デジタルイノベーションを実現するエンタープライズアーキテクチャGartner Insights Pickup(167)

エンタープライズアーキテクチャは、デジタルイノベーションを導くことができる。エンタープライズアーキテクトや技術イノベーションのリーダーは今後、コラボレーションと人工知能(AI)に力を入れる必要がある。

» 2020年07月17日 05時00分 公開
[Meghan Rimol, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 Gartnerは2011年に、グローバル企業の大部分は10年以内にエンタープライズアーキテクチャ(EA)を、ビジネスプランニングに不可欠な確固たる枠組みとして採用するだろうと予想した。2020年の今、こうした支援機能を果たしてきたEAは、デジタル化とイノベーションを支えるインテリジェント情報アーキテクチャの設計基盤として、高度に戦略的な機能を担うようになっている。先進テクノロジーによるビジネスディスラプション(創造的破壊)が起こる中、EAは急速なペースで進化を続けている。

 「技術とソリューションのアーキテクチャにフォーカスした従来のEAのアプローチは、今日の企業ニーズを満たすにはもはや不十分だ」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのソール・ブランド(Saul Brand)氏は指摘する。

 「現在のエンタープライズアーキテクトは、企業がデータやアナリティクス、人工知能(AI)を利用して、デジタルビジネス投資を計画、追跡、管理できるよう支援する方法を見いだし、ビジネスモデルやオペレーションモデルのデザインにインテリジェンスを組み込むことに責任を負っている」(ブランド氏)

 ブランド氏が、EAリーダーが今後、先進テクノロジーを取り入れ、ビジネス価値を実証する4つの方法を解説する。

インテリジェンスを組み込んでデザイン

 これまで、EAは企業において、戦略を実行する活動を導いてきた。だが、EAは戦略のデザインに重点がシフトしている。2023年までに、EAプラクティスではビジネスモデルやオペレーションモデルのデザインにインテリジェンスを組み込み、戦略の策定と実行をサポートすることが、全体の60%を占める見通しだ。

 エンタープライズアーキテクトは、デザイン思考のアプローチで社内経営コンサルタントのように行動するとよい。先進テクノロジーを追いかけ、評価し、ビジネスモデルにマッピングし、先進テクノロジーによってどのようにビジネス機会を作れるかを見いだすようにする。戦略的な技術統合を通じて、企業に価値をもたらすことが重要だ。

情報アーキテクチャに再フォーカス

 データやアナリティクス、機械学習、AIを組み合わせて活用する試みが活発化し、この取り組みによって企業の中核ビジネスモデルの再構築が急速に進んでいる。デジタルビジネスの展開に対応するには、情報アーキテクチャの重要性を踏まえ、その位置付けを高めたEAが必要になる。2023年までにEAプログラムの65%では、情報アーキテクチャが再フォーカスされ、デジタル化の全取り組みの中心に据えられる見通しだ。

 EAによって適応的な情報ドリブンのビジネスモデルを実現するには、幅広い情報ソースを効果的に理解し、モデル化する力が重要になる。全てのビジネス活動を情報アーキテクチャにリンクし、ビジネスリーダーが取り組む競争力と収益力の向上を支援する必要がある。

 ビジネスエコシステムとその力学、および情報の作成と共有を明確に図式化したモデルを作成しなければならない。IT部門のさまざまな分野の専門家と協力し、基盤となる技術プラットフォームが、多様な形式の情報の管理や操作に対応できるようにする必要もある。

デジタルイノベーションを導く

 エンタープライズアーキテクトは、社内経営コンサルタントの役割への転換を進めると、自社のイノベーションリーダーというユニークな立場に身を置くことになる。エンタープライズアーキテクトは、EAリーダーとしてビジネスとIT機能を理解しており、サイロ化した部門間のコミュニケーションやコラボレーションを改善できる。2023年までに、企業の60%は、ビジネスの取り組みをデジタルイノベーションにつなげる成果をエンタープライズアーキテクトの働きを生かして実現するようになる見通しだ。

 また、エンタープライズアーキテクトはイノベーションとオペレーションを橋渡しする。イノベーションを促進しオペレーション化するには、イノベーションを生み出す試みをオペレーションモデルに統合する作業の計画、設計、オーケストレーションを支援する。さらに、オペレーションモデルの実践の結果をイノベーションプロセスにフィードバックする。

 エンタープライズアーキテクトは、さまざまなステークホルダーの視点のバランスを取る方法も見いださなければならない。全ての人に自社が目指すビジネス成果の達成に尽力してもらうためだ。そうすることで、EAはイノベーションの中核となり、主要サービスを提供し、イノベーションの成功を支える。

インテリジェントツールを活用

 EAプラクティスの進化とともに、ツールセットも進化していく。2023年までに、EAツールの60%がインテリジェント化される見通しだ。今後、EAツールは顧客エクスペリエンスや商品設計、機械学習、IoTなどをサポートするだろう。

 EAツールキットは、企業が使用する広範なツールエコシステムの一部になる。例えば、ITサービス管理(ITSM)、ポートフォリオおよび商品管理、戦略およびプランニングツールにリンクする可能性がある。こうしたツールやモデル、情報の複雑なエコシステムでは、より深い洞察の探索、発見、提供に役立つAIの重要性が高まる。

出典:Enterprise Architecture Enables Digital Innovation(Smarter with Gartner)

※この記事の原文は2020年1月に公開されており、その時点での世界の企業の状況を前提としています。

筆者 Meghan Rimol

Senior Public Relations Specialist


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