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» 2020年09月03日 05時00分 公開

こうしす! こちら京姫鉄道 広報部システム課 @IT支線(26):個人情報はどんな場合でも公開しちゃダメよね? (2/3)

[原作:井二かける(OPAP-JP), 解説:京姫鉄道, 作画:るみあ(OPAP-JP),@IT]





※諸説ありますが、仮に情報の受領側が容易に照合できなくとも、情報を提供(公開)する側の事業者の視点で容易に照合できれば個人情報に該当するとする説(提供元基準説)が有力です












井二かけるの追い解説

 今回の漫画のテーマは、「個人情報保護法の趣旨を見失わないようにすることの大切さ」です。

 木を見て森を見ずとなってはいけません。

 筆者のような素人が法律について知ろうとするとき、とにかく木を見て森を見ず、という状況に陥りがちです。細かい規定ばかり追い掛けていても誤った解釈をしてしまいますし、その時点では妥当な解釈であったとしても、法改正や画期的な(謎めいた)判例によってひっくり返されてしまうこともあり得ます。迷子になってしまわないよう、法律の目的を意識的に把握する必要があるといえるでしょう。

 その点で、まず法律の第一条を読むことが大切です。せっかくですので、個人情報保護法の第一条の全文を引用します。

個人情報の保護に関する法律

第一条 この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑み、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。

 ここから分かるのは、一言で言えば「個人の権利利益を保護することを目的とする」ということです。

 この部分を読むだけで、個人情報保護法は「個人情報の範囲を具体的に決めて、それ以外なら何をしてもよい法律」ではなく、「個人情報の取り扱いに関して個人の権利利益を保護する法律」だということが分かります。

 では、「権利」とは具体的に何の権利なのでしょうか。個人情報保護法の第3条に定められる基本理念にはこうあります。

個人情報の保護に関する法律

第三条 個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきものであることに鑑み、その適正な取扱いが図られなければならない。

 「権利」とは、憲法第十三条に定められた「個人として尊重される権利」であることが分かります。

日本国憲法

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 つまり、以下のような「個人の尊厳を傷つけられたり不利益を被ったりする事態を未然に防ぎましょう」というのが、法の趣旨です。

  • 個人情報の漏えいや目的外利用により尊厳を傷つけられる
  • 同意を得ずに収集された個人情報によって格付けや評価などを行われて不利益を被る

 この点を理解していれば、漏れてしまった特定の属性だけを見て「これは個人情報かどうか」を論じることが、いかに的外れか理解できるはずです。

 諸事情により漫画には含めませんでしたが、「利用者から預かった恥ずかしい写真を、間違って大公開してしまったが、幸いなことにシステムが自動的に顔を塗りつぶしていた」という事例に例えると、分かりやすいでしょう。

 もしこの事例で、広報担当者が「一般的な体形であれば、個人を特定できないから大丈夫です」と発表したら大炎上するはずです。なぜなら、たとえ顔が塗りつぶされていたとしても、恥ずかしいものは恥ずかしく、個人の尊厳を傷つけられる事態だからです。顔以外によっても個人を識別できるはずだとか、匿名加工情報に該当するような加工方法ではないはずだとか、容易照合性がどうのこうのだとか、そういった細かい議論をするまでもなく、法の趣旨に照らして「この発表は何だかマズそうだ」と感じるはずです。原則を知るということは、そういうことです。

 程度の差こそあれ、「IPアドレスは個人情報に該当しないから大丈夫」や「IPアドレスから氏名などを特定できないから大丈夫」も同様の問題です。原則を知っていれば、その漏えいによって利用者の権利や利益が侵害されたか否かについて、運営者側が一方的に決め付けるかのような発表は避けるでしょう。

 漫画の事例においては、京姫鉄道の広報や法務は原則を知らなかったが故に、利用者の反感を買いかねない発表をしてしまうところだったのです。

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