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» 2020年06月02日 05時00分 公開

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(75):Chromium版「Microsoft Edge」への移行に備えよう(その3)――グループポリシーによる自動配布

本連載第66回、第67回では、Chromiumベースの新しい「Microsoft Edge」を企業内クライアントに展開するためには、「Microsoft Endpoint Configuration Manager Current Branch」、または「Microsoft Intune」、もしくは「その他のソフトウェア配布ツール」が必要と説明しました。本稿では、Windows ServerおよびWindowsの標準機能だけでChromiumベースの新しいMicrosoft Edgeを企業内クライアントに自動配布する方法について解説します。

[山市良,テクニカルライター]

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「企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内

Microsoft Edge(Chromiumベース)のスタンドアロンインストーラー

 本連載の第66回、第67回では、2020年1月に安定版(Stable)バージョンが一般公開されたChromiumベースの新しい「Microsoft Edge」(以下、Microsoft Edge《Chromiumベース》)が、「Windows 10」のHome/Proエディション向けにWindows Updateでロールアウトされ、Windows 10標準の従来のMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)を置き換えられていくこと、企業向けにはWindows UpdateやWindows Server Update Services(WSUS)による自動配布は現状行われないことを説明しました。

 そして、企業内でクライアントに配布するためには、現時点では「Microsoft Endpoint Configuration Manager Current Branch」または「Microsoft Intune」または「その他のソフトウェア配布ツール」が必要と説明しました。

 今回は、「その他のソフトウェア配布ツール」としてActive Directoryの「グループポリシー」が利用できることを説明します。

 以下のビジネス向けのMicrosoft Edge(Chromiumベース)のWindows版ダウンロードファイルの形式は、Windowsインストーラーパッケージ(拡張子「.msi」、以下、MSIパッケージ)です(画面1)。

画面1 画面1 ビジネス向けMicrosoft Edgeのダウンロード。Windows向けはMSIパッケージ形式。グループポリシーの管理テンプレート(msedge.admx、msedgeupdate.admx、ja-jp\msedge.adml、ja-jp\msedgeupdate.admx)もここからダウンロードできる

 MSIパッケージには自動インストール方法が定義済みになっており、「Windows 2000 Server」で初めて登場したActive Directoryから利用できる、グループポリシーの「ソフトウェアインストール」機能を利用して、自動配布(割り当て)またはユーザー指示によるネットワークインストール(公開)の形で簡単に展開することができます。

 この方法を用いれば、Windows 10だけでなく、Microsoft Edge(Chromiumベース)がサポートする「拡張セキュリティ更新プログラム」(Extended Security Updates、ESU)で継続利用中の「Windows 7」や「Windows Server 2008 R2」、それ以降のWindowsクライアントおよびWindows Serverに対してMicrosoft Edge(Chromiumベース)を自動展開することが可能です。

 安定版の最新バージョン、最新ビルドをダウンロードして展開した後は、Microsoft Edge(Chromiumベース)とともにインストールされる「Microsoft Edge Update」コンポーネントによって自動的に最新バージョンに更新されます。なお、Windows 7およびWindows Server 2008 R2のサポートについては、同じくChromiumベースの「Google Chrome」と同様、Windows 7のサポート終了から18カ月後の「2021年7月15日まで」となることに注意してください。

ステップ1:GPOによる自動展開のための対象化

 Active Directoryドメインを展開済みであれば、ドメインメンバーのコンピュータに簡単な方法でMSIパッケージを自動展開することができます。それには、展開用のグループポリシーオブジェクト(GPO)を作成し、配布対象のドメインユーザーやコンピュータを含む「組織単位(OU)」や「グループ(グローバルセキュリティグループ)」にリンクします。

 Microsoft Edge(Chromiumベース)の対象化の方法はさまざまですが、ここではドメインのレベルにGPO「DeployNewEdgeX64GPO」を作成し、セキュリティフィルターを利用して「NewEdgeX64Target」グループにWindows用の64bit版MSIパッケージ「MicrosoftEdgeEnterpriseX64.msi」を自動展開または公開してみます(画面2)。

画面2 画面2 配布対象のドメインユーザーやコンピュータをグループ化する

 なお、セキュリティフィルターから既定の「Authenticated Users」を削除して、ユーザーまたはユーザーを含むグループを追加する場合は、GPOの「委任」タブで「Domain Computers」に対する「読み取り」アクセス許可を追加してください(画面3)。

画面3 画面3 ドメインのレベルにGPOを作成し、セキュリティフィルターから既定の「Authenticated Users」を削除して、特定のグループを指定する。なお、グループにユーザーが含まれる場合は「委任」タブで「Domain Computers」に対する「読み取り」アクセス許可を追加すること

 これは、2016年6月に行われたグループポリシーのセキュリティ強化のための仕様変更に対応するためです。詳しくは、以下のサポート情報を参照してください。

ステップ2:「ソフトウェアインストール」の「割り当て」または「公開」

 グループポリシーのGPOにある「コンピューターの構成\ポリシー\ソフトウェアの設定\ソフトウェアインストール」や「ユーザーの構成\ポリシー\ソフトウェアの設定\ソフトウェアインストール」では、共有フォルダ上のパスにあるMSIパッケージを登録するだけで簡単に、コンピュータに「割り当て」、またはユーザーに「割り当て」「公開」することができます。

 「割り当て」は自動インストールによる展開、「公開」はユーザー指示によるネットワークインストールであり、後者は「コントロールパネル」の「プログラムと機能」からユーザー自身がインストールを開始することができ、その後のインストールは対話なしで自動的に完了します。

 コンピュータに自動展開するには、ドメインメンバーが読み取りアクセス権限を持つ共有フォルダ上のパス(\\サーバ名\共有名\……)にMicrosoft Edge(Chromiumベース)のMSIパッケージをコピーし、「コンピューターの構成\ポリシー\ソフトウェアの設定\ソフトウェアインストール」にMSIパッケージを追加して「割り当て」を選択します(画面4)。

画面4 画面4 「コンピューターの構成\ポリシー\ソフトウェアの設定\ソフトウェアインストール」にMicrosoft Edge(Chromiumベース)のMSIパッケージの共有パスを追加して「割り当て」を選択する

 また、MSIパッケージの「割り当て」には、同じGPO(別のGPOでも可)の以下のポリシーを有効化します(画面5)。このポリシー設定は、Windows Vista以降で変更されたグループポリシーの処理の仕様変更が、MSIパッケージのインストールを失敗させることがあり、それを回避するために必要になります。

  • コンピューターの構成\ポリシー\管理用テンプレート\システム\グループ ポリシー\スタートアップ ポリシー処理時の待機時間を指定する:有効
  • 待機する時間(秒):120(待機時間は実際の展開状況に応じて調整)

画面5 画面5 MSIパッケージの「割り当て」の失敗を回避するために、「スタートアップ ポリシー処理時の待機時間を指定する」ポリシーを有効化する

 MSIパッケージをユーザーに「公開」し、ユーザー指示によりインストールを開始させるには、「ユーザーの構成\ポリシー\ソフトウェアの設定\ソフトウェアインストール」にMicrosoft Edge(Chromiumベース)のMSIパッケージを追加し、「公開」を選択します(画面6)。

画面6 画面6 MSIパッケージをユーザーに「公開」する

 「公開」の場合は、「スタートアップ ポリシー処理時の待機時間を指定する」ポリシーの有効化や待機時間の調整は不要です。なお、「割り当て」と「公開」のどちらも、Windowsにサインインするドメインユーザーは、ローカル管理者の権限(ローカルのビルトインAdministratorsのメンバー)が必要になります。

自動展開と公開のユーザーエクスペリエンス

 コンピュータに「割り当て」を行った場合、「Gpupdate」コマンド実行時あるいはポリシー適用時のイベントログ(「GroupPolicy(Microsoft-Windows-GroupPolicy)」のイベントID「1112」)に、以下のようなメッセージが表示されることがありますが、再起動するとMicrosoft Edge(Chromiumベース)が自動インストールされます。

システムのスタートアップまたはユーザーのログオン前に変更を処理する必要があったため、グループポリシーのクライアント拡張機能Software Installationで1つまたは複数の設定を適用できませんでした。次のスタートアップまたはユーザーの次回のログオンの前には、グループポリシーの処理が完了するまで待機します。この結果、スタートアップおよび起動のパフォーマンスが遅くなる場合があります。

 このメッセージはMicrosoft Edge(Chromiumベース)に限らず、MSIパッケージの「割り当て」時の正常な挙動です。再起動後も同じメッセージが確認された場合は、「スタートアップ ポリシー処理時の待機時間を指定する」ポリシーの待機時間を長めに調整するとよいようです(画面7)。

画面7 画面7 Gpupdateコマンド実行時、あるいは自動的なポリシー適用時にコンソールやイベントログに出力されるメッセージ。通常、再起動すると解消する

 Windows 10には標準でMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)が組み込まれていますが、Microsoft Edge(Chromiumベース)が展開されると、これに置き換えられ、デスクトップやタスクバーのアイコンも変更されます。また、初回起動時に、Microsoft Edge(EdgeHTMLベース)からMicrosoft Edge(Chromiumベース)に移行したことが視覚的に示されます(画面8)。

画面8 画面8 Windows 10にMicrosoft Edge(Chromiumベース)を展開すると、従来のMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)が置き換わり、初回起動時に移行されたことが示される

 「Windows 8.1」以前やWindows ServerにMicrosoft Edge(Chromiumベース)を展開した場合は、新しいブラウザとして追加されます(画面9)。

画面9 画面8 Windows 8.1に自動展開されたMicrosoft Edge(Chromiumベース)の初回起動時の表示

 Microsoft Edge(Chromiumベース)をユーザーに「公開」した場合は、コントロールパネルの「プログラムと機能」(Appwiz.cpl)から「ネットワークからプログラムをインストールする」を開くと、利用可能なプログラムとして「Microsoft Edge」が表示されるので、ユーザー自身で選択して「インストール」をクリックします。インストールは自動化されており、ユーザーはインストールの開始を指示するだけで、インストーラーと対話(同意やオプションの選択など)する必要はありません(画面10)。

画面10 画面10 Microsoft Edge(Chromiumベース)をユーザーに「公開」した場合、コントロールパネルからインストールを開始できる

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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