自分は自分 信念を持つエンジニアの将来は「きっと、うまくいく」Go AbekawaのGo Global!〜Kumar Karvepaku編(後)(2/2 ページ)

» 2020年08月18日 05時00分 公開
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「学んで、学んで、そしてまた学ぶ」

阿部川 エンジニアやプログラマーにメッセージをお願いできますか。

カルベパク氏 第一に、「常に、自分は自分である」という思いを大切にしてほしいと思います。ビル・ゲイツになりたい、スティーブ・ジョブズになりたい、と考える方がいらっしゃいますが、どうぞ他人と比較せずに、自分は自分だと思ってほしいのです。「自分はどんな仕事がしたいか、自分が情熱を持てることは何か」と考えてください。そのためには今の仕事を大切にして、自分ができる全てをささげて仕事をしてほしいと思います。

画像 「自分はどんな仕事がしたいか、自分が情熱を持てることは何か」

 第二に「仕事で成功したければチームワークを大切にする」ことです。

 1人でできることは限られています。仕事の最初の段階からチームを意識しましょう。そのためにコミュニケーションのスキルを磨いてください。たとえ母国語ではない環境でも、コミュニケーションさえできればチームで仕事ができます。コミュニケーションの技術というのは、話すだけでなく、上手に聴くことも含まれます。グループディスカッションなどを通じて、話す能力と聴く能力を鍛えることができると思います。リーダーシップの能力も必要です。これはモデレーターを務めることが訓練になります。他の人の意見をどのように引き出し、どのように議論を発展させるか、それを考え、実行することがリーダーシップ力を高めるからです。実際会社の仕事を通じて、これらの訓練ができる機会はたくさんあると思います。

 第三は、「ネットワークを広げる」ことです。私の若いころとは違って、今皆さんは幸運にも多くのソーシャルネットワークのツールに囲まれています。あっという間に世界とつながることができます。コンタクト先を広げて、多くのチャンスに恵まれるようにしてください。そうすれば、夢に描く仕事が手に入るチャンスも多く訪れると思います。

 最後に、これが一番重要かも知れませんが、「学んで学んで、そしてまた学ぶ」です。学ぶことは一生続きます。どんなに学んでもこれで十分ということはありません。学ぶことを止めてしまうとそこで全てが止まってしまいます。特にテクノロジーの分野は変化が早いから、常に最新の技術動向や情報を学ぶようにしてください。そうすればきっと成功に近づくと思います。

阿部川 ありがとうございます。

カルベパク氏 こちらこそ、私の思いや信条を話す機会をいただきありがとうございます。日本にいたときの思い出は私たち家族の人生の中で、一番の思い出です。願わくはコロナ禍の状況が早く収束し、また日本に伺って実際にお会いできることを願っています。

画像 日本が大好きだというカルベパク氏。「日本での思い出が人生で一番の思い出。また日本に行きたい」

インタビューを終えて 〜Go's thinking aloud〜

 インタビューの最後に流ちょうな日本語で、「お疲れさまでした」と言ってくれた。この表現がさらっと出てくるのは、日本の文化をよく理解している証拠だ。

 2013年のインド映画「きっと、うまくいく」(原題: 3 idiots)を見ると、インドの社会や家庭のエンジニアに対する並々ならぬ期待が分かる。工科大学に入り、激しい競争を勝ち抜き、エンジニアになることが人生の幸せの全てだと信じ、家族の期待と運命を一身に引き受け、勉学の嵐の中に身を投じる。学業の不振や自身の将来を悲観して自殺する学生までいる。17年前の映画で、さすがに今はそこまでではないようだが、競争の激しさは変わらない。それもそのはずで、例えば鉱業やサービス業のエリートで年収は400万円程度なのに、エンジニアの年収は1000万円もざらで、それ以上稼げるものも多い。上下差はあっても高給取りには違いない。文字通り血が出るほど勉強した先に、自分の未来を創造していく。

 アドビの2016年の調査(クリエイティビティに関する世界的な意識調査「State of Create: 2016」の結果を発表)によれば、米国人は55%が自国を創造的と思っているのに、日本人で自分を創造的と思っているのはわずか13%。世界の34%が日本を創造的な国と思っているのに、日本だけが自分を創造的だと思っていない。そして日本の若者は、将来に向けて準備がなく、自信もないという結果が出ている。

 コロナ禍は私たちをどこに連れていくだろうか。いや、そうではなく、何でもいいから昨日とは違ったことにトライし、自分で自分の運命を、自信を持ってたくましく進めてみよう。具体例として、今日からインドのいいところを、とにかくまねてみよう、といえばさすがにひいき目に過ぎるだろうか。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビューアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(日本在住、35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOの来日などがあれば、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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