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» 2020年07月29日 05時00分 公開

厚労省のアプリに代替案はあるのか:キャリアのGPSを使う? アプリをプリインストール? QRコードにキャッシュレス?――プライバシーフリーク・カフェ(PFC)リモート大作戦!02 #イベントレポート #完全版 (4/4)

[鈴木正朝, 高木浩光, 板倉陽一郎, 山本一郎,@IT]
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QRコードを使った独自アプリ

山本 他のアプリも出てきました。大阪でもQRコードを使ってトレーシングしてメールで通知を送るシステムを出しました。それをどう使うのか? われわれは本当にこれを使うのかというのは論点として出てくると思います。使いますか?

鈴木 夜の街で、その店に限定して使えるんでしょ?

山本 原則それがメインだと言っています。

鈴木 どうしても夜の街に行きたいという人がいますよね。ホストに会いたいとか、ホステスに会いたいとか。どうしても欲望を制御できないなら、せめて自衛として、指定アプリをスマホに入れて、その店の二次元バーコードを登録するというルールだけは順守いただくようにしたい。

 「今日もセーフだった」と毎日確認して、ある日、「げ、今日はアウトだった」となったら、速攻で自粛生活に入る。行動を変容して他人に移さないようにしていただかないと困りますよね。

 人は自由にも愚かにも生きてもいい。家族以外の国家権力と他人は基本的に彼や彼女に寛容であるべきだと思うのです。ただし、他人の生命、身体、健康、財産を侵害することは許されません。

山本 飲食店系とかカジュアルなダンスクラブとかナイトエコノミー系とかから、回避用の仕組みとして、お客さまがどのレベルでやって来るのか、どこに行ったのかをトレースできる仕組みが欲しい、という要望が出ています。これに関して大阪のQRコードを使うのかはまさに議論しているところですが。

板倉 昔から旅館業法では、宿泊者名簿を作成することになっています。われわれもホテルに宿泊するときに氏名住所を書くじゃないですか(※)。宿泊者名簿の規定の趣旨には、旅館で食中毒や伝染病の発生があった場合に後で連絡できるようにするということが含まれています。

 大阪のQRコードを用いたコンタクトトレーシングは、旅館の宿泊者名簿と同じものを、システムを使って構築するという意義があります。クラスターが発生したときに連絡できるようにということで導入しているわけです。でも大阪のアプリは、クラスターが発生したからといって、お店に知らせるとは限りませんとなっています。公式のQ&Aに記載されているところです。お店からすると、自分のところでQRコードを貼って協力しているのに、クラスター発生を知らせてくれないのか、ということになりますが、必ずお店に知らせるとは限りませんとなっています。それは運用としては正しいかなと思います。

※ 「営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があったときは、これを提出しなければならない。」(6条1項)、「宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない。」(同2項)

山本 あまり高額ではないお店とか、自分が出入りしていることを知られたくないタイプのお店とかは、お客さまがあまり使わなくて追えなくなる。結局、感染者を追いかけてクラスターを特定したいと思っても、そこがブラックボックスになってしまう、という問題が起きますね。

高木 メールアドレスを入れることになりますよね。大阪府にメールアドレスを登録するんです。Gmailで専用のアドレスを新たに作ればいいとエンジニアは考えますが、一般の人にしてみればアドレスを作るのはハードルが高い。

 これも技術的には工夫の余地があって、QRコードで読み込んだ店のIDをローカルにスマホに記憶しておけばいいのですよ。自分が該当すれば画面に出るように作っておけば、メールアドレスを登録する必要もない。

 なぜそうしないかというと、たぶん簡単に作れるからですかね。これ、要するに単なるメールマガジンの購読と同じなので既にある仕組みで作れます。分かっていて使うのであればいいと思います。東京都も始めたということで、普及すればいいのではと思います。

鈴木 開発費が安くてパッと社会実装できるものなら、やれることは全部やってみたらいいと思います。

大阪のアプリはお得やで

山本 大阪ではキャッシュレス機能を入れるとかいう話もありますが。

鈴木 ポイントが付くんですか???

高木 意味が分からないんですが。

板倉 やはり付けてきたなあ。「週刊金曜日」で大阪のアプリどうですかと聞かれたので、報道されている内容でやる限りではそんな問題はないですよ、と答えたのですが。

高木 台無しですよね。何が台無しかというと、目的が明確で感染症対策専用だから信用して入れようといっているのに、いろんな機能を付けてくると何に流用するかが分からなくなっちゃいますよね。東京都はどうするんですかね。

鈴木 本人同意があれば何をやってもいいという発想があって、利用目的という軸を見失っちゃうんですよね。

山本 チケッティングサービスでトレースできるようにしましょうみたいな話も今出始めています。無料で登録できるところにそのイベントにいたという情報が取れるということで、感染症対策もできるのではということがまさに起きています。どのように使うものなのか、何のためにやるのかを国民にどうやって周知してもらうのかについては、もう少し工夫の余地があると思っていますが、どうでしょうか。

高木 私はテレビがどう説明するのかに注目しています。アプリの配布が開始して、インストールが何割いくかという時に、皆さんに伝えないといけないですよね。実態としては朝のワイドショーでしょう。そこが注目ですね。

山本 注目ではありますが、たぶんろくなことは言わないだろうと思いますね。

高木 私は、事実と目的をしっかりと伝え、皆で頑張っていこうと説明しないといけないと思います。

板倉 QRコードのアプリは、ピンポイントで、ある位置情報に該当する場所にこの時間にいた、ということを皆で相互に伝えていれば、何かあったときにも連絡が来て早めに病院に行けるかもしれないという効果があります。こういう割とシンプルな話を伝えてほしいと思います。高木さんが言った通りですね。



 プライバシーフリーク・カフェ リモート大作戦!03は、2020年7月30日公開です。

プライバシーフリーク メンバー

プライバシーフリーク メンバー

鈴木正朝(すずきまさとも)

新潟大学大学院現代社会文化研究科・法学部 教授(情報法)、一般財団法人情報法制研究所理事長、理化学研究所AIP客員主幹研究員

1962年生まれ。修士(法学)、博士(情報学)。一般社団法人次世代基盤政策研究所理事、情報法制学会運営委員・編集委員、法とコンピュータ学会理事のほか、過去に内閣官房パーソナルデータに関する検討会、同政府情報システム刷新会議、経済産業省個人情報保護法ガイドライン作成委員会、厚生労働省社会保障SWG、同ゲノム情報を用いた医療などの実用化推進TF、国土交通省One ID導入に向けた個人データの取扱検討会等の構成員を務める。

個人HP:情報法研究室 Twitter:@suzukimasatomo

高木浩光(たかぎひろみつ)

国立研究開発法人産業技術総合研究所 サイバーフィジカルセキュリティ研究センター 主任研究員、一般財団法人情報法制研究所理事。1967年生まれ。1994年名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。

通商産業省工業技術院電子技術総合研究所を経て、2001年より産業技術総合研究所。2013年7月より内閣官房情報セキュリティセンター(NISC:現 内閣サイバーセキュリティセンター)兼任。コンピュータセキュリティに関する研究に従事する傍ら、関連する法規に研究対象を広げ、近年は、個人情報保護法の制定過程について情報公開制度を活用して分析し、今後の日本のデータ保護法制の在り方を提言している。近著(共著)に『GPS捜査とプライバシー保護』(現代人文社、2018年)など。

山本一郎(やまもといちろう)

一般財団法人情報法制研究所事務局次長、上席研究員

1973年東京生まれ、1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒。2000年、IT技術関連のコンサルティングや知的財産管理、コンテンツの企画、製作を行う「イレギュラーズアンドパートナーズ」を設立。ベンチャービジネスの設立や技術系企業の財務。資金調達など技術動向と金融市場に精通。著書に『ネットビジネスの終わり』『投資情報のカラクリ』など多数。

板倉陽一郎(いたくらよういちろう)

ひかり総合法律事務所弁護士、理化学研究所革新知能統合研究センター社会における人工知能研究グループ客員主管研究員、国立情報学研究所客員教授、一般財団法人情報法制研究所参与

1978年千葉市生まれ。2002年慶應義塾大学総合政策学部卒、2004年京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻修士課程修了、2007年慶應義塾大学法務研究科(法科大学院)修了。2008年弁護士(ひかり総合法律事務所)。2016年4月よりパートナー弁護士。2010年4月より2012年12月まで消費者庁に出向(消費者制度課個人情報保護推進室(現 個人情報保護委員会事務局)政策企画専門官)。2017年4月より理化学研究所客員主管研究員、2018年5月より国立情報学研究所客員教授。主な取扱分野はデータ保護法、IT関連法、知的財産権法など。近共著に本文中でも紹介された『HRテクノロジーで人事が変わる』(労務行政、2018年)の他、『データ戦略と法律』(日経BP、2018年)、『個人情報保護法のしくみ』(商事法務、2017年)など多数。

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