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» 2021年02月22日 05時00分 公開

ユーレカ! プログラミングに出会って、青空が眼前に広がったGo AbekawaのGo Global!〜Mileidy Giraldo編(前)(2/3 ページ)

[取材・文:阿部川久広(Go Abekawa), 構成:鈴木麻紀,@IT]

データで未病に対応する、未来の医療

阿部川 大学院を修了された後、どうなさったのですか。

博士課程修了時。映画のワンシーンのような衣装

ジラルド博士 7年かけて博士号を修了し、その過程でNCBI(National Center for Biotechnology Information:アメリカ国立衛生研究所 国立バイオテクノロジー情報センター)が15年間解決できなかった問題を、2年間で解析しました。

 その成果が評価され、憧れのNCBIに研究者としてジョイン。フェロー研究者になり、最終的に科学者のスタッフとなりました。そして、生物情報学の不明点について、特に、広範囲にわたり連続して起こる感染症などの分析について、第一に意見をたずねられる立場になりました。

阿部川 ジラルドさんが携わった、生物学とコンピュータが混在することで解決できた、具体的なプロジェクトをご説明いただけますか。

ジラルド博士 分かりました。では、私が現在Lenovoで行っていることを説明します。

Back to the Future 未来の健康センター

 ここは、人類が健康状態を管理するために訪れる、健康センターや健康診断センターと呼ばれる場所です。人を本当に健康にする場所です。

 ここではまず遺伝子のデータを、次に生活している地域や環境、そしてライフスタイルに関する情報を、医療データとインタビューによって作成し、保存します。個人の医療に関するデータを統合して保存し、全体的に見られることが大切です。私たちはこれを、「医療のパーソナライズ」や「健康のための高度な医療」と呼んでいます。

 センターのゴールは、個人が罹病する度合いを測定し、対症療法を予測し、副作用なども考慮した上で、最高の効果と最小の痛みを考慮したカスタマイズした療法を施し、病気を治すのではなく未然に防ぎ、健康を管理することです。

 このセンターはまだどこにも存在しません。私がとてもエキサイティングだと思うのは、Lenovoが最先端のテクノロジーを持っていて、私が医療とテクノロジーの真ん中でこのような理想を考えられることです。私はこの絵を実現させるツールを作る最適のところにいると思うのです。

13年かかっていた解析を1時間弱に短縮する。多くの命を救うために

ジラルド博士 もちろん実現に向けてはいろいろなことを行わなければなりません。まず、全ての情報やデータが集まらなければ始まりません。HPC(High Performance Computing:高性能計算)、AI、遺伝子工学、アルゴリズムなどももちろん必要です。

 2003年に遺伝子情報を解析する方法が発見されましたが、たった1つの連なる遺伝子情報を解析するのに13年かかるものでした。この発見によって、30億ドル(約3000億円)の市場が創造されたといわれています。そして、遺伝子学が非常に広まったのです。現在科学者たちが取り組んでいるのは、この13年という歳月をどれだけ短くできるかです。

 2019年には、60〜150時間に短縮されました。それでもたった1つの人の遺伝子を解析するだけで約1週間かかります。検査するためにはたくさんの人が必要です。

 COVID-19について考えてください。多くの遺伝子解析とそれに効くウイルスの検出が必要です。それも1人の人に対してではなく、世界中の人々に対してです。どれぐらいのデータ容量、そして解析のためにどれぐらいの時間がかかるかお分かりいただけると思います。

 そしてこれが私たちの解決策、「GOAST」です。Genomics(遺伝子学)、Optimization(最適化)、And、Scalability(拡張性)、Tool(ツール)――ソフトウェアとハードウェアの組み合わせでできた、大容量の遺伝子解析を最適に行えるコンピュータシステムです。

 従来の典型的な「GATK4」(次世代ゲノム解析ツールキット)を使った解析は150時間くらい必要でしたが、GOASTは数時間程度で済みます。エンジニアの皆さんはお分かりだと思いますが、200倍近いスピードアップはすぐに達成できるものではありません。これは素晴らしいことです。GOASTを使えばラボでの生産性が上がりますから、多くの研究者がゲノム解析を行えます。多くの研究がスピーディーに行えるので、現在よりも多くの生命を救えます。

 GOASTはCPUでの動作を前提としており、GPUやFPGAなどの特別なハードウェアは不要です。CPUでの動作を前提としている最も大きな理由は、この知見を多くの人と共有するためです。かつてこのような先端的な技術は、一部の人に占有されていましたが、現在ではどんな人にも公開されています。世界中の人々がこの進歩に関わることで、科学を進化させられると思います。

 私たちは、個々の患者に最適な医療を提供したいと考えています。そのためにまずは、GOASTで解析速度を飛躍的に早め、それによって多くの事例を多くの人々と、いつでも入手可能な簡単な方法で解析できるようにする。現在はゲノム解析に関してだけですが、将来的には情報生物学の他の分野にも応用できます。

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