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» 2020年10月09日 05時00分 公開

Gartner Insights Pickup(178):マルチクラウドに関するノウハウ、ガバナンス、サポート体制構築の難しさ

80%以上の企業がマルチクラウドを採用しており、企業は自社が利用する複数のクラウドに関するノウハウやガバナンス、サポートの体制を確立しようとしている。だが、これは実際には非常に難しい作業だ。

[Lydia Leong, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 クラウドのノウハウを構築するのは難しい。マルチクラウドについてのノウハウを構築するのはもっと大変だ。ここでは「マルチクラウド」は、「似たサービスを提供する複数のクラウドプロバイダーを企業が採用すること」(例えば、「Amazon Web Services」と「Microsoft Azure」を採用するなど)を指している。

 IaaSとPaaSを統合的に提供する事業者は、技術とビジネスの両面で、それぞれが複雑であり、さまざまな違いがある組織だ。しかも、各クラウドプロバイダーがエコシステムを持っている。多くの場合、“マルチクラウド”製品事業者やマネージドサービス事業者(MSP)などは、クラウドプロバイダーごとに微妙に(または明らかに)異なる機能を提供する。その結果、マルチクラウドは機能を詳細に把握するのが基本的に難しく、使い勝手には運任せ的な要素が残る、面倒な代物に見える。こうしたマルチクラウドを、コモディティのように扱うことはできない。

 このため、「クラウドセンターオブエクセレンス(CCOE)」を立ち上げるようなクラウド成功企業や、クラウドの正式なオペレーションとガバナンスをある程度実施し始めた段階にある企業も、ほとんどの場合、まず1社のクラウドプロバイダーを導入し、その後マルチクラウドに移行する。

 マルチクラウド活用に成功している企業のクラウドアーキテクトは、1社のプロバイダーについて深く学習しており、クラウドチームはまず、1社のプロバイダーに対応したツールとプロセスを開発する。だが、その一方で、クラウドアーキテクトとエンジニアは、少なくとももう1社のプロバイダーについても基本的な理解を深めている。十分な情報に基づいて意思決定を行うためだ。将来を見越してマルチクラウドの基本的な利用基盤が、大抵はフレームワークの形で作られる。だが、最初は単一のクラウドに対して実装される。

 企業は、2社目の戦略的クラウドプロバイダーに関するガバナンスとサポートを後で追加するが、その深さのレベルは、メインの戦略的プロバイダーと必ずしも同じではないかもしれない。また、特定のシナリオ向けの(特定のユースケースに利用する、あるいは戦術的な)プロバイダーの利用は、ケース・バイ・ケースの扱いとなる。こうしたプロバイダーに関するガバナンスとサポートのレベルは、かなり限られる可能性がある。中央のIT部門は全くサポートしないかもしれない。

 個々のクラウドエンジニアは、マルチクラウドスキルではなく、単一のクラウドスキルを持ち続けるかもしれない。その大きな理由は、複数のクラウドプロバイダーに関する高度な専門性を身につけると、給与相場が、多くの大企業や中堅企業が法外と考えるレベルに高騰する傾向があるからだ(トレーニングコストを肩代わりして人材のつなぎ留めにつなげるのは諦めなければならない。優秀なエンジニアは、企業がしっかり肩代わりしても、その金額を上回る契約金をたやすく獲得できるからだ)。

 言い換えれば、80%以上の企業がマルチクラウドを採用しているが、契約している複数のクラウドプロバイダーを同列に考えている企業はほとんどない。

出典:Building multicloud expertise(Gartner Blog Network)

筆者  Lydia Leong

VP Distinguished Analyst


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