モデルとしてキャットウォークを歩くのは楽しいが、今はコードを書くことが楽しいGo AbekawaのGo Global!〜Jonas Rydenhag編(後)(2/2 ページ)

» 2021年02月16日 05時00分 公開
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ヨナスが語る「成長するための7つの習慣」

阿部川 @IT読者にメッセージをいただけますか。

ヨナス氏 まず「英語を勉強してください」。新しい製品やプロジェクトの話は、大体最初に英語で発表されます。そのため英語が分かれば、新しい技術や多くの情報が手に入れられます。情報の大本がスウェーデン語や日本語だとしても「英語に翻訳された情報の方が充実している」ということはよくあります。

 次に「常に好奇心と想像力を持って、自らの能力をより良くしようと常に意識して、物事に取り組んでください」。私は何か問題にぶつかったときは解決するまで決して諦めません。というのも、実は失敗したとしても成功したときより多くを学べるかもしれないからです。

 私はよくエンジニアたちに「目の前のタスクは以前やったことがあることかもしれないし、面白くないかもしれない。であれば、以前とは別の方法でやってみたらどうだろう」と勧めています。違うプログラミング言語や技術などを使って何とか面白いものにできないか、と考えてほしいのです。「こんなプロジェクトはつまらない」とさじを投げるのではなく、自分から面白くしようと試してみることが大切だと思います。

阿部川 同じ問題であっても、以前とは他の解決方法を試してみるということですね。

ヨナス氏 そうです、ピアノの練習に似ていますね。「練習して上手になれば、もっと上手になりたいと思い、より練習するでしょうし、それによってスキルも上達する」。それと同じようにできればプロジェクトも面白くできるはずです。

 ときにはプロジェクトの予算が厳しく、思うようにできないこともあると思います。ただ、もし自身が若くて経験が浅いプログラマーであれば週末も関係なく取り組んでみればいいと思います。もちろん、「退屈なタスクをただ単にこなすのではなく、何か面白くて、楽しめるようなやり方を考え、実行してほしい」のです。

画像 「オフラインの時間を大切にしてほしい」

阿部川 自分の環境を自分の力で変えようとすることは重要ですね。

ヨナス氏 私は大学などの正規のプログラミング教育は受けていませんから、多少偏見があるかもしれませんが(笑)、これは実際の経験から学んだことです。

 もちろん楽しい経験だけではありません。Webサービスがダウンして、その復旧に掛かりっきりになったこともあります。当時、私はインフラに関する知識が乏しかったのですが、それでも何とかするしかなかった。結果的に「ストレージのマウントに失敗しており、それが原因でサーバが再起動を繰り返していた」と分かりましたが、そこに至るまでに4時間かかりました。

阿部川 大変でしたね。

ヨナス氏 そうですね。もし私が経験豊富なプログラマーであれば、1分もあれば分かったことかもしれません。ただ、確かに時間はかかりましたが、結果的に解決できたことはうれしかったですし、多くのことを学べたと思います。

 プロジェクトの進捗(しんちょく)予測についても学びがありました。新しいことに挑戦しない場合であっても、「大抵のプロジェクトの進捗は予測より遅れる」。Webサイトの構築は、画面遷移が簡単にイメージできるので構築も簡単にできると考える人がいます。しかし、実際は検証や作り込みなどさまざまなことを考えながらプログラミングするので大変です。現在、マネジャーの経験がある人ならそんなことはないと思いますが、プログラミングは時間がかかると認識してプロジェクトを進めるべきです。

阿部川 余裕を持った計画は重要ですね。

ヨナス氏 はい。ただ、私もその傾向があるのですが、仕事に集中し過ぎると他のことが目に入らなくなってしまいます。しかし、「少し視点を引いて考えることができれば『これとは違うやり方があるのではないか』などと考える余裕が生まれます」。そのときに創造性を発揮できれば、顧客に対してより高い価値を提供できるでしょう。長期的にみれば、より良いアプリケーション開発のためには創造性を生む余裕を侮ってはいけないと思います。

 それと「オフラインの時間を大切にしてほしい」と思います。私は会社まで歩いて行ったり、ランチの時間に近くを散歩したりするようにしています。その間にいろいろなことを考えるようにしています。このときに良いアイデアが浮かびます。決してコンピュータに向かってコードを書いているときではありません。

阿部川 今まで7つのポイントをお話いただきました。「英語を勉強する」「好奇心と創造力を持って物事に取り組む」「練習すればもっと上手になりたいと思える」「自分が楽しめるやり方を考えてみる」「プロジェクトは予測より長くなる」「視点を引いて考える」「オフラインの時間を大切にする」。

 ヘッドラインは決まりましたね。ヨナスが語る「エンジニアが成長するための7つの習慣」(笑)。

ヨナス氏 いいですね(笑)。

阿部川 ちなみにLinkedInをみると、八楽で働く前にモデルとしてお仕事をなさっていたのですね。

ヨナス氏 はい、土日だけモデルの仕事をしていました。

阿部川 キャットウォークを歩いたり、ダンスしたり……。

ヨナス氏 ダンスはありませんでしたけど(笑)。ファッション誌のグラビアやファッションショーでのキャットウォークなどですね。実際のところ、スチール写真を撮られるのはあまり好きではありませんでしたが、キャットウォークを歩くのはとても楽しかったです。だって良い服を着て、スタイリッシュに決めて、スポットライトを浴びて、それでステージを歩くのですから、そりゃ楽しいですよ。

画像 モデル時代のヨナス氏。イケメン!

インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜

 とにかくイケメンだ。目ざとい方は放っておくはずがない。日本語学校のときにはファッションモデルも経験している。内に秘めたエネルギーは、発散する場所をまずはキャットウォークに見いだした。「Never Give-up」精神に火を付けたのはプログラミングだった。話し言語とプログラミング言語との格闘が、やがて翻訳システムの開発へと彼を導く。そのコードは天才肌だと仲間に評されるが、天からの啓示は、休みなく働く頭脳に訪れる。SaaS(Software as a Service)といい、IoT(Internet of Things)といい、Robotics(ロボット工学)といい、自ら道を開く人に、フィールドは必ず、次々と訪れる。

阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)

アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビューアー、作家、翻訳家

コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。

編集部から

「Go Global!」では、GO阿部川と対談してくださるエンジニアを募集しています。国境を越えて活躍するエンジニア(日本在住、35歳まで)、グローバル企業のCEOやCTOの来日などがあれば、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。

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