の最初にではなく最後に、議事録作成者を決める。これで誰もが集中して会議に参加せざるを得なくなる。また、会議時間に基づいて、出席のために全出席者が投じた時間的コストを参加者全員分集計して提示し、会議が投資価格に見合うものだったかを投票するという手もある。

目標その4:安易に謝らない

 CIOは、全面的に自分に過失があるわけではない(あるいは、全く過失がない)事柄についても、謝ることがよくある。このことを考慮し、ITを愛する“オタク”であることや、他人が引き起こしたビジネス技術プロジェクトの失敗などについては、謝らないようにする。リソースの調達は、経営チーム全体の責任であることを念頭に置く。

目標その5:アナログで捉える

 最新技術を駆使してITの意思決定をするのは、当然に思えるかもしれない。だが、ときにはアナログの方が創造的思考に適したアプローチになる。実際、コンピュータ画面はサイズが小さく、頻繁に表示されるポップアップウィンドウが邪魔になる。代わりに、オフィスの壁全体を使って新年度の計画を描いたり、LEGOを使って将来の組織を設計したりもできる。ダイバーやワーカー、スーパーヒーローなどのミニフィギュアを社内の誰かに見立てて使うのもよいだろう。

目標その6:デジタル化を広げる

 自社のデジタルトランスフォーメーションを再定義する。目標が狭く定義されていると、成果や洞察が限定されてしまう。成功している巨大デジタル企業の新しい経営テクニックを1つ取り入れ、2020年度のプロジェクトポートフォリオに最先端の取り組みを加えてみてはいかがだろうか。

目標その7:多様性を確保する

 必要なIT人材が世界的に不足しているため、新しい人材の採用方法を多様化する必要がある。少なくとも1つの教育機関か、ITトレーニングプログラムと関係を構築すべきだ。こうしたプログラムに投資し、将来に向けてスキルを学ぶ人をサポートして人材パイプライン作りにつなげる。

目標その8:“中国通”になる

 中国が主要なグローバルイノベーターとして大きな存在感を発揮しつつあるため、企業は、中国が自社のビジネスにもたらす影響に備えなければならない。中国通になる(中国の文化と、古代から現代までの歴史に精通する)方法は多々ある。標準中国語を学ぶ、中国現代史の本を読む、中国の巨大デジタル企業を視察するなど、好きな方法に取り組むとよい。

目標その9:多くのメンターから知見を得る

 メンタリングは、新しいスキルを身につける効果的で労力の少ない方法だ。これまでの枠を超えたメンタリングの機会もある。大学の授業に参加することや、新入社員のシャドーイング(付いて回り、業務を見学すること)に1日を費やすことを考えてみよう。どちらの場合も、新しいスキルと新しい視点が得られるだろう。

目標その10:新たなテクノロジーを試す

 Gartnerは、CIOの10の目標例をまとめた記事を毎年発表しており、この目標例は毎年含まれている。CIOは、日々の業務プロセスと管理に追われて手いっぱいになりがちだからだ。だが、企業はイノベーションや新しいトレンドの情報に関して、CIOを頼りにしている。これらの一部は他の人に任せることもできるが、CIOはデモを見たり、新しい技術を実際に試したりする時間を作らなければならない。また、新しい技術を自部門で購入し、チームがそれらを試せるようにするための小規模な予算を守る必要もある。

出典:10 CIO Resolutions for 2020(Smarter with Gartner)

筆者 Kasey Panetta

Brand Content Manager at Gartner


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