AIプロジェクトの予算計画を検討し直す際のポイントGartner Insights Pickup(179)

COVID-19の影響で、イノベーションへの投資の抑制を検討する動きも見られる。AIプロジェクトの主要コストを見極め、予算超過を防ぐにはどうしたらいいか。3つの観点から解説する。

» 2020年10月16日 05時00分 公開
[Manasi Sakpal, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 最近の経済的な混乱や市場の激しい変動を念頭に、企業経営者はイノベーションや新技術への投資を抑制するかもしれない。だが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行に伴い、実際はチャットbotや仮想アシスタント、拡張アナリティクスといったデジタルツールの必要性が高まっている。

 この傾向は、主にリモートワークの拡大に起因している。企業は強力なリモートワークインフラを整備する必要がある。業務負担を軽減し、従業員がリモートワークを快適に行えるように、リモートワークインフラには成果管理や日常業務管理、仮想会議室などのデジタルツールを用意すべきだ。

 「だが、新しい費用が発生することへの警戒は、COVID-19が流行する前よりも強まっている」と、Gartnerのディレクターアナリストを務めるメラニー・アレクサンダー(Melanie Alexander)氏は指摘する。

 「通常、人工知能(AI)のようなプロジェクトはコストがかさむ。そのため、ソーシングや調達のリーダーは、コストを節約する上で優先順位の高い分野に重点を置き、予算が最も効率的に使われるようにすることが重要だ」(アレクサンダー氏)

 AIプロジェクトの開始が承認されたら、予算に大きく影響するソフトウェアや導入、ガバナンスといった分野で、コストの明確化と効率化に集中的に取り組むことが肝心だ。

1.ユースケースを定義し、ソフトウェアコストを判断する

 AIソフトウェアの価格設定は、非常に複雑だ。最も一般的な価格モデルはサブスクリプションであり、従量制が組み合わされている場合もある。このため、企業によってさまざまな予算編成や交渉戦略が必要になる。例えば、チャットbotにかかる価格設定基準は機械学習の開発、デプロイにかかる料金とは異なるだろうが、同様に複雑な場合もある。

 自社の要件を踏まえ、ポイントを押さえてコストを見積もることが重要だ。ソーシングや調達のリーダーは、次の事項を把握することから始めるとよい。

  • 基本事項。例えば、ソフトウェアはどのようにライセンスされるか。提供モデルは何か(オンプレミスか、SaaSか)。どのような価格設定基準が採用されているか。料金はどのように算定されるか。
  • 価格設定基準がAPI呼び出しに基づいている場合、単価がAPI呼び出しを基準にしてどのように設定されているか、料金がどのように算定されるか。
  • 価格設定基準に従量制が取り入れられている場合、定額料金と従量料金を組み合わせたアプローチのようなカスタムオプションがあるか。

2.AI導入サービスのコスト超過を防ぐ

 個々の企業に最適な導入サービスは、各社の予算とニーズによって決まる。導入サービスは、特定の業種やテクニカル分野に特化した小規模な特定市場指向型ベンダーが提供しているものもあれば、大手コンサルティング企業が提供しているものもある。

 「大手のサービスプロバイダーを利用すれば、エンドツーエンドの戦略的コンサルティングを受けられる。これに対し、小規模なプロバイダーは、サービスの深さや柔軟性を強みとしている」(アレクサンダー氏)

 特定市場指向型ベンダーは特定の業種や技術に固有のノウハウを提供するが、大手サービスプロバイダーはエンドツーエンドの機能を提供する。マネージドサービスプロバイダーは、ネットワーク、アプリケーション、インフラ、セキュリティなどのサービスを、継続的な通常サポートとともに提供する。これは特定市場指向型ベンダーにはできないことだ。マネージドサービスは高価に見えるかもしれないが、自社でプロビジョニングや管理を行うコストを考えると、その料金は理にかなっている可能性がある。

3.将来のコストおよびコンプライアンスコストを盛り込む

 ソフトウェアと実装以外にも考慮すべきコストがある。AIを大規模に導入する企業の大部分は、予算の半分以上をワークフローの再設計やコミュニケーション、トレーニングといった利用促進に費やす。

 「最も一般的な追加コスト要因は、他のアプリケーションとの適合性確保だ」と、アレクサンダー氏は指摘する。

 「AI技術の選択を完了したら、AIソフトウェアがアクセスする必要がある既存アプリケーションは何かを見極めることが重要だ。例えば、ERPシステムによるデータ転送を含む作業を自動化しようとする場合、ソフトウェアの追加ライセンスが必要になる可能性がある」(アレクサンダー氏)

 適切な予算を立てるには、導入前の段階で、AIプロジェクトで発生するコストを洗い出し、把握しておく必要がある。見過ごされがちな隠れたコストの一般的な例としては、スタッフの人員配置コストやセキュリティ、プライバシー対策、パブリッククラウドライセンス、スキル開発などのコストがある。

出典:3 Budget Planning Hacks for AI Projects(Smarter with Gartner)

筆者 Manasi Sakpal

Public Relations Manager


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