連載
» 2020年10月22日 05時00分 公開

イベントから学ぶ最新技術情報:コロナ時代におけるデータサイエンティストの育成と、日常業務におけるメリット/デメリット

コロナ禍で日常業務や大学講義がオンライン&リモート化した人は多いだろう。そのメリットとデメリットは何か? デメリットを解消するために、どのような工夫をするとよいのか? データサイエンティスト人材の育成はコロナ禍でどういう状況なのか? データサイエンティスト協会主催Webセミナーにおけるパネルディスカッションの一部内容を紹介する。

[一色政彦,デジタルアドバンテージ]

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連載目次

 一般社団法人データサイエンティスト協会主催のWebセミナー「ビジネススキルの高いデータ活用人材と育成」が2020年10月15日に開催された。セッション構成は次の通り。

  • 講演1:『AI・データ利活用継続の鍵はビジネススキル』
  • 講演2:『DX時代に価値を示せるデータ活用人材育成』
  • パネルディスカッション:『コロナ時代におけるデータサイエンティストの育成』

 このうちパネルディスカッションでは、「コロナ時代におけるデータサイエンティストの育成」というタイトルで、図1に示す4つのテーマでディスカッション(主に質疑応答)が行われた。

図1 パネルディスカッションの4つのテーマ 図1 パネルディスカッションの4つのテーマ

 4つのテーマのうち、特に「1の日常業務」と「2の人材育成」については、現在、多くの人が変化を感じ、悩んでいることではないだろうか。今回のディスカッション内容は、参考になったり共感したりする部分が多いのではないかと思われる。そこで本稿では、この2つの議題の内容を書き起こして主に紹介する。「3の人材採用」についてはパネリストの多くは同じような意見だったので、コンパクトにまとめて紹介する。

 登壇者は、下記の5名である。

  • パネリスト:
    • 澤田直樹氏(NEC AI・アナリティクス事業部 マネージャー)
    • 渡辺圭吾氏(日本アイ・ビー・エム株式会社 GBS事業 Cognitive Process Transformation, Cognitive & Analytics パートナー)
    • 岩波俊哉氏(株式会社イオン銀行 リテール戦略統括部 アナリティクスセンター センター長)
    • 斉藤史朗氏(国立大学法人電気通信大学 特任教授)
  • モデレーター:
    • 眞鍋尚行氏(株式会社電通 データマーケティングセンター オンオフ統合ソリューション部 部長)

 パネルディスカッションの最初に自己紹介が行われたが、本稿では割愛する。図2を参考にしてほしい。

図2 パネリストとモデレーターの紹介 図2 パネリストとモデレーターの紹介(クリックまたはタップで拡大できます)

 パネリストのうち、澤田氏(NEC)、渡辺氏(IBM)、岩波氏(イオン銀行)がデータ分析業務に携わる各事業者の立ち位置で、斉藤氏(電通大)がアカデミックな立ち位置として意見が取り交わされた。なお斉藤氏は、2019年1月までは民間に所属していたため事業者のことも分かるとのことである。また電通大は「研究を社会実装する」というモチベーションが高い大学とのことで、事業者に近いアカデミックの立ち位置と捉えてもよいだろう。

 それでは本題に入ろう。ここからはディスカッションの雰囲気が出るように会話調で記述する(以下、敬称略)。

1. オンライン&リモートの社会になり、日常業務におけるメリット/デメリットは?

図3 「コロナ禍での日常業務」のディスカッション 図3 「コロナ禍での日常業務」のディスカッション

 眞鍋  私自身もほぼリモートで仕事をしていますが、オンライン&リモート環境での日常業務においてメリットやデメリットはありますか?

 岩波  リモートでの仕事はいまだに試行錯誤中ですが、デメリットを挙げると、一番は雑談をする時間がなくなったことです。以前は、データサイエンスというよりもビジネスを課題解決するためにメンバーらとよく話をしていて、メンバーに問いかけてアイデアを聞き出してみたりすることが日常で行われていました。今はそういった雑談の時間がなかなか取りづらくなっています。もちろんオンラインでも1対1で雑談をすることはできますが、多人数でさまざまな雑談を聞く機会が少なくなりました。

 こういったコミュニケーションの取りづらさを解消するために、毎朝数分〜20分ほど、分析チームのメンバーでオンラインミーティングをして、「今日何があったか」「何をやろうとしているか」などをざっくばらんに話す機会を恒常的に作るようにしました。

 一方、オンライン&リモート環境のメリットとしては、メンバーの資料が丁寧になってきたことです。これは、自分なりに考えるためのまとまった作業時間を確保しやすくなったことが理由だと思います。人に分かりやすい資料を作る習慣がメンバーに少しずつ根付いてきているのを感じています。

 澤田  私自身も雑談が減ったことを課題だと感じていました。それを解消するために私たちのグループでは、雑談をするためだけのZoomミーティング(オンラインミーティングのツール)を常に立ち上げておく、ということをしています。好きなときに好きな人がZoomミーティングのマイクをオンにして、何となく雑談をするだけです。ミーティング参加者の手は仕事をしているのですが、耳だけは雑談を聞いている、ということをやっていたりします。この雑談用Zoomミーティングは、意外に気分転換になったり新しいアイデアが出たりするなどの効果があります。ちょっと困ったことをすぐに相談できるというメリットも感じています。

 渡辺  メリット/デメリットの話に戻ると、メリットは時間がかなり効率的に使えるようになったことです。特にお客さまとのミーティングをオンラインで行えることや、社内におけるミーティングも上/下階への移動がなくなったことで、かなり効率的に仕事が進められるようになっています。例えばミーティング終了の5分後に、次のミーティングに参加するということも可能です。

 デメリットは先ほどお二人がお話しされたようにコミュニケーションが減ったことです。よくプロジェクト単位でミーティングをしますが、その参加者が5〜6人いたとして、隣の人とちょっと会話する、といったことはオンラインミーティングでは難しいです。常に参加者全員に聞かれてしまうので……。そういった点は良くないと感じています。

 この課題を解消すために、チャットツールのSlackを使って個人間でコミュニケーションを取ったりダイレクトメッセージで私とコミュニケーションを取ったりしています。実際に解決できているかは分かりませんが、少しはコミュニケーション不足を補えているのではないかと考えています。

 斉藤  私の所属は大学なので、日常業務ではなく教育現場の話をしようと思います。具体的には「今、各大学で問題となっているオンライン授業のメリット/デメリット」について話します。

 デメリットを主張する人は多いのですが、実はメリットも多くあります。例えばZoomなどを使うと、コンピューターを使った実習をしている際に、学生の画面を共有してもらうことでより具体的に教えることができますし、他の人もそれを見て学ぶということが簡単にできます。以前は「コンピューターを使った教育は大変だ」と思っていましたが、今は「簡単にできる」という考えに変わりました。このように、さまざまなツールを使い込んでいくと、いろいろと便利なことが発見できますね。

 一方でデメリットは、学生の今の状況/気配を把握できないことです。以前のように教室で講義をしている場合は、例えば学生に小さい問題をやらせて、講師は教室内をうろうろと見回れば、学生が理解できずに困っている気配を察知することができたので、「あなたは、どこで詰まっているのですか」と問いかけることもできました。今のようにオンラインで講義をしている場合、学生が黙ったままだと、「理解できて黙っているのか」「全然理解できずに黙っているのか」が分かりません。ここがつらいです。

 この問題を解消するため、なるべく学生に語りかけてオンラインで画面を見せてもらう機会を増やすことで、何とかこなしています。そうやってオンライン&リモートのメリット部分をうまく活用することが大事です。対面の講義より良いかは分かりませんが、Slackなどのツールをうまく活用することで、それと同じくらいの成果/習熟度は出せるのではないかと思っています。

 ちなみに今日、オフラインで学生と先生の4人で会う機会があり、その中でリアルの良さを感じることがありました。確かに「こういう内容を教える講義です」という(固定の)枠を作れば、ITツールを活用することでオンラインにおけるコミュニケーションのデメリットを補えます。しかし、(固定ではない)新しいコミュニケーションの場や出会いの場をパッと作るのはオンラインでは依然として難しいです。リアルであれば、隣にいる人との新しいコミュニケーションの場は、何の準備もなくパッと作れます。オンラインで同様の新しいコミュニケーションの場を作るためには、課題設定してミーティングを開始するという枠を頑張って作る必要があります。オンラインで新しい場/出会いの場をパッと作るにはどうすればよいのかについて今は悩んでいます。

2. Withコロナ/Afterコロナにおけるデータサイエンティストの育成について

図4 「コロナ禍でのデータサイエンティスト育成」のディスカッション 図4 「コロナ禍でのデータサイエンティスト育成」のディスカッション

 眞鍋  リアルの講義とは違い、学生が理解できているかどうかが把握しづらいとのことでした。ちなみにこれは、他の登壇者の立場である事業者でいえば、部下がちゃんと仕事ができているかどうか把握しづらいということがあるのではないかと思います。それを踏まえて、引き続きまずは斉藤さんに質問します。コロナ禍における「学生」のデータサイエンティスト育成はどのような状況でしょうか?

 斉藤  理解できているかどうかが把握しづらい点についてはやはり、習っている学生の方から「分からない」と手を挙げてほしいです。それが言えるコミュニティーや学習環境が作れるかどうかが大事だと考えています。そういったコミュニティーを作るために、できるだけ早い段階でZoom飲み会を開催しています。それにより、先生や学生、社会人学生同士が会話してお互いに仲良くなるので、Slackのコミュニティーもすごく盛り上がります。例えば今日初めてオフラインで会った学生とは3月末くらいから既に半年以上もコミュニティー上ではつながっており、例えば「もうすぐ結婚する」などいろいろな情報が入ってきていたので、この学生のことはとてもよく知っています。このようにリアルでは会っていなくても、オンライン&リモートだけで、ある程度の関係性を築くことは可能です。こういった良好な人間関係を築くためには、先ほど澤田さんが話した「雑談用Zoomミーティング」を作るのも良いアイデアだと思います。

 要は、講義/業務といった目的ではないところのコミュニケーションができる場が大事だということです。教育現場では、こういったコミュニティー/学習環境があると、学生も質問したり「分かりません」と言いやすくなったりすると思います。そういった場を醸成することを常に意識しています。具体的には、Zoom飲み会を開催する場合、30人全員参加の「Zoomミーティング」はコミュニケーションがあまり機能しません。そこで小グループの「Zoomブレイクアウトルーム」を作って、参加者を入れ代わり立ち代わり回転させます。裏方の大学スタッフ側はすごく忙しくなってしまいますが、教育現場ではこういったコミュニティー作りが大切だと思います。

 眞鍋  特にデータサイエンティストを目指す理系の学生は、自ら手を挙げてガツガツと発信できない人も多いのではなかいと思います。渡辺さんのIBMでは、その点で工夫していることはありますか?

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