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» 2020年12月22日 10時00分 公開

課題ドリブンでITを活用する:現場にある課題を解決し、人から頼られる仕事をするエンジニアを育成する長崎

ITエンジニアはどこで働いても成果を出せる。ならば、むしろどこに住みたいかで働く場所を決めてもいいのではないか。さらに、人と人のコミュニケーションを築く「場」、課題を解決する実証実験の「場」、学びの「仕組み」があれば、最高だ。

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 世界遺産なども多く観光地としてのイメージが強い長崎県では今、ITを新たな主力産業とすべくIT企業誘致やIT人材育成に産官学で取り組んでいる。既に多くの企業が研究開発拠点などを置いており、若い働き手を中心にUIJターンも増えている。

 またコロナ禍で多くの企業がリモートワークを経験し、新しい分散した働き方を模索している。首都圏のオフィスに出社することなく、分散した環境で仕事をする。そのために企業は在宅ワークを推奨し、地方に拠点を開設する動きもある。長崎にいち早く拠点を開設した企業の一つが、「富士フイルムソフトウエア」だ。同社はコロナ禍以前の2019年2月に長崎県、長崎市と立地協定を結んだ。

長崎における産官学が連携したIT分野への取り組み

 一方、これまでは地元長崎の大学で学んだ学生は、卒業後には首都圏の会社に就職し長崎から離れてしまう現実があった。学生にとって魅力的な企業が地元にないと、大学で教育して終わりとなってしまい、地元に貢献できない。「長崎大学」でIT分野の研究、IT人材の育成を行っている小林透教授は、このことが1つの課題だと捉えていた。この課題がある中、長崎県が新しい基幹産業としてIT分野に力を入れ、IT系人材育成やIT企業誘致に力を入れ始める。そこで長崎大学としても、それに協力することとなる。

長崎大学 教授 小林透氏

 富士フイルムソフトウエア 代表取締役社長の豊福貴司氏は、同社が長崎進出を検討していく中で、小林教授が長崎大学で教鞭(きょうべん)をとっていることを知った。実は小林教授と豊福氏は、大学時代の研究室の先輩、後輩の間柄。小林教授は東北大学の工学部の学生時に、AI(人工知能)やロボティクスの先駆けとなる産業用ロボットの制御に関する研究に携わっていた。もともとロボットやそれを制御するソフトウェア開発に興味があったわけではなかったが、研究するうちにものづくりの面白さ、ソフトウェアの可能性などを実感する。

 豊福氏は同じ研究室の後輩で、当時最先端のDEC(Digital Equipment Corporation)製ミニコンを使い、ロボットのシミュレーションプログラムなどを開発した。工学部では図面作成やはんだ付けの実習などもあったが、手先が不器用で得意ではなかった。一方ソフトウェア開発なら器用さは関係ない。豊福氏もソフトウェアでロボットを自動制御できるところには、面白さを感じたという。

 小林教授も豊福氏も学生時代に当時の最先端技術であるロボット制御に関わる研究を経験し、そこからソフトウェア、ITの世界に入った。「当時の工学部の主流は航空力学や内燃機関でした。ソフトウェアが今のように劇的に進化するとは思いもよりませんでした」と豊福氏。「ちょうどよい時代にわれわれは、IT、ソフトウェアの世界に入ったと思います」と小林教授も振り返る。

地元企業との共同研究で地元の現場の課題をITで解決する

 ところで富士フイルムソフトウエアはなぜ、長崎を選んだのだろうか。これまで、IT人材はIT業界の中で求められていたが、今やあらゆる業界の企業がデジタル変革を進めており、IT人材が不足している。そのため優秀なIT人材は争奪戦だ。「人材を求めるのが首都圏だけでよいのか、さらには日本だけでよいのかと考えていました。海外にも人材を求めましたが、国内の人材をもっと増やしたい。そこで数年前から人材確保について模索していました」と豊福氏。

富士フイルムソフトウエア 代表取締役社長 豊福貴司氏

 当初、どこに拠点を置くかの明確な方針はなかった。そんな折に長崎県から提案をもらう。さらに旧知の小林教授が長崎大学でIT人材の育成や地元企業との共同研究の活動を行っていることを知る。そしてもう1つ「長崎を拠点とすることで、実証実験ができることも大きなポイントでした。新しいことを行うには、現場で試してみることが重要です。それが長崎ならやりやすいのも拠点を開設した理由です」と言う。

 長崎大学に赴任した当初、小林教授は工学部に所属し、担当する情報工学の学生定員は50人だった。それが2020年4月に情報データ科学部が新設され定員は110人、教員もそれに合わせ倍増し27人体制となる。「学生も教員も増えたことで、やれることも大きく広がり、地元企業との共同研究も増加しています」と小林教授。まずは大学内で学生をIT人材として育成し、その上で共同研究により地元企業のITの力を底上げする。こういった取り組みがやりやすくなったという。

 他にも小林教授は県からの補助のもと、社会人教育にも取り組んでいる。平日夜に社会人向けに人工知能やIoT(モノのインターネット)など先端技術の教育の場を持っている。

 「学生だけでなく、企業との共同研究や社会人教育も行うことは重要です。これら全てを通じて地元企業にも頑張ってもらい、学生にとっても魅力的な会社を長崎に増やすことにつなげます」(小林教授)

 実施している地元企業との共同研究は、さまざまなものがある。例えば海に近い長崎には漁業で使う網の製造会社がある。このメーカーでは網を漁に使うだけでなく、のり面崩落を防ぐ保護ネットとしても利用する。このとき漁網の技術を使い、亀甲の形に網を編むことで強度を増す。しかし機械で編んでいると、次第に糸のテンションに偏りが出てきれいな亀甲の形にならないので、現状は職人が目で見て判断し、糸のテンションを調整している。

 網を編む機械は巨大で熱も音も大きく、調整を行う職人にとってはかなり過酷な仕事環境となっている。この課題に対し、編んでいる網をカメラで撮影しリアルタイムな画像分析で偏りを検知して、自動でテンションを調整する共同研究を行っている。実用化すれば、職人が機械につきっきりになる必要はない。人はよりクリエイティブな仕事に従事できるのだ。

 このような企業との共同研究では、ITが先にあるのではなく、課題が先にあり、解決するためにITが登場する。「順番を間違えてはダメです。ITは課題解決のための一部です。網の共同研究もカメラ、センシング、AIなどの技術があり、それらを道具として使い、全体の課題を解決している点が重要です」と小林教授。つまり課題解決のために最新のITを学び、それを使いこなせる人材が求められている。豊福氏もソフトウェアを作ることが目的ではなく、社会課題、現場課題が何かを理解しそれをITで解決できるかを考えることが重要だと指摘する。

長崎のビジネスの現場には解決すべき課題がたくさんある

 実際、現場にはさまざまな課題がある。長崎には離島が多く、その医療をどうするかという課題があり、それを解決するために現場で実証実験をすることが大事なのだ。「長崎ならではの現場の課題があり、それをITとどう結び付けることができるかが大切です」と豊福氏は指摘する。

 その上でエンジニアが長崎に住んで仕事をするとなれば、しっかりと稼いで食べていけなければならない。長崎にある課題を、地元のIT企業、地元のIT技術者が解決し、ビジネスとして成立することは理想的だ。しかし地元の課題解決の仕事だけでは、すぐにはビジネスが成り立たないだろう。そのため長崎に進出し拠点を構える企業には、首都圏で仕事を作り、それを長崎で実施するような取り組みも並行して行ってほしいと小林教授は話す。

 また長崎は都市としてはこぢんまりとしているが、その分見通しが良いと小林教授。これは目に見える部分の見通しだけでなく、人と人のつながりも含め見通しが良い。結果、さまざまな課題を見つけやすく、解決するための行動も起こしやすいという。例えば長崎では、小さな取り組みや成果も報道で取り上げてくれやすく、それを目にした人がすぐにフィードバックをくれる。そこからフィールドがさらに広がり、新たな課題解決の構想にもつながる。長崎にこういった環境があることで、新しいチャレンジもしやすいと話す。

 豊福氏は、長崎にはユニークな文化があると言う。「異文化が融合していて、それがなじんでいます。多様な文化があると都会ではごちゃごちゃになってしまいますが、長崎では融合してそれが落ち着いたたたずまいとなっている」という印象を持ち、このような環境だからこそ、ITのような新しいものを取り入れることにも抵抗感が少ないように感じるとも言う。

しっかりとしたスキルがあればどこでも働ける時代

国宝であり、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つである大浦天主堂

 テクノロジーの変化があり、ITエンジニアはどこで働いても同じような成果を出すことができるようになった。今後は、エンジニアがしっかり勉強してスキルを身に付ければ、働く場所は関係なくなるだろう。働く場所がどこでもよいとなれば「これからはむしろどこに住みたいかで働く場所を決めるでしょう」と豊福氏は考える。東京にいたい人もいれば、地元に戻って働きたい人もいる。そういった多様な要望にどう応えていくかも、今後は企業に求められることとなる。

 そして「最後は人と人のコミュニケーションが大事になるでしょう。そうなるとオンラインだけでなく、ある程度実際に人が集まれる場所も必要です。企業はオンラインと集まれる場所をミックスした、新しい仕事環境を構築する必要があります。集まる場所があり、その近くに課題を解決する実証実験の場があるのが長崎だと思います」と豊福氏。長崎では産官学が一緒になってIT企業の誘致、IT人材の育成に取り組んでいることもあり、ITが根付く可能性を感じている。「チャレンジもあるかもしれないけれど、われわれも長崎でやってみようと思っています」と豊福氏は決意を表明する。

 地元にITを根付かせるための、すぐ効く特効薬はない。

 「時間をかけて人材を育成する必要があります。その上でIT企業を誘致し、地元の企業も盛り上げる。そうすることで最初は長崎から出ていく人もいるけれど、少しずつ人材が定着するはずです。また戻ってきてくれる人もいるでしょう。実際、私の研究室にはUターンで戻った社会人ドクターもいます。そういう人にしっかり機会を与えられるようにすることが必要です」(小林教授)

ITの未来は明るい、若い人には大きなチャンスがある

 豊福氏は、若いエンジニアは外の人との交流を心掛けるべきだとアドバイスする。外を見ることで、自分の立ち位置を見極めるのだ。ここ最近は企業の教育などもしっかりしており、また長崎大学の社会人教育のような取り組みもあり、知識やスキルを身に付けやすい。しかし、それだけでは現場の課題を解決に導けるようなエンジニアにはなかなかなれない。

 外を見て自分の立ち位置を理解し、足りないことを補うことでだんだん課題解決ができる人材にシフトできる。その上で課題も技術も変化するので、成長し続けられるよう勉強をし続けることが重要だと豊福氏は言う。与えられた課題を解決するのは得意だが、自分から課題を見つけてそれを解決するのは得意ではないエンジニアも多い。それができるような人材を育て地元に定着させることも、小林教授が大学教育で目指すことになる。

 また、コロナ禍は良い方向に変革するきっかけになるのではとも予測する。現状は不安も多いかもしれないが、働き方の自由度が上がっており、大手企業に勤めながら副業も許される時代になり始めた。そんな中でIT関連の仕事は今後50年、100年と必要とされるものだ。

 「ITの未来はそもそも明るいと考えています。悲観する必要はまったくありません。今のうちにスキルを身に付け課題解決ができる人材になれば、人から求められる人材になるでしょう」(小林教授)

 長崎のような場所であれば、課題解決できる人材は重宝されやすく、都会よりも困っている人を助けるチャンスは増える。解決して感謝されれば、それが自分にとっての生きがいにもつながるはずだと言う。

 豊福氏もITには無限の可能性があると言う。自分たちが学生だったころ、ソフトウェアは機械に組み込まれるものにすぎなかった。それが今はAIなど新しい技術が課題解決の重要な要素となってきており、ITの位置付けが大きく変わっている。そしてAIのような新しい技術を身に付け活用するのは、圧倒的に若い人の方が有利だとも指摘する。

 IT業界の変化は速く大きいので、むしろ若い人にこそ有利でチャンスが大きい。もちろん最初から課題を自ら見つけて解決法を見つけられるような仕事はできないだろう。まずは与えられた仕事を着実にこなすことになるが、その際にも自分がやることにどんな意味があるのかを把握し、そのために最適な解決方法は何かを考えるようにする。「それができれば、これからの世界を若いエンジニアが引っ張っていけるでしょう」と豊福氏も言う。

 長崎のように、都会よりも現場の課題に触れやすく、スキルさえあればすぐに人の役に立てる可能性の高い場所がある。自分の可能性を試し、エンジニアとして生きがいを見つけるためにも、多様な仕事の選択肢の中から自分に合った働き方を選ぶことが大切となりそうだ。

日本の近代化の一翼を担ったグラバー商会。その拠点であったグラバー園から三菱重工長崎造船所を臨む

長崎県は、今回取材した富士フイルムソフトウエアをはじめ、IT系企業で活躍していただけるエンジニアを募集しています。詳しくは、「公益財団法人 長崎県産業振興財団HP 誘致企業の人材募集のご紹介」ページをご覧ください

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提供:公益財団法人長崎県産業振興財団
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2021年1月21日

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