中堅企業がリモートワークにおける課題を軽減するにはGartner Insights Pickup(172)

リモートワークに慎重な中堅企業のリーダーも、これまでの仕事のやり方が通用しない非常時においては、リモートワークが特に大きなメリットをもたらすことに気付く必要がある。

» 2020年08月28日 05時00分 公開
[Rama Ramaswami, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 リモートワークは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行(パンデミック)のような非常事態において、事業継続の土台になる。だが、中堅企業はリモートワークに懐疑的な傾向がある。リモートワークが生産性を低下し、組織の結束を脅かすと考えているからだ。しかし、中堅企業のリーダーは見方を改め、非常事態が終息した後も、長期にわたって恩恵をもたらすリモートワークを見直す時期に来ている。

 「リモートワークの実践についての指示や理解が欠けているために、(中堅企業では)練り上げ不足のポリシーやプログラムが実施されている」と、Gartnerのシニアプリンシパルアナリストのジョー・マリアーノ(Joe Mariano)氏は指摘する。

 「こうしたプログラムは失敗している。ビジネス部門の従業員や管理職になかなか受け入れてもらえないからだ」(マリアーノ氏)

 今は中堅企業のCIO(最高情報責任者)にとって、確固たるリモートワーク戦略を構築するチャンスだ。重要なステップは、人事部門と密接に協力し、リーダーの懸念を軽減するとともに、リモートワークのメリットを経営チームに訴求することだ。そうすることが、現在および将来にわたって効果的なリモートワークポリシーを作る準備になる。

中堅企業がリモートワークで直面する3つの障壁

 中堅企業のリーダーが、リモートワークを許可することについて抱く最も一般的な懸念としては、以下の3つが挙げられる。

  • 文化的な障壁
  • “持つ者”と“持たざる者”という認識
  • 従業員によるリモートワークプログラムの悪用

 まず、組織文化は常に、デジタル成長における最大の障壁だ。「働いている姿が見えない従業員」を、「全く働いていない」と決めつける管理職のマインドセットを変えるには、長い時間がかかる。管理職に、デジタルビジネス管理に最適な原則を教育する必要がある。その1つが、指揮統制のアプローチから結果重視のアプローチへの転換だ。

 また、多くの従業員がCOVID-19対策として在宅勤務をするようになっていることから、リモートワークならではの長期的なメリットも強調すべきだ。その中には、より幅広い人材へのアクセスや、物理的なオフィスにおけるスペースやメンテナンス、セキュリティの必要性が減ることによるコスト削減などが含まれる。さらに、将来、求職者(特に、若い求職者)はノマド的な働き方を望むようになることも念頭に置く必要がある。

 従業員の認識を管理するのも大変だ。特に小規模企業では、誰がリモートワークを許可され、誰が許可されないかを巡って猛反発が起こることがある。COVID-19の感染拡大下では、従業員の安全と健康の維持が最優先課題だ。物理的な出勤が絶対に必要なエッセンシャルワーカーを選定し、他の全ての従業員にリモートワークを指示しなければならない。経済と社会が平常に戻ったら、こうした勤務形態を見直すようにする。

 リモートワークプログラムの悪用は、中堅企業にとって頭の痛い問題だ。ほとんどの中堅企業はリソースが限られており、プロジェクトで時間やお金を無駄にする余裕はない。この問題についても、教育が何よりも重要だ。管理職に、勤務時間や勤務場所ではなく、期限の順守や販売目標の達成など、従業員が出した成果や結果を重視するよう働きかける必要がある。

 リモートワークは生産性を損なうどころか、非生産的な時間――例えば、出張や欠勤などを減らすのに役立つ。また、従業員の満足度向上や退職率低下に貢献する。さらに、オフィスに縛られない働き方を可能にし、予定外のイベントや災害に対する組織のレジリエンス(回復力)を高める。

正式なリモートワークポリシーを策定する

 リモートワークポリシーに盛り込むべき項目を網羅したリストを作り、2回チェックする。「障害や懸念にどう対処するか、リモートワークの効果をどう高めるかを、全てポリシーとして打ち出さなければならない。またポリシーは、従業員のリモートワークへの準備や、従業員に何が求められるかも明示しなければならない」と、マリアーノ氏は説明する。他にも重要なポイントが2つある。

1.適切な機器とリソースを決定する

 多くの中堅企業は、ITコストを一定に抑えようとする。だが、それではリモートワーカーにしわ寄せがいく恐れがある。必要な最小限のハードウェアや他のITリソースと、誰がそれらを用意するかを定義しておく必要がある。現行のサプライチェーンと経済状況を踏まえ、IT部門がそれらを提供できるか、提供できる場合、どのように提供できるかも検討する。

2.適切なコミュニケーション技術を提供する

 全てのリモートワーカーと管理職が、定期的に連絡を取り合えるようにする。適切なコミュニケーション計画は、中堅企業の結束を維持するのに不可欠だ。

 留意が必要なのは、「どんなリモートワークポリシーの策定も、自社が現在のパンデミックを乗り越えることだけを目的としてはならない」ということだ。将来を見据えてリモートワークの環境と体制を構築することを考える必要がある。そうすれば、リモートワークを必要に応じて柔軟に対応することができ、リモートワークの働き方が中堅企業にもたらす長期的なメリットは、懸念されているデメリットをはるかに上回る。

出典:Mitigate the Challenges of Remote Work for an MSE(Smarter with Gartner)

筆者 Rama Ramaswami

Director, Content Solutions


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