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» 2021年03月02日 05時00分 公開

「めったに見なかった役員が参加」 アジャイル開発の有識者に聞いた「コロナ禍におけるクライアントの変化」コロナ禍で開発どうでしょう(後)

コロナ禍において、開発の進め方やメンバーとのコミュニケーション方法が変わったエンジニアは少なくない。では、開発を依頼するクライアントにはどんな変化があったのだろうか。アジャイル開発に詳しいレッドジャーニーの市谷聡啓氏とRelicの大庭 亮氏に話を聞いた。

[吉村哲樹,@IT]

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 前編「『会社で使っていた椅子が欲しい』 アジャイル開発の有識者に聞いた『コロナ禍における開発現場の変化』」では、コロナ禍における開発現場の変化について、アジャイル開発に詳しいレッドジャーニーの市谷聡啓氏とRelicの大庭 亮氏話を聞いた。後編となる本稿は、開発を依頼する「クライアントの変化」に注目する。

「コロナ禍でデジタル化が進展した」は本当か

──コロナ禍で開発を依頼するクライアント(企業)側にはどのような変化が見られましたか?

市谷氏: これまで既に深化、洗練された領域だと思われてきた「対面での業務やサービス」が一気に不確実性が高い領域になったことで、どの企業も対応に追われて混乱していたように思えます。

 Web会議やチャットを導入して非対面、非接触にすればいいという単純な話ではないので「どういった仕組みを作ればいいのか」「そもそもどういう体験が望ましいのか」を誰もが模索し、まだまだ試行錯誤が続いているという印象です。

大庭氏: それはあるでしょうね。コロナ禍以降、「ビジネスを変革したい」というやや抽象的な相談が増えました。

──中には「コロナ禍への対応がきっかけで、企業のデジタル化が進展した」という事例を耳にします。

画像 レッドジャーニーの市谷聡啓氏

市谷氏: 確かに、コロナ禍以前から「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に取り組んでいた企業の中には、コロナ禍を契機にさらに取り組みが加速したという話はあります。逆にコロナ禍でIT投資が止まってしまい、DXが停滞しているという企業も少なくありません。

 各業界の老舗企業に関して言えば、そもそもコロナ禍以前からデジタル化は進んでいないし、コロナ禍以降もあまり変わっていないといった話も聞きます。

大庭氏: Relicが関わっている中では、不動産業界がデジタル化に積極的ですね。どちらかといえばデジタル化の進みは遅い業界でしたが、対面での営業活動ができなくなり、いよいよ本格的にデジタル化に着手せざるを得なくなったようです。

 他の業界でもそれは同じですが、不動産業界は動く金額が大きいのでIT業界側がビジネスチャンスと見て不動産業界に売り込みをかけている面もあります。不動産業界とIT業界の思惑が一致した結果、「不動産テック」の分野が盛り上がりを見せつつあると考えています。

市谷氏: 業界もそうですが、デジタル化の取り組みは企業の規模によってかなり差が出てきています。私は最近、比較的規模が大きな企業や組織と仕事をする機会が多いのですが、DXと銘打っていても「何をやるにしても時間がかかる」というのが正直な感想です。

 DXを実現するためには組織作りがとても重要なのですが、いざDXのための組織を立ち上げようとなると、大企業は「組織体制をどうするのか」「どうやって運用するのか」「どんな戦略を立てるのか」といった議論が延々と続いて、結局いつまでたっても肝心の組織が立ち上がらないということがままあります。

──規模が大きな組織ではよく聞く話ですね。

市谷氏: DXはこれまでにない新たなビジネスやプロダクトを生み出すための取り組みで、極めて不確実性が高い領域です。慎重に議論したくなる気持ちはよく分かるのですが、不確実性が高いからこそ逆に「いつまでも議論していないでとっととソフトウェアを作り始めてしまった方がいい」と思っています。

 仮に目的が曖昧であっても取りあえず開発プロジェクトを立ち上げてしまえば、皆の関心をそのプロジェクトに集められるので、自然とまとまりが生まれてきます。以前はこうした「明確なゴールを定めない“手ぶら”の開発は避けるべきだ」と考えていましたが、最近は組織の求心力を生むためにあえてこういう開発をするのもいいのではないかと考えるようになりました。

画像 Relicの大庭 亮氏

大庭氏: Relicもコロナ禍以降は「まず何かしら形にする」を優先するようになりました。

 特に不確実性が高い領域の開発に関しては、これまでより早めにプロトタイプを作成して、それをクライアントに示しながら本番開発につなげていくようなやり方が増えてきましたね。

 これもある意味、求心力を生むための取り組みといえるかもしれません。

テレワークでの開発がもたらした意外なメリット

──開発を依頼する側の視点で考えてみると「開発がテレワークになる」ことは不安材料になり得ると思うのですが、実際にそういった声がクライアントから上がることはありましたか。

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