連載
» 2021年02月12日 05時00分 公開

優れたデジタルリーダーの7つの特性Gartner Insights Pickup(194)

デジタルビジネストランスフォーメーションを成功に導くには、リーダー自らも変わらなければならない。成功するデジタルリーダーに顕著な7つの特性を踏まえ、目指すリーダー像を明確にしよう。

[Jordan Bryan, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 デジタルリーダーはデジタルトランスフォーメーションに加え、技術、ビジネス成果、プロセス変革、人々へのそれらの影響を加速させることを考える。だが、そうしたトランスフォーメーションがリーダーシップにもたらす大きなディスラプション(創造的破壊)や、自分が組織のデジタルトランスフォーメーションの成否を大きく左右することを見過ごしがちだ。

 素晴らしい成功を収めているデジタルリーダーは、7つの際立った特性を示している。Gartnerのシニアコンテンツマーケティングマネジャーのケーシー・パネッタ(Kasey Panetta)氏が、アナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのマリー・マザーリオ(Mary Mesaglio)氏に、こうした非常に成功しているデジタルリーダーの7つの特性とは何かに加え、なぜ新しい物事への好奇心の強さや、創造力とイノベーションの違いへの理解、そして決してデジタルを成果にしないことが重要なのかについて話を聞いた。

1:デジタルリーダーは新しいもの好き(Neophilia)である

 新しいもの好き(Neophilia)とは、自然に新しいものに引きつけられる人々を指す。こうした人々は、新しい状況を探索する準備が常にできており、新しいチャンスを作ったり、受け入れたりすることに前向きであり、新しいアイデアへの好奇心が強い。

 新しいもの好きであることのマイナス面もある。だが、新しいもの好きであることはデジタルリーダーシップに必要だ。IT分野における陳腐化のペースや変化のペースについていけないと厳しい。

2:デジタルリーダーは考案するだけでなく、模倣する

 この特性を持つデジタルリーダーは、他社を模倣できる領域と、全く新しいアプローチが求められる領域とを区別している。デジタルリーダーは、革新を行う分野を注意深く選択する。一般的に、それは他社よりも優位に立とうとする分野だ。だが、デジタルリーダーは模倣することにも長(た)けている。あらゆる分野で創造しようとしているわけではないからだ。

 デジタルリーダーは、自らの組織がどの分野で抜群に優れている必要があるか、どの分野なら模倣できるかを明確に見定めている。模倣できる分野は、人々がその組織から購入する理由にならない分野だ。イノベーションの試みを数多く展開するのは効果的ではない。リーダーは、模倣できる分野を明確にしなければならない。

3:デジタルリーダーは業界の枠にちゅうちょしない

 業界の枠組みにおける組織の見解やイノベーションの可能性、ビジネスモデル、デジタルトランスフォーメーションを考えると、落とし穴にはまる恐れがある。FacebookやAmazon、Googleのような、事業拡大を続ける大手デジタル企業の多くは、自社がどの業界に属するかには関心がない。こうした大手デジタル企業の関心事は、顧客のためにどのような問題を解決するかだ。これらの企業は顧客中心であり、既存の業界の枠組みは気にしていない。

 「金融サービス」のような業界のくくりは、新しいチャンスを見極めるのに役に立たない。そこにあるものにフォーカスしており、そこにないものには目が向かないからだ。多くの場合、イノベーションの好機は既存のもの同士間の空白にある。業界の観点からの見方は、興味を引く新しい商品でその空白を埋める助けにならない。だが、顧客ニーズの観点は助けになるかもしれない。

4:デジタルリーダーは、イノベーションが創造力にとどまらないことを理解している

 イノベーションと創造力は置き換え可能であり、優れたアイデアを持った人がいれば、たちまちイノベーションが実現するという考え方がある。実際、創造力はイノベーションを市場にもたらすために必要な5つの行動の1つにすぎない。つまり、人々は創造力によってアイデアを生み出すが、それだけではなく「なぜこれを行うのか? これは本当に役に立つのか? 誰かがこれを買ってくれるか?」といった問いを立てて、新しいアイデアを評価するという行動も必要になる。

 さらに、さまざまな分野を手掛けるさまざまな部署の協力を取り付け、開発にコラボレーションを実現する必要もある。そして4番目の行動が、実際にイノベーションを導入し形にする構築作業だ。最後に、イノベーションを促進し商用化する人々も必要になる。

 真のイノベーションを起こしその成果を市場に届けるには、創造力だけでなく、この5つの行動が全て要求される。チームを監査し、各分野に必要なスキルセットを持った人材がそろっていることを確認することが重要だ。特定の行動が過剰に支配的になりやすい。

 例えば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行(パンデミック)下では、イノベーションに必要な行動が困難になるかもしれない。従業員が疲弊しているからだ。また、チームが考え方を生み出すのを得意としているが、それを市場に売り込むのが苦手かもしれない。弱点を見つけて、それを補う人材をチームに加えるとよい。

5:デジタルリーダーは、高いAQを備えたチームを構築する

 IQ(Intelligence Quotient:知能指数)やEQ(Emotional Quotient:心の知能指数)はかなり知られているが、AQ(Adversity Quotient:逆境指数)を測定するリーダーはほとんどいない。AQは、人間のレジリエンス(回復力)や逆境から立ち直る力を測定し、指数化したものだ。高いAQは従業員の定着向上に役立ち、デジタルリーダーシップが機能する上でも重要だ。デジタルトランスフォーメーションはルールを変え、従来の前提を覆すことで、従業員の仕事のやり方にディスラプションをもたらす場合が多いからだ。こうした場合、従業員は新しいやり方に適応しなければならなくなる。

 優秀なアスリートはプレッシャーがかかる状況での回復力を高めるため、肯定的な面と否定的な面の双方を可視化するように指導されることがよくある。例えば、金メダルをかんでいるときどんな気分だろうか? それだけでなく、自分が試合を投げ出してしまうようなことが起こる要因としてどんなことが考えられるか? ベストメンバーを組めなかった場合や、試合前日に足にとげが刺さった場合はどのように対応するか? といった全ての潜在的な障害を想定し、それらを克服する訓練を積むことがレジリエンスの向上に役立つ。

 小さな障害への対応やコーチングを取り入れ、異なる課題や変化を探ることでAQを鍛える。物事が必ずしも計画通りに進まなくても、完全に投げ出してしまわないように障害に対処するためのツールを提供する。このデジタルリーダーの特性は、これまで以上に重要になっている。COVID-19のパンデミックが長引く中で組織が存続していくには、レジリエンスが必要だからだ。

6:デジタルリーダーは、デジタルを成果と見なさない

 デジタルはあくまでツールであり、目的を達成する手段にすぎない。デジタル化のためにデジタル化する人はいないし、同様に、トランスフォーメーションのためにトランスフォーメーションする人はいない。デジタル化の理由を必ず明確に定義し、明記する必要がある。そうした明確で具体的な目標を立てずにデジタル化を行うと、悪い結果を招く可能性がある。

 例えば、食品や日用品のオンラインショッピングを好まない人も多い。棚を見て回りたかったり、アイテムを1つずつクリックしなければならないのが面倒だったり、思いがけないことに驚いたり、衝動買いをしたりしたいといった理由からだ。

 デジタル化のためのデジタル化に陥らないためには、何を最適化しようとするのか、あるいは目指す結果は何かを考える。それは利益を増やしたいとか、利益率を拡大したいとか、透明性を向上させたいとか、安全性を高めたいといったことかもしれない。デジタルは、目的の達成に役立つかどうかが重要だ。決して目的ではないからだ。

7:デジタルリーダーはテクノロジーの「オタク」であり、その部下も同様である

 この特性は過小評価されることが多い。デジタルリーダーがどこに新しいチャンスがあるのかを見極めるには、テクノロジーに精通している必要がある。これは、AI(人工知能)などの技術が何を提供するか、組織にどんなインパクトをもたらす可能性があるかを理解する上で特に重要だ。だが、リーダーだけでなくその部下も、オタク(※)的な性質を生かす必要がある。

※オタク:通常とは異なる趣味や関心を持った人を指す否定的な言葉であったが、他者とは一線を画す情熱を備えた人を指す言葉に進化した。

 従業員に、自由時間に何をしているかを尋ねてみるとよい。「Raspberry Pi」で何か面白いことをしている従業員や、定期的に技術ブログを書いている従業員がいるかもしれない。そして彼らは、そのことについて社内や職場で全く話したことがないかもしれない。

 特に自由時間がより多いと思われる若い従業員にとっては、デジタルイニシアチブに役立つような興味深い反応が出てくるかもしれない。

出典:7 Traits of Highly Successful Digital Leaders(Smarter with Gartner)

筆者 Jordan Bryan

Marketing Communications Analyst


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